イチロー 「侮辱から始まった」10年連続200安打

20100924-00000517-reu-000-0-viewイチローらしい、射抜くような鋭い打球が中前に転がった。相手チーム本拠地ながら、電光掲示板に記録達成の知らせが浮かび上がる。スタンドのファンの拍手がピークに達したとき、一塁上のイチローは右手でヘルメットをそっと上げて一礼した。試合後、「200安打が簡単ではないことは僕が一番知っている」。安堵(あんど)感が漂った。

 100年以上の歴史を持つ大リーグで「10年連続」で自らの記録を更新し、「10度目」という回数で、ピート・ローズに並んだ。今月18日の日米「通算」3500安打達成時には軽い扱いだった米メディアも、今回は大リーグだけで作り上げた記録とあって、AP通信などもただちに報じた。

 いまや米国でも当たり前のように語られるイチローの記録男ぶりだが、本人は「最初は侮辱から始まった」と振り返る。「あれは一生忘れられない」と話すのは入団1年目の春季キャンプ。メジャーの剛腕投手を前に、メディアに「彼から安打を打てるのか」と質問されたという。

 しかし一見きゃしゃに見えるヒットメーカーは、メジャーでも屈指の鉄人だった。大リーグ1年目から10年間、一シーズンも途切れることなく200本以上の安打を重ねてきた。さらに今季ここまで全試合に出場しているのは、ア・リーグでイチローただ一人だ。イチローは10度目の200安打を放ったこの日、「今は(記者から)『何でヒットが出ないのか』という質問に変わった。周りを変化させたことに気持ち良さはある」と心境を語った。

 周囲の目を変えさせる戦いは、まだ続く。ローズは米スポーツ専門局「ESPN」の取材に、イチローの内野安打の多さに触れて「世界一幸運な男」と皮肉った。来年はローズを上回る11度目の200安打がかかるイチローは一言だけ、「ぜひ(ローズの記録を)超えてあげたいですね」。複雑な思いをグッと胸にしまい、決意を口にした。