法律相談では、通常は(相談者が好奇心で法律知識を得たいというのだったり世間話をしに来るのでなければ)、相談者が現に遭遇したり遭遇するのではないかと危惧している紛争について、弁護士が事実関係とその裏付け(証拠)を確認して、もし裁判等の法的手段を取った場合にはどうなりそうかの見通しを検討しながら、解決のために何をしたらよいか、今後何を準備しておけばよいかなどを考えて行くことになります。そのためにはそれに適切な時間と、弁護士の知識経験と、弁護士の創意工夫・意欲が必要です。事案の内容により、事案を具体的に把握し、その裏付けとなる証拠・資料を検討し、さらによい解決手段を考えるには、相談にそれなりに時間が必要です。事案を適切に把握したり、証拠の価値を評価したり、さらには相談者が気づかない証拠の存在を指摘したり、また裁判等になったときの見通しを立てたりよい解決方法を示すためには、弁護士の知識・経験がある方が圧倒的に有利です。そして、単なる知識の切り売りレベルにとどまらず、証拠を読み込んだり、判例を調べたり、何かよい手段がないかを検討するとなると、弁護士として意欲を持って相談に当たることが必要です。
無料相談では、そういった相談の質を確保する事情が満たされるかが問題になります。
無料の法律相談には、行政や法テラスが主催するものと弁護士会の法律相談センターの相談の一部などの相談者は相談料を支払わないが弁護士は主催者から日当を受け取るというものと、弁護士事務所や弁護士自身が行う完全に無償のものがあります。
前者の行政(区役所・市役所等)や法テラスの法律相談は、通常法律相談の時間は30分限定です(行政の場合さらに短いこともあります)。少し込み入った相談だと、30分では弁護士が事実関係を十分に把握できなかったり、相談者が聞きたいことを早めにいわなくて十分に答えられなかったりしがちです。また、行政や法テラスの法律相談では、相談者が弁護士を選ぶことはできません。弁護士事務所で行う法テラスの相談の場合も、時間制限はありませんが、法テラスが弁護士に支払うのは5400円(30分分)ですので、弁護士が30分以上の相談にどこまで意欲を持てるかという問題もあります。
後者の完全無償の法律相談はどうでしょう。私はかかってくる電話には聞かれたことは答えるようにしていますが、そもそも電話では事実関係の把握に限界がありますから込み入った相談は無理ですし、自分がやっている仕事を中断して応対しているのですから長時間は避けたい(それでも長時間延々聞き続ける人に対してはやはり不快感を持ちます)し、すぐに思い浮かぶレベルの知識での回答はしてもなにか調べたりあれこれ創意工夫してまでの回答をする意欲は出て来ません。積極的に無料相談を広告している向きもあるようですが、無料相談自体はまったく収入にならないのですから、ビジネスモデルとしては無料相談で来た人を事件受任につなげるインセンティブが強くなるのが普通でしょう。
企業側の大事務所では、1年目の新人弁護士でも1時間あたり2万円以上のタイム・チャージを請求します。パートナークラスのベテラン弁護士だと1時間あたり5万円くらいになることもあります。労働事件でそういう企業側の弁護士と互角(以上)に渡り合っている労働者側の弁護士は、経験がどれほどあっても、専門性がどれほど高くても、依頼者が高く支払えないという理由によって、相談料は30分5000円(1時間あたり1万円)レベルにとどまっているのが通常です。言い換えれば、一般市民が相談する弁護士は、経験1年目の弁護士でも、経験豊富な弁護士でも、さらにはその分野でトップクラスの専門性を有する弁護士でも、基本的に1時間1万円レベルで相談に応じています。(1時間1万円は多額の報酬と思われるかも知れませんが、東京で事務所を構えている弁護士が事務所賃料や事務員給与で年間1500万円程度の必要経費を支出しているとすれば1時間1万円で手取り年収600万円程度を得るためには月200時間の労働=月30時間弱の残業が必要になります)
通り一遍の法律知識を得るということではなく、直面した紛争についてきちんとした回答を得たいのであれば、一般市民にとっては、誰に相談してもせいぜい1時間1万円レベルで相談できる(相談料の設定はそれぞれの弁護士の自由になっていますから、必ずそうというわけではありませんが)という現状からすれば、その分野で経験/専門性のある弁護士を選んで、それなりの時間をとって相談をした方が、結果的に時間を無駄にせずにより満足できることになるのではないでしょうか。
無料相談では、そういった相談の質を確保する事情が満たされるかが問題になります。
無料の法律相談には、行政や法テラスが主催するものと弁護士会の法律相談センターの相談の一部などの相談者は相談料を支払わないが弁護士は主催者から日当を受け取るというものと、弁護士事務所や弁護士自身が行う完全に無償のものがあります。
前者の行政(区役所・市役所等)や法テラスの法律相談は、通常法律相談の時間は30分限定です(行政の場合さらに短いこともあります)。少し込み入った相談だと、30分では弁護士が事実関係を十分に把握できなかったり、相談者が聞きたいことを早めにいわなくて十分に答えられなかったりしがちです。また、行政や法テラスの法律相談では、相談者が弁護士を選ぶことはできません。弁護士事務所で行う法テラスの相談の場合も、時間制限はありませんが、法テラスが弁護士に支払うのは5400円(30分分)ですので、弁護士が30分以上の相談にどこまで意欲を持てるかという問題もあります。
後者の完全無償の法律相談はどうでしょう。私はかかってくる電話には聞かれたことは答えるようにしていますが、そもそも電話では事実関係の把握に限界がありますから込み入った相談は無理ですし、自分がやっている仕事を中断して応対しているのですから長時間は避けたい(それでも長時間延々聞き続ける人に対してはやはり不快感を持ちます)し、すぐに思い浮かぶレベルの知識での回答はしてもなにか調べたりあれこれ創意工夫してまでの回答をする意欲は出て来ません。積極的に無料相談を広告している向きもあるようですが、無料相談自体はまったく収入にならないのですから、ビジネスモデルとしては無料相談で来た人を事件受任につなげるインセンティブが強くなるのが普通でしょう。
企業側の大事務所では、1年目の新人弁護士でも1時間あたり2万円以上のタイム・チャージを請求します。パートナークラスのベテラン弁護士だと1時間あたり5万円くらいになることもあります。労働事件でそういう企業側の弁護士と互角(以上)に渡り合っている労働者側の弁護士は、経験がどれほどあっても、専門性がどれほど高くても、依頼者が高く支払えないという理由によって、相談料は30分5000円(1時間あたり1万円)レベルにとどまっているのが通常です。言い換えれば、一般市民が相談する弁護士は、経験1年目の弁護士でも、経験豊富な弁護士でも、さらにはその分野でトップクラスの専門性を有する弁護士でも、基本的に1時間1万円レベルで相談に応じています。(1時間1万円は多額の報酬と思われるかも知れませんが、東京で事務所を構えている弁護士が事務所賃料や事務員給与で年間1500万円程度の必要経費を支出しているとすれば1時間1万円で手取り年収600万円程度を得るためには月200時間の労働=月30時間弱の残業が必要になります)
通り一遍の法律知識を得るということではなく、直面した紛争についてきちんとした回答を得たいのであれば、一般市民にとっては、誰に相談してもせいぜい1時間1万円レベルで相談できる(相談料の設定はそれぞれの弁護士の自由になっていますから、必ずそうというわけではありませんが)という現状からすれば、その分野で経験/専門性のある弁護士を選んで、それなりの時間をとって相談をした方が、結果的に時間を無駄にせずにより満足できることになるのではないでしょうか。