メインサイトで「まだ最高裁がある?(民事編)」という記事へのアクセスが多くなっている(以前は「民事裁判の話」とか過払い金請求関係の記事へのアクセスの方が多かったんですが、たぶんそういう領域は業者さんがばっちりSEO対策をしているページが増えて検索サイトでの順位が下がったのでしょうね)ため、私のところに上告とか上告受理の相談が相当数あるのですが、最近は、さらに最高裁でも負けて確定したのだが、再審請求をしたいという相談が増えています。ここのところ、2週間の間に3件も民事再審請求をしたいという相談が来て、ちょっと悲鳴を上げました。
 それでメインサイトに慌てて「再審請求の話(民事裁判)」という記事を書きました。

 法律的な説明はそちらを読んで欲しいのですが、一般の方は、刑事裁判の再審請求や再審開始決定の報道を見て、民事裁判でも同じように再審請求ができるものと思うようです。
 そもそも刑事裁判の再審も、報道されるような再審請求事件は日弁連が組織的に弁護団を組んで多くの刑事事件のエキスパートが献身的に地道な努力を続けて、それでも滅多に再審開始とはならないというのが実情です。再審開始決定が大きく報道されるのは、それがとても珍しいことだからです。
 そして、刑事裁判の再審は、確定判決の結果(主文)を変更すべき「明らかな証拠をあらたに発見したとき」という再審理由で行われるのが通常です。そのために再審請求の弁護団は確定判決の根拠となっている証拠について新たな鑑定を行い続けるわけです。
 ところが、民事裁判の場合、確定判決の結果を変更すべきことが明らかな証拠を新たに発見しても、それは再審理由になりません。もし確定判決が誤りであることを1点の曇りもなく立証できたとしても、それは再審理由にならないのです。そこに、民事再審請求をしたいと言ってくる相談者の根本的な勘違いがあります。
 民事裁判の場合、確定判決の証拠となった文書や物が「偽造または変造され」るか確定判決の根拠となる証言が「虚偽の陳述」であることに加えて、その偽造や偽証について有罪判決が確定するなどして初めて再審理由となるのです。

 他に「判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと」という再審理由もあるのですが、これもなかなか難しいところです。
 再審請求をしたいという相談者がこれを言ってくるときは、たいていは判決に影響を及ぼすとは考えにくいような主張についてであったり、小さな事実を積み上げて大きな事実を認定させる構造になっているときのその小さな事実について触れていないレベルのことが多く、また実際には判断を落としている(判断していない)のではなく「間違った判断をしている」ことを主張している場合が多くて、そもそも「判断の遺脱」と言えないことが多いです。
 それに加えて、判断の遺脱の議論をするときに難しいのは、本来の意味での「判断の遺脱」は判決を読めばすぐにわかるはずだということです。民事訴訟法は、判決に再審理由があってもそれを控訴・上告で主張していれば再審の訴えを提起できず、逆に再審理由があることを知りながら主張しなかったときも再審の訴えを提起できないと定めています。判例上は、再審理由があることを知りながら上訴しなかったときもこれと同じと判断されています。さらに判例上、判断の遺脱については原則として判決を受領したときに知ったと解され、代理人(弁護士)が知ったときは本人も知ったと解されています。そうすると、判断の遺脱を知らなかったという特別な事情を主張立証できない限り、確定判決に判断の遺脱が本当にあったとしても、それを再審理由とすることはほぼ無理ということになります。

 そういうことで、民事再審請求をしたいという相談自体が、ほとんどの場合そもそも絶望的なわけで、もちろん、それこそ万一のケースもあるかもしれないので一応相談には乗りますが、やっぱり裁判は1審で勝負するのが原則で、その段階で相談に来て欲しいなぁと思います。