判決 (一審)

2007年09月28日

194.判決(全文)

平成19年9月21日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 ×××××
平成19年(少コ)第×××号 慰謝料請求事件(通常手続移行)
口頭弁論終結日 平成19年9月7日

  判    決

東京都猫又区猫町1−23−45−678
 原      告  猫山 芳郎

東京都××区×××丁目××番××号
 被      告  株式会社スクウェア・エニックス
 代表者代表取締役  ×××××
 訴訟 代 理 人  ×××××

  主    文

1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

  事実及び理由

第1 請 求

被告は原告に対し,金60万円を支払え。

第2 事案の概要

1 請求の原因
(1) 原告は,被告から,入会日が平成19年1月17日付け,同年1月20日付けの2通のプレイオンライン入会通知証(以下「通知証」という。)を郵送されたが,原告は被告の運営するプレイオンラインには入会しておらず,その旨を2度の電話と1通の郵送文書(通知証2通のコピーと原告の個人情報を慎重に扱つてほしい旨の平成19年1月27日付け文書)で被告のインフォメーションセンターに通知した。
(2) これに対し,上記郵送文書に対する回答として,原告は,被告のインフォメーションセンターより,データは適切に処置(入会登録抹消)したが,原告名での入会禁止措置,原告名での入会状況等の開示はできないとの内容の文書を郵送で受け取った。
(3) その後,入会日が平成19年2月2日付け,同年2月3日付けの通知証が,平成19年2月8日に,被告のインフォメーションセンターから郵送されたので,同日,被告インフォメーションセンターの××にその旨伝えるとともに,原告名での入会状況を問い合わせたが開示できないとの回答だつた。
(4) 上記のとおり,原告は,プレイオンラインに入会していないことを被告のインフォメーションセンターに電話で伝え,さらに平成19年1月27日付け文書で原告名での不法な入会の禁止措置を求めたにもかかわらず,それ以降も被告は不正入会者の原告名での不正入会を受け付け,通知証を発行したのは,不正の手段により個人情報を取得したもので,これにより原告に多大な精神的負担を与えた。これを金銭に換算すると60万円が相当である。

2 被告の主張
(1) 被告は,被告が提供しているオンラインゲームをプレイするためにネットワークサービスの入会登録があると,入会本人確認のために入会通知証を発送している。本件で,原告名で入会登録があったすべてにつき,入会通知証を発送の上,原告の要請に応じて,原告名の削除措置をとっている。
(2) また,原告から,原告名での入会禁止措置を求められたが,原告名の入会禁止措置を取るためには,会員情報を登録管理するシステムによる対応及ぴ人的体制の構築が必要であり,そのためには膨大な時間,コストがかかり,また禁止措置を行う際に,対象データをどの範囲にするかなど技術的に困難な問題もある。
(3)被告に,原告の要求する原告名での入会禁止措置をとるべき義務はなく,入会禁止措置をとらなかったこと,及び入会通知証を郵送したことにつき,不法行為の要件である故意又は過失は存在しない。
(4) 仮に,被告が住所「猫又区猫町」,氏名「猫山芳郎」名での入会禁止措置を取る義務が認められ,その義務違反についで過失が認められたとしても,当該過失と原告が主張する精神的損害の発生との間には因果関係がない。

第3 当裁判所の判断

1 原告名の削除措置
証拠及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。
(1)被告は,第三者が,原告になりすまして,被告の運営するプレイオンラインに,平成19年1月17日付け,同年1月20日付けで入会したのに対し,入会の上ゲームをするとクレジットその他の決済方法による課金が発生することから,本人確認のため,上記第2,1(1)のとおり,原告に通知証を送付した(甲1, 2, 乙2)。
(2) 被告は,通知証につき問い合わせた原告に対し,返送用封筒を送付の上,本人確認のため,上記通知証を返送するよう依頼し,被告は,送付された上記2通の通知証写しをもとに,平成19年1月30日,原告名での入会登録を抹消した(争いない。甲1, 2, 6, 乙2)。
(3) その後,同様に第三者が,原告になりすまして,上記同様平成19年2月2日付け,同3日付け,同3月28日付けで3回入会したのに対し,通知証の写しが訴状とともに被告に送付され,被告は,これにより本人確認をした上,同4月18日,上記同様原告名での入会登録を抹消した(甲3,4,5,乙2)。
以上(l)ないし(3)の事実によれば,第三者が,原告になりすまして,被告の運営するプレイオンラインに入会した上記5件はデすべて,被告が,通知証の写し等で入会した本人であるか否かを確認できた段階で,すべて入会登録を抹消したことが認められる。また,被告の運用でも,第三者が他人になりすまして入会申し込みをし,被告から,その他人に通知証が送付された場合には,その通知証の返送により,被告が,その他人が入会した本人である否かを確認の上,上記同様の「なりすまし」であれば,入会登録抹消手続が行われていることが認められる(証人×××,甲8)。

