宇野コラム Uno column

宇野良治による宇野コラム Author: Yoshiharu Uno, MD, PhD



 反論:「新潮」トクホの大嘘

 

 

2017330日の「週刊新潮」で、多くのトクホで、有効であるという研究自体に問題があり、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、効果があるとして販売されていることが記された。
 

 88図1


これまで私が主張していたことではあるが、今回、逆にトクホ側に立って、ディベートし、反論してみる。

 

1.      1)難デキストリンの入った茶(A)と入っていない茶(B)を比較した実験で、Aではきつねうどんとご飯、Bでは大盛りのカレーライスを食している。そのような実験で血糖が抑制されたとすることは意味があるか?

 

<反論>確かに、うどんは小麦粉なので、小腸から吸収されないため、それ自体、血糖は上昇しにくい。しかし、その後に血糖は上昇するであろう。つまり、大盛りのカレーライスを食べた方が血糖は早期に上がりやすい。であるから、食事の違いによる血糖上昇の違いであって、難デキストリンの入った茶が血糖上昇を抑制したかどうかはわからないが、そのような極めて基本的なバイアスの問題のある研究は、きちんとした査読者にチェックされるジャーナルには却下されるには違いない。しかし、そのようなきちんとした査読のあるジャーナルに掲載されているわけではないのであるから、そもそも、科学的な批判には値しない。

 

2.      2)難デキストリンを摂取した群で、糞便の脂肪が2倍多いという結果から、難デキストリンは脂肪の吸収を抑制するとしているが、摂取量から換算すると、吸収された脂肪の差はわずか1.2%にすぎない。

 

<反論>確かに、吸収される脂肪の量はほとんど変化しないかもしれないが、排泄される糞便の栄養成分を分析して、どれくらいの栄養が体内に吸収されるかという研究は何十年前に行われた歴史的な研究方法である。そして、1.2%であっても、たとえそれはわずかだとしても、たとえ、統計学的に有意差がなくとも、脂肪の吸収を抑制するというのは虚偽や嘘ではない。「嘘」とは意図的にデータを捏造する場合の用語であり、意図的ではないデータの誤解釈は「誤り」「間違い」であって、嘘ではない。

 

3.     3) 糞便の脂肪量から推定される脂肪吸収抑制量と実際に測定された胴回りの脂肪減少率とは乖離している。難デキストリンの作用機序に矛盾があり、騙されている「被害者」いかに多いか。

 

<反論>脂肪吸収率が低下して、それが全て胴回りに影響するとは限らない。しかし、わずかであっても胴回りの脂肪が低下することが重要である。そもそも、他国から疑問視されていたにもかかわらず、胴回りの測定によるメタボリックシンドロームという日本の診断基準が国に認定されたことが重要であり、その診断基準によって、日本人は胴回りについては非常にナーバスであり、それに対するトクホの消費は日本経済に有益である。つまり、詳細な科学的分析よりももっと重要な経済的な意味を持っている。(「騙す」「被害者」については、反論6を参照)

 

4.    4) ケルセチン配合体の入った茶での実験では、入っていない茶を摂取した群では明らかに摂取カロリーが多い。

 

<反論>反論1.と同様

 

5.     
5)人工甘味料を安全とした論文は、企業から研究費を支給された研究機関が書いたものであり、企業と関係ない機関からの90論文の9割は脳腫瘍などの危険を指摘している。

 

<反論>これは、人工甘味料に限らず、ひとつの否定的な論文が出ると、その何倍もの有効性を示す論文が企業から発表されるというのがこの業界の常識である。日本で使用されている人工甘味料は厚生労働省が安全性を検討して認可しているものであり、病気の発症との関連性が明らかになれば、使用は禁止されるに違いない。しかし、発癌に関しては他の食品、大気汚染や放射線など多くの影響が考えられるため、その証明は困難である。

 
 

6.      6)腸内フローラはバランスが重要であり、一種類の乳酸菌を増やす効果は疑問である。

 

