ANAの株主優待券が高騰!「1人6枚まで」購入制限も

夏休みに入り、全日本空輸(ANA)の株主優待券が金券ショップで急騰している。国内線の片道運賃が半額になる優待券はレジャーシーズン前に値上がりするが、8月は1カ月前と比べ3割近くも高騰。背景には、経営破綻した日本航空(JAL)が優待券の発行をやめ、品薄感が出ていることがある。


 全日空は5月と11月の年2回、株主へのサービスとして優待券を発行。優待券1枚で国内線(正規料金)の片道航空券が半額で購入できる。

 株主以外でも利用できることから、金券ショップの人気商品として売られ、サラリーマンの出張や家族旅行などに利用されている。現在流通しているのは、5月に発行されたもので、有効期限は来年5月31日まで。

 日航でも昨年11月まで優待券を出していたが、今年1月に経営破綻して上場廃止となったため、発行をやめた。

 この夏は全日空の優待券のみが店頭に並ぶことになり、流通量が減ったことから、価格が急騰。金券ショップが集中する東京・新橋の通称「チケットビル」(ニュー新橋ビル)では1カ月前まで9500円前後で取引されていたものがジリジリと上昇し、今月6日時点で最高1万2000円、安くても1万1500円で販売されている。

 短期間に3割近く上昇したことについて、チケットビルに店舗を構える老舗ショップの経営者は「JALの優待券がなくなり、仕入れる絶対量が少ないことと、夏休みシーズンが重なったため」と指摘。品薄は確かなようで「1人6枚まで」と購入を制限するショップもある。

 価格が上がれば、利用者のメリットは目減りする。1枚1万2000円で優待券を購入し、羽田(東京)−伊丹(大阪)の片道の航空券を買ったとする。この場合、1万2000円に正規料金2万4700円の半額を加えた2万4350円が必要になる。正規料金との差はわずか350円で、お得感はない。

 羽田−那覇(沖縄)なら、1万2000円に正規料金4万3000円の半額を足した3万3500円となり、9500円が浮く計算。「優待券の購入者のほとんどは東京から沖縄や札幌に行くような長距離区間の利用者ばかり」(先の経営者)という。

 夏休みや連休が近くなると決まって上昇する優待券だが、それ以外の期間では「7000円台が多い」(業者関係者)というから、今の水準はかなり高い。

 先の経営者は「経験則として急激に価格が上昇すると買い控えがおきて一気に下がることが多いが、9月と10月にも連休があるため、今年はそれほど下がらないのでは」とみている。

 一方、優待券を売ろうと思っている株主には絶好のチャンス。金券ショップの買い取り価格は今月6日時点で、1カ月前より最大2割ほど高い1枚9500〜1万円となっている。「全体的に品薄なので、タンスに寝ている優待券があるなら、今が売り時」(別の金券業者)という。

 日航が優待券から撤退した影響は、意外と大きいようだ。