宇野コラム Uno column

宇野良治による宇野コラム Author: Yoshiharu Uno, MD, PhD

IBSの内服薬はプラシーボか?

 

 

BS世界のドキュメンタリ-「プラシーボ:ニセ薬のホントの話」

 

というTV番組は衝撃的であった。

 

原題 The Power of the Placebo

制作 BBC(イギリス 2014年)

再放送予定:2017626日(月)午後500分~

 

その内容を紹介する。

 

最初にアベリストウィス大学の研究が紹介された。

 

対象は自転車競技選手。
選手にはカプセルを渡す。

「効果が高いサプリメント」としてカプセルを飲ませた。

選手たちはカプセルによって、疲労感がなく、記録も上回った。

 

選手たちは、薬の効果を実感し、喜んだ。

しかし、そのカプセルの中身は、ただのトウモロコシの粉だった。

研究者は、これまで多く研究をしてきたが、23%のパフォーマンスの向上があると語った。
オリンピックでも有効であろうと・・・

 

つまり、プラシーボ(ニセ薬)自体にも、それなりの効果があることがわかってきた。

 

つぎは、脊椎骨折の治療。
それは、傷害のある部位の脊椎をセメントで固定する治療である。

 

その治療法の権威者であるカルロス博士は、あることに気がついた。

 誤って異なる部位を治療した人でも、有効性があったということから、

その治療に疑問を抱いた。

 

そのため、手術を行った症例と、手術を行ったフリをした症例を比較した。

その結果、手術をしたフリをした症例でも有効であった。

 

実際には、脊椎骨折で歩けなかった患者で、実際に手術をしていなくても、

1週間でゴルフが出来るようになった。

 

130人の対象で、手術をしていない群と、手術をした群での有効性に差がなく、

さらに症状改善の程度も全く同じであった。

 

つまり、手術をしたフリをするだけで、手術と同じ効果が得られた。

 

では、なぜ、このようなことが起こるのか?

 

イタリアのアルプスでの研究が紹介された。

 

酸素が薄い高地で、実験が行われた。

被験者には、「酸素が入っている」と言って、酸素の入っていない空のボンベが渡された。

空のボンベでも被験者のパフォーマンスが向上した。

そして、PGE2が測定された。

PGE2は、酸素が少ない時に上昇し、痛みなどの高山病の症状が生じる。

そして、酸素を投与すると減少する。

しかし、空のボンベであっても、このPGE2は減少した。

つまり、酸素がなくても、プラシーボ効果でPGE2が減少した。

 

次に、米国コロラド大学の研究が紹介された。

ただのローションを痛み止めのローションとして皮膚に塗った。

その効果、ただのローションでも局所麻酔薬以上の効果が得られた。

その際に脳のMRIを撮影したところ、脳内オピオイドの関与がわかった。

実際には、中脳指導周囲灰白質の部位に作用していた。

つまり、プラシーボで脳内で鎮痛物質が放出されていた。

 

次にカナダのバンクーバーでの研究が報告された。

患者はパーキンソン病と診断され、仕事をやめねばならなかった。

パーキンソン病のためにドーパミンを服用していた。

患者は、ニセの薬の効果を確かめる研究に参加した。

その研究のために、ドーパミンが中断され、歩くことさえできなくなった。

しかし、ニセの薬を飲んだ直後に症状が改善し、歩行が可能になった。

脳のスキャンでは、ニセ薬であっても脳内のドーパミンの量が増えていた。

 

ニセ薬の効果は、薬の外観によっても効果が変わる。

カプセルの方が錠剤より効果がある。

大きいカプセルの方が、小さいものより効果がある。

安い薬より、高い薬のほうが効果がある。

痛みに対しては赤い薬が効果がある。

 

そして、医師が嘘をついて、効果のない薬を有効だと渡せば、

患者の体内で何らかの物質が産生され、プラシーボ効果を生む。

 

しかし、患者に嘘をいうことは倫理的に正しくない。

そのために、ニセ薬と言って渡した場合でも効果があるのかという研究が紹介された。

 