<反論>総じて、科学的にトクホに効果があるか、効果がないかと論じているが、科学的効果がなくとも、「効果があると信じて摂取する」と「効果がないと思って摂取する」よりも効果が得られる。それをプラセボ効果というが、このプラセボ効果がトクホでは重要なのである。要するに、科学的効果などなくてもいいのである。「効果がある」と思い込むことが、何よりも有用なのである。そのプラセボ効果が国としての経済効果を得るのであれば、国として利益があるのである。さらに、トクホの記載によって、日常的に食品の選択に気を配る「啓蒙的」効果も期待されるのである。


 

FODMAP食は子宮内膜症の症状軽減に有効

 

 

2017年3月17日、

豪州のモナッシュ大学から、子宮内膜症の症状が低FODMAP食で軽快することが報告されました。

 

 

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28303579

 

Aust N Z J Obstet Gynaecol. 2017 Mar 17. doi: 10.1111/ajo.12594. [Epub ahead of print]

Endometriosis in patients with irritable bowel syndrome: Specific symptomatic and demographic profile, and response to the low FODMAP diet.

Moore JS1,2Gibson PR1Perry RE2Burgell RE1.

Author information

1 Department of Gastroenterology, Central Clinical School, Monash University and Alfred Hospital, Melbourne, Victoria, Australia.

2 Intus, Digestive and Colorectal Care, Christchurch, New Zealand.

 

過敏性腸症候群の160人の女性を対象として調査したところ、36%に子宮内膜症が確認されました。子宮内膜症を伴う患者には子宮内膜症の家族歴があること、月経時に過敏性腸症候群の症状が悪化することが特徴でした。そして、子宮内膜症を併発している場合においても、4週間の低FODMAP食で50%以上に改善が確認されたということです。

私の経験では、
子宮内膜症で大腸ガスが多いという印象があります。ですから、低FODMAP食が有効であるのは納得できます。

 

過敏性腸症候群と関連する疾患は、セリアック病や小腸菌増殖症だけでなく、大腸憩室、うつ病、てんかん、認知症、線維筋痛症、顎関節症、2型糖尿病などが指摘されています。

 

そして、過敏性腸症候群に対して低FODMAp食が有効であることから、昨年、私は大腸憩室症でも低FODMAP食が有効であろうと論文を記しました。

今後、過敏性腸症候群と関連する疾患での低FODMAP食の有効性が示されると予想していましたが、今回の子宮内膜症での適応は、まさに、予想していたものでした。
 

今後も、他の疾患での有効性が示される予想されます。



 <追記>

 さっそく、知人から連絡が来ました。
繰り返す憩室炎があり、低FODMAP食で症状が消失した女性です。
実は、子宮内膜症もあったが、その症状も軽快してきたということです。
子宮内膜症自体も良くなるという可能性を示唆しています。
であれば、画期的です。
女性の10%に子宮内膜症があるとされるので、
低FODMAP食は、多くの女性の福音になるでしょう。

 


 

Rebuttal!  Question for The Low FODMAP Diet

 

Yoshiharu Uno, MD, PhD

 

I argue against the paper by Department of Pediatrics, Università Politecnica delle Marche in Italy.

 

The paper is as follows.

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https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28300773

Nutrients. 2017 Mar 16;9(3). pii: E292. doi: 10.3390/nu9030292.

The Low FODMAP Diet: Many Question Marks for a Catchy Acronym.

Catassi GLionetti EGatti SCatassi C.

