コメントと返信:トレハロース
<コメント>
お忙しい中、私の稚拙な自由研究に耳を傾けていただき、ありがとうございました。
宇野先生ご紹介の英語文献、英単語ひとつずつ訳しながら読んでまして、まだ理解できずにいますので、じっくり読んでみます。
胃結腸反射について
先日、私ごとですが原因不明の食当たり起こしまして、一週間ほど食事のたびに便意と腹痛を催しました。
超音波検査で、下部小腸壁の肥厚と内腔狭小化が見られました。
小腸でなにかしらの病原菌による炎症が起こってるのかもと思ったので、細菌の餌となる糖質(ブドウ糖以外)与えたらだめなのかも?と一日絶食したら、小腸壁の肥厚、狭小化は改善されていました。腹痛も治まりました。
たまたまのタイミングなのかもしれませんが。。。
病院勤務ながら整腸剤くらいしか出ないだろうと受診せず・・・
細菌検査はしなかったので原因不明です。
トレハロースとクロストリジウムの関係について指摘している文献を読みました。
以前、回盲部あたりで、ぽこぽこガスが無限発生する事が多々ありました。
2年ほど前、エコーで回腸周囲リンパ節がたくさん腫れていたので、腸内細菌が小腸に流入してる?と想像していました。
今は回腸周囲リンパ節はありません。ぽこぽこガス発生もほとんどありません。
先日、トレハロースでどうも腹部膨満感が出ると分かりました。
トレハロースと回盲部のガス無限発生が関係あったのかな?と思ったのですが。
どう思われますか?
スペルト小麦について。
先日スペルト小麦のパンでも腹部症状がでました。
パン酵母にトレハロースが含まれているらしいので、スペルト小麦だけでチャレンジすると良かったかなと思います。
<文献>楠裕明ら. 体外式超音波を用いたPost-infectious IBSと明らかな炎症の既往のないIBSにおける大腸内便分布の検討. Japn J Psychosom Med
2011;51;317-322.
読ませていただきました。
、
私は右側下腹部に自分でも触れる腫瘤があります。横5?×縦7?くらい、小さい水風船が入っているような感じなのですが。
エコーでみても、腸しかなく腫瘍とかではないです。
post-infectious IBS患者の便分布が右側結腸に多いと書いてあるので、
トレハロースの件もあわせて関係あるのか?と。。。思ってしまいました。
最近、横行結腸が綺麗になってきました。拡張が改善してきているように見えます。下垂はまだありますが。
低フォドマップ開始して、最初は肝湾曲部の横行結腸の層構造が見えるようになってきて、3カ月で全体的に層構造が見えるようになりました。
上行結腸のガスと拡張はまだあります。そのうち改善されると良いなと観察しています。
また長くなっていまい、すみません。
今のところ、自由研究、私の人体実験程度。。なのですが。
私個人で研究というところにいけるかは分かりません。
IBSの腹部症状は主観なので、低フォドに取り組んでいても、また症状が出て悪くなって、原因が思いつかないと低フォドマップでも駄目か、、、と挫折しそうになるのですが、
客観的に改善がみられると低フォドマップ食を続ける励みになっています。
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<宇野のコメント>
1.大切なもの
まず、初めに、あなたは自分が気付いたことを卑下する(おとしめる)必要は全くありません。つまり、自由研究などという表現は、「遠慮」ではなく、「自分を貶める」ような表現なので、やめたほうがいいでしょう。先入観のない客観的な発見は重要です。それをどう解釈するのか、つまり、これまでの矛盾を追及できるか?は、訓練が必要ですが、そこまでに至らなくとも、純粋に事実を探求する能力はあなたにあります。それは、非常に大切なものです。
2.壁肥厚と内径狭小
超音波検査では、ご存じのように、high-low-highのように粘膜層、筋層が分離して観察されます。肥厚は筋層でしょう。腸の層構造を考えた場合、筋層の平滑筋量は通常一定なので、収縮した時に、筋層が厚く見えます。逆に管腔が広がれば筋層は薄くなります。つまり、内腔狭小とともに熱くなる筋層は、筋層の炎症による浮腫などではなく、単なる収縮を示しています。粘膜層が肥厚して、内腔の狭小化がない場合は、炎症かもしれません。筋層が収縮して、内腔が狭小化すれば、ベルヌーイの定理から、流速が増加します。回腸末端が全体的に細い管状になれば、盲腸への流入速度が増加するので結腸内の流入速度も増加して、下痢を生じます。これは、腸炎(回腸)では、粘膜の浮腫によっても内腔が狭小化した場合でも同じ原理で下痢を来すでしょう。
3.トレハロースについて
トレハロースは日本ではFODMAPに含むべきと考えています。FODMAPのDは、二糖類で、モナッシュ大では乳糖をメインに考えていますが、二糖類のトレハロースは、日本では、Dの重要な物質です。これいついて、私の本でも記していますが、日本人の3割が40g以上で下痢を生じます。それでありながら、日本人は世界中でキノコを多く食べる民族です。古い文献では、日本人は秋に下痢を生じやすいという傾向にもマッチしています(果物も秋ですが)。そればかりではなく、トレハロースは多くの加工食品に含まれていますが、これも日本特有の事象です。日本での低FODMAP食ではトレハロースを無視すると失敗します。ですから、モナッシュ大のFODMAPアプリや海外の低FODMAPレシピは日本では参考になりません。(失敗します)
トレハロースは乳糖と同様に回腸末端から盲腸で発酵する可能性があり(慢性便秘では左側の場合もある)、なぜか、ご指摘の通りにリンパ節も腫大することがあります。二糖類で回盲部が物理的に拡張して虚血を生じて虚血による炎症のために、クローン病と誤診されるケースもみたことがあります。(クローン病は、ある時期、牛の菌:ヨーネ菌が原因ではないか?と疑われたことがあります。その後、潰瘍性大腸炎でも検出されました。その一つの要因に、牛の菌ではなく、乳糖が関与していたと私は思っています。)
4.スペルト小麦について
原理的には、スペルト小麦にはフルクタンが少ないので、発酵は抑制されるはずです。フルクタンはトレハロースよりも発酵時間が遅いので、回盲部での発酵はトレハロースのためかもしれません。ご指摘のように、スペルト小麦がいいよと言っても、他のFODMAPを混入されるのを懸念しています。
5.右下腹部腫瘤
Low エコーであるので、盲腸でなければ単純に嚢胞、憩室、嚢胞性リンパ管腫が考えられますが、卵巣との関係もチェックしてください。
6.言いたいこと
最初にも記しましたが、あなたのような活動は非常に重要です。よく考えてみてください。日本の首相の潰瘍性大腸炎を軽快させることが出来ないのが日本の医療のレベルです。現在のこの分野での医療自体、何かが間違っているというエビデンスかもしれません。潰瘍性大腸炎の首相が地方に行って、牛乳を飲んで「おいしい」と言って、「毎日、牛乳飲んでください」という生産者に「はい」と首相が答えた報道を見て、私はどうしようもない、やるせなさを感じたのです。「首相!乳糖は高FODMAPなので、潰瘍性大腸炎では避けるべき」と誰も言わないのでしょうか?(私は、そう思って、1年前に私の本を首相官邸に送っています。首相が読んだかは不明ですが。。。)
ですから、あなたのように、多くの医療関係者が立ち上がり、ガチガチの日本の医学界の権威を刺激することは重要なことだと、私は思います。
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