それは、過敏性腸症候群(IBS)での研究である。

この研究はハーバード大学のテッド・カプチャク教授が行っている。


紹介された患者は16年間のIBS症状を有していた。

「薬はニセ薬だが、あなたの自然治癒力で症状が良くなるかもしれない」

と言われた。

服用後、3日後に腹痛と下痢症状が消失した。ニセ薬は3週間服用し、

その間は症状がなかったが、ニセ薬をやめた後に、症状が再発した。

患者は、ニセ薬を求めて、街のドラックストアに行ったが、ニセ薬は手に入らなかった。

研究に参加した患者において、
何も服用しない患者では30%の改善であったが、ニセ薬で62%が改善した。

カプチャク教授は、ニセ薬の投与中の医師の関わりが影響している可能性を示唆した。

 

そのため、医師の患者への接し方で、プラシーボ効果が得られるのではないかと考えられた。

 

そのため、次の研究が行われた。

それは、ニセの針治療である。

ひとつの群では、ニセ治療の際に、会話や診察を丁寧に行い、治療が効果があると説明する。

もうひとつの群では、患者との会話は禁止された。

両者に、実際に針が刺さらないニセの針治療を行った。

結果は、会話しない群での有効率は42%、丁寧に会話した群では62%であった。

つまり、有効でない治療であっても、その接し方によって効果が異なることが判明した。


・・・・・・・・・・・・・・・

 

<コメント>

本物の薬が、果たして有効なのか?
本物の治療が、果たして有効なのか?

多くの薬の有効性は、確かなのか?

薬の有効性を比較する研究で、医師の接し方によって結果が異なる?

つまり、治験の方法によって、結果を左右できる可能性がある。


IBS
の薬の有効性は確かなのか?
IBSは心理的とされていた背景に、このようなプラシーボ効果が影響していないか?

では、食事療法ではどうか?

効果があると思っている食事療法にもプラセボ効果が得られる。・
日本で流行っている食事療法や健康食品はプラシーボ出ないと言えるか?

それを正しく評価する方法はあるのか?

 

この記事の最後に、私が、低フォドマップ食を推進している理由を述べる。

そもそもの理由は、自分で食事を摂取できない経管栄養(経腸栄養:胃瘻や経鼻栄養)の患者で、栄養剤にFODMAPが多い場合に、下痢を来したり、非常にガスが増え、嘔吐による誤嚥性肺炎で死亡するという現場を経験した。

そして、2015年に韓国から報告された研究では、経管栄養の患者さんのFODMAP量を低、中、高に分けて投与した結果、低FODMAPで、有意に下痢が減少し、高FODMAPで下痢が増加したという結果であった。

経管栄養を受ける患者さんでは、どのような栄養を受けたか知るはずもない。そして、その研究ではダブルブラインド研究なので、栄養を投与する人のケアの差もない。つまり、低フォドマップ食では、プラセボ効果がなくとも有効であることが立証されている。

ただし、この研究のFODMAP量は1日3g以下だったので、

それを厳守することが大前提である。


そして、FODMAP量を厳密に考慮しない「なんちゃって低FODMAP」「低FODMAPのような食事」は有効でない可能性がある。


 日経ヘルス


日経ヘルスに低フォドマップ食が紹介される

といっても、スポーツ新聞の見出しと同じです。


「話題の食べ方14」のひとつで、

半頁以下の掲載でした。


気になるのは、FODMAPの「FO]を「発酵性のオリゴ糖」と解説していることです。

この「FO」の解釈は、私が当初、間違って発信していたことで、

この間違いは、私が記した情報だと思います。


正しくは、FODMAPの「F:発酵性」は、O:オリゴ糖、D:二糖類、M:単糖類、P:ポリオール

のすべてにかかったFermentable (発酵性の)という形容詞であり、

発酵性炭水化物であるO:オリゴ糖、D:二糖類、M:単糖類、P:ポリオール

という意味です。








IBS in Rome IVMathematical proof problem

 

Yoshiharu Uno, MD, PhD

 

In IBS of Rome IV, abdominal pain is a prerequisite

This is a mathematical proof problem.

 

IBS = Abdominal painAP)

If, High FODMAP diet (HFD) increased IBS

 

Prove the relationship between HFD and AP


222図1

Proof of intraluminal pressure and local factor of colon is essential.