Department of Pediatrics, Università Politecnica delle Marche,

Abstract

FODMAP, "Fermentable Oligo-, Di- and Mono-saccharides And Polyols", is a heterogeneous group of highly fermentable but poorly absorbed short-chain carbohydrates and polyols. Dietary FODMAPs might exacerbate intestinal symptoms by increasing small intestinal water volume, colonic gas production, and intestinal motility. In recent years the low-FODMAP diet for treatment of irritable bowel syndrome (IBS) has gained increasing popularity. In the present review we aim to summarize the physiological, clinical, and nutritional issues, suggesting caution in the prolonged use of this dietary treatment on the basis of the existing literature. The criteria for inclusion in the FODMAPs list are not fully defined. Although the low-FODMAP diet can have a positive impact on the symptoms of IBS, particularly bloating and diarrhea, the quality of the evidence is lower than optimal, due to frequent methodological flaws, particularly lack of a proper control group and/or lack of blinding. In particular, it remains to be proven whether this regimen is superior to conventional IBS diets. The drastic reduction of FODMAP intake has physiological consequences, e.g., on the intestinal microbiome and colonocyte metabolism, which are still poorly understood. A low-FODMAP diet imposes an important restriction of dietary choices due to the elimination of some staple foods, such as wheat derivatives, lactose-containing dairy products, many vegetables and pulses, and several types of fruits. For this reason, patients may be at risk of reduced intake of fiber, calcium, iron, zinc, folate, B and D vitamins, and natural antioxidants. The nutritional risk of the low-FODMAP diet may be higher in persons with limited access to the expensive, alternative dietary items included in the low-FODMAP diet.

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The paper recognizes the effectiveness of a low FODMAP diet.

 

However, the authors were concerned about the two contents.

 

Changes in intestinal flora

Risk of reduced intake of fiber, calcium, iron, zinc, folate, B and D vitamins
 

 F1

What kind of disease will increase due to changes in intestinal flora?

Is there evidence?

Calcium, zinc, iron, vitamins etc can be sufficiently supplemented with other low FODMAP foods.

 

Japanese people did not eat high FODMAP meals until 1945.
However, since 1950 the intake of high FODMAP meals has increased.
Then, prevalence increased in many diseases.

F2

This can be said to be the largest human experiment in history, targeting over 100 million people.

閉塞性腸炎と虚血性腸炎

 

Y Uno

 

 私の母は、祖父母が結構の歳になってからの末っ子であったらしく、私が幼稚園の頃は、すでに、
すっかり御爺さんとお婆さんであった。

 その二人が住んでいた家はもうないが、弘前城の外堀の近くにあって、隣に教会があったように記憶している。その家の玄関には土間があり、祖父が樺太で集めてきた光り輝く石が沢山あった。よくはわからないが、徴兵されたが、耳が大きいという単純な理由で無線兵にさせられたが、大陸の戦争に行って、攻撃されて逃げた時に、池に落ちて肺炎になり、兵隊を除隊させられた後に、仲間で樺太に行き鉱脈を見つけようとしていたらしい。要するに、「山師」であり、その戦利品が土間にあった輝く石の山だったのである。結局、樺太から引き揚げて、その仲間と二人で金貸しを始めた。しかし、その仲間は、貸した金を返さないと、病人の布団まで借金のかたに持っていくようになったので、祖父は金貸しをやめた。その金貸しは、その後、銀行になって、今や大きな地方銀行となっている。その話を母から聞いた時には、「我慢して、そのまま、いっしょに銀行やってればよかったのに」と思ったものである。

 私が幼稚園の頃、よく祖父母の家に遊びに行った。その頃、祖父母は下宿屋をしていて、2階には東京から来た大学生が住んでいた。私が遊びに行くと、よく、2階から、「こっちにおいで」と大学生がいうので、階段を登って、大学生からお菓子をもらっていた。あんまり、私が2階に行くので、「勉強の邪魔だから、行かないように」と祖母から怖い顔で言われた記憶がある。

 私が、医者になって、3年目の頃、大学医局から1年間派遣された病院に行った日のことである。

怖いと評判の外科の副院長が私を見て、「大きくなったなー」と言った。どこかで聞いたような声であった。そう、私が幼稚園の頃、祖父母の家の2階に下宿していた大学生が、副院長であった。

