日本企業「脱中国」拍車もジレンマ 無視できぬ巨大市場の魅力

20120918-00000002-fsi-000-3-view日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化に抗議する中国の反日デモは、満州事変の発端となった1931年の柳条湖事件から81年の18日、厳重な警備の中、北京の日本大使館前や上海の日本総領事館近くなど少なくとも125都市で行われた。

反日デモの広がりを受け、トヨタ自動車やイオンなど日本企業では現地工場の操業や営業を停止する動きが相次いだ。すでに生産拠点を他のアジア地域に分散する動きもあるが、13億人を抱える中国は世界最大の消費地だけに、日本企業は今後の対応に苦慮している。

 トヨタ自動車は「従業員の安全確保を優先した」(広報担当者)ため、中国国内の一部工場を18日に続き、19日も操業停止する。ソニーは中国の7工場のうち2工場の18日の操業を休止。パナソニックも休止している青島市や珠海市の工場再開が未定だ。

 神戸製鋼所は18日、山東省や四川省などの4工場と上海にある営業拠点を休業した。19日以降の対応は未定だが、不要不急の中国出張や現地の日本人社員の外出を原則禁止したという。

 小売店でもカジュアル衣料チェーンのユニクロは18日、北京市内を中心に60店を一時もしくは終日休業とした。

 18日を乗り切れたことで、マツダが18日から21日まで操業を停止するとしていた江蘇省南京の工場を19日に再開する方針を決定。ソニー、セブン&アイ・ホールディングスも19日から一部の工場や店舗の再開を予定するなど、事業の正常化を探る動きも出始めた。だが、製造業では、すでに政治リスクや人件費の高騰などを見越して、中国に生産拠点が集中するリスクを避ける動きも相次いでいる。

 パナソニックは約450億円を投じて、マレーシアに太陽電池の新工場を建設し、12月に生産を開始する予定だ。ユニクロもバングラデシュやカンボジアなどに生産拠点を分散し、中国生産の比率を下げる方針を打ち出している。

 大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「リスク分散のため、生産拠点を中国以外に移す動きは加速する。非製造業も中国進出には極めて慎重になるだろう」と指摘する。反日デモの拡大が、日本企業の「脱中国」に拍車をかける可能性もある。

 ただ、巨大市場としての中国の重要性は変わらない。ユニクロは中国を軸としてアジアでの販売拡大を計画しており、中国戦略について「現時点で方針に変更はない」(幹部)という。

 生産拠点として中国の魅力が薄れつつある製造業も事情は同じ。市場に近い場所で生産する「消費地立地」の観点から中国は無視できず「リスクが顕在化しても、中国から手を引くわけにはいかない」(大手電機幹部)というジレンマを抱えている。