東日本大震災 観光や出張の人たち 900人が安否不明

地震発生時に被災地を観光や出張で訪れていた人のうち、15日午後8時現在、約900人の安否が不明のままだ。観光庁によると、主要な旅行会社が扱ったツアーなどで約5500人が宮城、岩手、福島、茨城、青森の5県を観光旅行中だった。大手旅行会社の添乗員付きツアー客についてはほぼ連絡が取れたが、「個人旅行客の一部とは連絡が取れない状況」(JTB)という。被災地の避難所には、遠方からも行方の分からない家族や知人を捜す人が相次いで訪れている。

 JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行によると、旅行会社を通じてホテルや旅館だけを予約した観光客の一部が安否不明という。JTB広報室の担当者は「地震発生時にどこにいたのか把握できず、電話が通じない宿泊施設もある。確認が非常に難しい」と話す。

 仙台市若林区の避難所、市立六郷中学校には、県内はもちろん、埼玉県など他県から行方不明者を捜しに来る人が絶えない。

 区内には、県外にも事業所などを設ける企業が立地しており、多くは出張客とみられる。安否を案じるあまり「なんで分からないんだ」と詰め寄る人も。自らも被災し、近所の人たちと避難所運営に携わる会社員、佐藤敏之さん(49)は「遠くから訪ねて来られても、うちは集落の人間の安否しか分からない」と戸惑う。

 難は逃れたものの、帰宅する手段がなく、観光地に数日間足止めされた人も多い。日本三景の一つ、松島がある宮城県松島町は津波に襲われた。町内の寺の本堂に最も多い時で300人の観光客らが避難した。約50人は地震発生3日後の14日午後になって、ようやく町を出ることができ、バスで仙台に向かった。本堂で3晩を明かしたという埼玉県の男性(27)と栃木県の女性(28)は「地震当日は毛布もなく、寒くて眠れなかった。山形まで抜けて、なんとか首都圏に帰りたい」と話した。