2 入会禁止措置
原告名での上記入会通知を被告から受けた原告は,被告に対し,原告名での入会禁止措置を取るよう求めたところ,被告は,「システム上,特定の方のご入会を禁止する事ができません」と回答し,原告の上記求めに応じなかった。
被告にはこのような原告の求めに応じる義務があるといえるか検討する。
証拠(証人×××)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。
(l) 上記プレイオンラインヘの入会手続は,インクーネットを利用し,機械的に24時間365日受け付けられ,新規入会者も対象商品であるゲームの発売状況等に応じて都度変動するものの,概ね,毎月数千人から数万人の規模にのぼること。
(2) 特定の市区町村及び氏名での登録を受け付けない措置(以下「入会禁止措置」という。)を取るためには,人手により,入会者を常時監視しながら実施する対応は実質的に不可能であること。
(3) 更に,上記入会禁止措置を実行するために,会員情報を登録管理するシステムによる機械的対応を取ることにすると,入会禁止措置対象となるデータの管理システムの開発,ユーザーが上記システムに情報を入力した段階で対象データと合致した場合に登録処理を中断するシステム機能の開発,当該機能追加に伴う設備の増強や対象データの管理サーバーの増設,これらを保守・メンテナンスする担当者の新たな雇用等を必要とするが,これらのシステム及び人的体制の構築には,膨大な時間,コスト及び人的体制を要すること。
(4) システム上で入会禁止措置の処理を行うにあたっては,登録される「氏名」と「住所」を対象データとすることが考えられるが,ユーザが入力した情報と対象データが完全に合致する場合には登録処理を中断できたとしても,ユーザが入力した情報と対象データが僅かでも異なる場合には,入会登録を禁止することはできないこと。
(5) 上記(4)の登録される対象データを限定し,「住所」を市区町村まで,「氏名」を完全に一致限度とすると,同一市区町村内に同姓同名の別の個人がいる場合には同姓同名の個人が上記サービスヘの登録を希望する場合に弊害が生じること。
以上の事実によれぼ原告の求める原告名の入会禁止措置を取るためには,そのためのシステム及び人的体制の構築が不可欠であり,そのためには膨大な時間,コスト及び人的体制を要し,しかも,これら膨大な時間,コストをかけ,人的体制を整えても,入力情報と対象データとが異なる場合には上記(4),(5)のとおり不都合が生じることが認められる。しかも,一方で,原告には,第三者による原告のなりすましによる上記入会手続により,個人名を勝手に使用されたことによる不快感は残るものの,ゲーム費用等の課金被害は全くないのに対し,他方で,入会禁止措置を取るためには,被告には,膨大な時間やコストがかかり,人的体制の構築が必要であることを考慮すると,被告に,原告名での入会禁止措置を取る義務を求めることは現段階では困難であると考える。

3 入会状況及ぴアクセス状況の開示
証拠(証人×××)及ぴ弁論の全趣旨によれば,ある特定の上記プレイオンラインサービスへの入会状況及ぴアクセス状況については,個人情報に該当するため,個人情報の開示に際しては,開示要請を行った人物が当該個人情報によつて識別される特定の個人と同一人物であるという確認がなされるか,又は司法機関もしくは行政機関から法的義務を伴う要請がない限りは開示することができないと認められるところ,原告は上記サービスに入会していないことから,原告名での入会状況,アクセス状況に係る情報は,原告以外の第三者の個人情報に該当すると言えるものであるから,原告の上記開示要求があっても被告がこれに応じないことに相当の理由があると考える。

4 まとめ
‐綉第3,1のとおり,第三者が原告になりすまして行った5回のプレイオンラインの入会登録は,被告が,入会者が原告本人であるかどうかを確認の上,全て入会登録を抹消していること,同2のとおり,現段階で,原告から求めた原告名を使用した上記入会の禁止措置を被告に求めるのは,そのためにかかる膨大な時間やコスト及び人的体制の構築の必要性などから極めて困難であること,F隠海里箸り,原告の求める原告名でのプレイオンラインヘの入会状況・アクセス状況の不開示についでは,プレイオンラインヘの入会をしてない原告に開示できないとする理由には十分な合理性があること等を考慮すると,原告が,第三者に原告名を使用されてプレイオンライン入会がなされ,これにより精神的な不安を生じたとしても,これをもって,被告に対する損害賠償請求権を発生させるほどの違法性又は権利侵害があるとはいえないと考える。
よつて,主文のとおり判断する。

  東京簡易裁判所民事第×室

         裁判官 ××××

これは正本である。
同日 同庁 裁判所書記官 ××××



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