問題は供給過剰 新日鉄・住金、合併引き金に生産拠点再編も

20110203-00000011-fsi-000-1-view約9年ぶりの業界再編となる新日本製鉄と住友金属工業の合併。国内鉄鋼業界は自動車など製造業の海外シフトにより縮小は必至な情勢で、供給能力の過剰が問題視されている。合併を引き金にした国内生産拠点の統廃合の可能性も出ている。

国内鉄鋼業界の大型再編は、1970年に富士製鉄と八幡製鉄による新日鉄の誕生、2002年のNKKと川崎製鉄の経営統合によるJFEホールディングス発足に次いで3例目。新日鉄と住友金属の2社と神戸製鋼所は02年に連携強化を決定し、その後、相互の株式持ち合いに発展するなど大手2陣営に集約された。

 その後、世界最大手のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)による買収脅威にさらされる中、新日鉄陣営の3社はスラブなど半製品の相互供給など提携を強化し、出資比率も拡大してきた。

 激しいつばぜり合いを続けてきた新日鉄とJFEの2陣営だが、10年に半製品の相互供給を合意するなど、生産能力を活用した共存共栄態勢の構築を図ってきた。足元の世界の鉄鋼需要をみると、経済成長の続く中国や東南アジアなど新興国に牽引(けんいん)されているものの、国内需要は自動車メーカーなど大口ユーザーの海外移転が加速する中、先細りは否めない。

 日本鉄鋼連盟によると11年の国内粗鋼生産高は前年並みの1億1000万トンを予測。ただ、自動車や建設など「内需は横ばいか微減」(鉄鋼大手)で、新興国への輸出でまかなう構図だ。「将来的にみれば、高炉の淘汰(とうた)は避けられない」(経産省幹部)との見方が強まっている。

 そこで、新日鉄と住友金属の合併で焦点になるのが、本格的な国内生産拠点の再編に乗り出すかだ。住友金属や和歌山や鹿島(茨城県)に生産拠点を置き、新日鉄は八幡(福岡県)や君津(千葉県)を主力とするが、国内生産能力に過剰感が出る中、最適な生産規模の確立は必至だ。

 「統合再編ありきでは考えていない」(住友金属の友野宏社長)とする一方で、「重複する部門の再編成を行い、さらなる効率化を図る」(新日鉄の宗岡正二社長)と言及する。合併効果の早期実現に向けても、生産拠点統廃合に至る可能性も捨て切れない。