In addition, there may also be involvement of histamine, oxalate, salicylic acid, and alcohol.

https://sibotest.com/handouts/SIBO_Diet_FINAL.pdf

<解説>

2016年のローマ基準では、IBSは腹痛が存在することが前提になりました。

そして、IBSの腹痛は高FODMAP食で増加することがわかっています。そのために、低FODMAP食はIBSを軽快させます。なぜ、腹痛が生じるのか?単に水分やガスが増加するためではないことが、わかってきました。というのは、同じガス量であっても、腹痛を来さない人も存在するからです。

簡単にまとめると、

FODMAP食では5080%のIBS患者の症状を軽減する。しかし、有効でない人もいる。

IBSでなければガス増加で腹痛を生じない。

この関係を数学的な証明問題のように証明する必要があります。

さらに、SIBOを併発しているIBSでは、高FODMAP以外の糖質全てと発酵性の食物繊維で症状が悪化するため、軽快している人が多いとされる「SIBO食事療法プログラム」では、3か月に及ぶ食事療法が示されています。

https://sibotest.com/handouts/SIBO_Diet_FINAL.pdf

これは、私が知りうる限り、最長の食事療法プログラムです。

 

その中には、さらに、危険因子として、以下が記されています。

ヒスタミン:ヒスタミンは生体内アミンであり、特定の食品中では天然に多い。 ヒスタミン不耐症の症状としては、頭痛、鼓脹、痙攣、不眠症、かゆみ、アレルギーなどがある。ほうれん草、新鮮でない肉、肉や魚の缶詰、長時間煮込んだ骨汁に多い。(魚を食べて蕁麻疹を生じる「ヒスタミン食中毒」を引き起こした既往のある人は要注意)

シュウ酸塩野菜に多く、腎結石、関節痛の原因になるが、消化管にも影響しえる。

サリチル酸アスピリン、鎮痛剤、一部のハーブ、カレー粉に含まれる。感受性が高い場合には、痒み、胃痛、吐き気、頭痛、ふくらはぎの痛みを生じる。

アルコールSIBOでは、全てのアルコールの制限が薦められている。特に、

亜硫酸塩および高酵母含量を含むアルコール制限は必須であるとされる。

・・・・

以上から、低FODMAP食で軽快しない場合には、アルコール摂取を制限し、さらに、腹痛以外の症状から、原因物質を推定して、制限する必要があると考えます。




ここ数年間、毎年、New England Journal of Medicneに論文を投稿し続けていたためだろうか、

編集長の名前で、アンケート調査依頼がきた。

1111図1


 人間は、相手にされないこと、無視されることが一番悲しいのではないか?

今回、ちょっと、相手にされた感じがした・・・

だから、

ちょっと、嬉しい、朝であった。




日本低フォドマップ推進会発表



日本低フォドマップ推進会は、ボランティアの集まりです。



著書「過敏性腸症候群の低フォドマップ食」は、

IBSの患者さんのみならず、これまで多くの医師が購入されています。 

そして、私自身、このコラムで公開相談を行っていますが、

現在、内視鏡のバイトを行っているだけで、

実際に患者さんと接して治療を行っていません。

そこで、私の著書を精読して、医学的知見から医師として、

患者さんに対して指導を行っている(予定も含め)医師をリストアップして、

一覧表を作成し、御紹介しようと考えています。


タイトルは、

日本低フォドマップ推進会公認:低フォドマップ食指導医

ということになります。

会費もなく、公認も無料です。認定証もありませんが、

このコラムで一覧表を公開します。


条件は、低フォドマップ食の基本を守り、患者さんの症状を真摯に受け止め、

科学的に低フォドマップの立場から症状消失を目指す
ことです。

低フォドマップ食の基本を守れば、

その他の薬(例えば除菌薬やプロバイオティクス、ガスモチンや漢方薬など)の使用は、

各医師の判断によります。


将来的には、Rome IV基準に基づいて、多施設研究も計画したいと考えています。


低フォドマップ食指導医を御希望の医師は、

1.氏名、医療施設名

2.低フォドマップ食に対する考え、診療の特徴

を記して、Office Uno Columnホームページ、
お問い合わせフォームより連絡下さい。














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