私は、以前から、そう、低FODMAP食に出会う前から、腸管のガスに囚われていた。

 

その理由は、助けられなかった患者の記憶である。

 

大学病院時代に、原因不明の腹痛の患者が入院した。当時、私は2つあった消化管グループの上から2番目に位置していた。つまり、グループ内には私の上司がいた。その患者は、そのグループで診療することになった。患者は若い女性で、他県の総合病院での様々な検査で異常がなく、IBSと診断されていたが、食欲が低下し、筋力も低下し、ほとんど寝た状態で、杖を使わねば歩行が出来なくなっていた。入院後から激しい腹痛を度々訴えた。そして、その度に腹部打診でガスが存在することを知った。そして、腹部のレントゲン写真では腹痛地一致してガスの存在が認められた。「原因はガスだ!」と思った。しかし、上司は「腹痛を来すほどのガスではない」と却下した。そのため、大腸内視鏡の検査の時に、バルンを使用して、バルンの容量と腹痛の関係を調べた。そして、患者が腹痛を訴えるガス量と同等のバルンの膨らみで痛みを誘発することがわかった。そのため、ガス抜きのチューブを挿入したところ、腹痛が軽減した。しかし、教授の総回診の前の日に、患者は退院(精神科へ?)させられた。上司は「精神的なもの」と診断したのである。私は、その患者を忘れることが出来なかった。

 

大学病院を辞めてから、消化管ガスを除去する方法を常に考えていた。平成13年に腹部に大量のガスがあり、呼吸困難状態にあった患者に遭遇した。以前と同じように、ガス抜きのチューブを挿入し、一次的に軽快した。しかし、持続的な効果を得るために、内視鏡的盲腸瘻を造設 (PEC)した。それが日本で初めての内視鏡的盲腸瘻であったことを知ったのは造設後であった。

b1図1

(Gastroenterologcal Endoscopy 2003; 4Endoscopy 2003; 45:280-285)

そして、単にガスを抜くだけでは、効果が不十分であり、PECから順行性浣腸を行った。それにより、定期的な排便が計画的に行えることがわかったため、その適応を脊髄損傷の排便コントロールに応用した。そして、定期的に排便を行うことによってガス産生も低下することを実感した。その時に思ったのが、大学病院で助けられなかった患者の事であった。PECで助けられたはずだと思った。PECは、画期的な治療であり、その治療に一生をささげようと考えたが、思うように患者は増えず、その治療を継続するために、他の集客が必要とされた。そして、便秘患者の治療を行うことになった。

 

つまり、便通障害の患者を初めから診察したかったわけではなかった。PECの仕事を継続させるためのノルマとしての仕事であった。であるが、便秘患者に異常にガスが多いことに気がついた。このガスは、一体なぜ生じるのか?どうすれば、ガスを減らせるのか?便秘とガスの関係は?と悩むことになった。まず、これまでの経験から、排便を良くするとガスが減るであろうことから、排便を促す内服薬(大建中湯など)での治療を行った。その結果、多少ガスは減るが、完全ではなかった。そして、多くの患者の食生活を聞いているうちに、だんだんと、食事との関係がわかってきた。ガスの多い患者は大腸で発酵する食品を食べていることに気がついたのである。そして、海外では高FODMAPの食品がガスを産生するという観点から低FODMAP食が行われてきたことを知ることになる。その時に、やはり思ったことは、大学病院で助けられなかった患者のことであった。きっと、低FODMAP食で軽快しただろうと思った。

 

そして、長年の最大の謎であった大腸ガスの増加によって便秘になる理由は、ベルヌーイの定理の式で完全に説明することができた。

 Uno Y. Enigma of Intestinal Gas in Irritable Bowel Syndrome.

Am J Gastroenterol. 2017 Jul;112(7):1166-1167.

そして、現在、次の段階の可能性があると期待している。
それは、

α-Galactosidaseアルファ・ガラクトシダーゼ)である。

これは、オリゴ糖の分解酵素である。

豆、野菜、小麦などの高FODMAPであるオリゴ糖は、小腸内で分解されずに、小腸で高浸透刷性の水分増加(下痢)を来し、大腸でガスを発生し、便秘にもなる。しかし、オリゴ糖の分解酵素であるα-Galactosidase300GALU)を服用するとIBSの症状が改善することが低FODMAP食の開発グループであるモナッシュ大学から示された。

 

Tuck CJ, Taylor KM, Gibson PR, Barrett JS1, Muir JG1.Increasing Symptoms in Irritable Bowel Symptoms With Ingestion of Galacto-Oligosaccharides Are Mitigated by α-Galactosidase Treatment. Am J Gastroenterol. 2017 Aug 15. doi: 10.1038/ajg.2017.245. [Epub ahead of print]

 

この酵素によって、オリゴ糖が小腸で分解されて吸収さるために、水分増加もガス増加も抑制できる。

これは、FODMAPの中でも、オリゴ糖だけの問題を解決するにすぎないかもしれないが、画期的な治療法かもしれない。

 

重要なのは、その量である。

300GALUが必要な様である。それに該当するのが、Bean-zymeである。

 b2図1

http://www.bestdigestiveenzyme.com/bean-zyme-full-review-does-it-work/

 

 

さっそく、購入することにした。

<追伸>
現在のところ、日本では購入できないようである。