その後、副院長は、出来の悪い内科医の私を一度も怒ったことはなかった。ただ、いつも、私にだけはニコニコしていた。その彼が、私に質問したことがあった。

「閉塞性腸炎と虚血性腸炎の違いはなんだ?」

閉塞性腸炎とは、大腸癌で狭くなった部位の手前の腸が炎症を起こしている状態である。そして、虚血性腸炎は脱水などによって血流が悪くなって引き起こされる。しかし、その病理組織所見はほぼ一致している。その理由はわからなかった。

そして、ずっと、その答えを出せないままであった。

そして、やっと、その答えを出すことが出来た。

具体的には、大腸癌の狭窄を解除するステントで、発症することのある虚血性腸炎で計算してみたのである。圧力が高くなると大腸壁に虚血が生じて、その結果として閉塞性腸炎が生じると結論した。
それが、以下の論文である。 

 

 333

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28299628

 

Indian J Gastroenterol. 2017 Mar 16. doi: 10.1007/s12664-017-0734-8. [Epub ahead of print]

Management of colon stents based on Bernoulli's principle.

Uno Y.

 

Abstract

BACKGROUND AND AIMS:

The colonic self-expanding metal stent (SEMS) has been widely used for "bridge to surgery" and palliative therapy. However, if the spread of SEMS is insufficient, not only can a decompression effect not be obtained but also perforation and obstructive colitis can occur. The mechanism of occurrence of obstructive colitis and perforation was investigated by flow dynamics.

METHODS:

Bernoulli's principle was applied, assuming that the cause of inflammation and perforation represented the pressure difference in the proximal lumen and stent. The variables considered were proximal lumen diameter, stent lumen diameter, flow rate into the proximal lumen, and fluid density. To model the right colon, the proximal lumen diameter was set at 50 mm. To model the left-side colon, the proximal lumen diameter was set at 30 mm.

RESULTS:

For both the right colon model and the left-side colon model, the difference in pressure between the proximal lumen and the stent was less than 20 mmHg, when the diameter of the stent lumen was 14 mm or more. Both the right colon model and the left-side colon model were 30 mmHg or more at 200 mL s-1 when the stent lumen was 10 mm or less. Even with an inflow rate of 90-110 mL s-1, the pressure was 140 mmHg when the stent lumen diameter was 5 mm.

CONCLUSION:

In theory, in order to maintain the effectiveness of SEMS, it is necessary to keep the diameter of the stent lumen at 14 mm or more.

KEYWORDS:

Bernoylli’s principle; Colonic self-expanding metal stent; Ischemic colitis; Obstructive colitis; Perforation

 

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大腸ステントには、悲しい思い出がある。

姉が50歳の時に、末期の大腸癌であることがわかり、私は、姉の主治医となった。まず、閉塞した大腸癌にステントを入れることを考えた。癌は横行結腸にあったが、ステントは何度も入れた経験があるので、大丈夫だと思っていた。しかし、入らなかったのである。何度も試みても入らなく、そのうち、姉は叫び声を上げるようになった。叫ぶので、鎮痛剤と鎮静剤を何度も打った。しかし、それでも痛いらしく叫び続けた。叫びながら。「ヨンボ、ガンバレ」と言う。ヨンボというのは、私のことである。小さい頃から、姉は私をヨンボと呼んでいた。「ヨンボ、ガンバレ」と言いながら、また叫ぶ。。。ヨンボ、ガンバレ」と言いながら、また叫ぶ。。。私は、ボロボロ泣きながら、何度も、何度も、試みた。そして、最後には、介助していた看護師に「これ以上、薬は打てません」と言われ、やめた。力のなさを感じたというより、ただ、ただ、悲しかった。

その後、開腹手術で、横行結腸の癌はスキルスだったと判明し、ステントが入らなかったのはそのためであった。
 

そういえば、そろそろ、姉の命日である。

どこからか、「ヨンボ、ガンバレ」という声が聞こえるような気がする。

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