作家 伊坂幸太郎の魅力は、
その秀逸な比喩と、逆説的な物言いと、
そして文章文体が織りなす、
圧倒的な物語のスピード感だろう。

彼の新作「死神の浮力」を読んだ。
その秀逸な比喩と、逆説的な言い回しは健在で、
主人公「千葉さん」のちょっとピンぼけ的な存在感は
やはり前作「死神の精度」を彷彿とさせる、
圧倒的な魅了に満ち溢れていた。

但し、しかし、とも思う。
この物語をこれだけの、
長編小説にする意味があったのだろうかと。
伊坂幸太郎の作風も勿論だが、
千葉という主人公の性質からしても、
「死神の精度」という傑作連作短編集の続編、
というポジションからしても、
この作品「死神の浮力」に長編というスタンスは似合わない。

惰性で長々と言葉を紡がされる主人公「千葉」には、
作者が思う以上の苦悩が滲んでいる。
本来、シンプルで断定的な処が魅力の彼からは、
無駄に人間に擦り寄るような悲しい行動ばかりが見に付く。

僕の好きな伊坂さんと、
僕が悪いと感じる時の伊坂さんが同居する、
ちょっと微妙な「死神の浮力」
それでも僕は死神シリーズ、次回作に期待します。

死神の浮力
伊坂幸太郎
文藝春秋
2013-10-25