おもしろい質問です(さすが俺)

……さてこの質問をよく見れば「おかしな点」がある事にすぐに気づくと思います。

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「お金を刷れば」誰が刷るのでしょうか?答えは「中央銀行(日銀)」ですね。

実は働いても「お金は産まれない」のです、働いて生まれるのは「価値(富)」です。

お金は「金属片」や「紙」にすぎません、「価値そのもの」ではなく「(不思議な)仲介物」にすぎないのです。

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いろいろなものと交換ができる不思議な仲介物を「貨幣」と呼びます。

(みなさんご存じのように物々交換で「取引」はできますが、いろいろ面倒なので「貨幣」と交換するほうが簡単です、交換の効率を高めた「イノベーション」が貨幣の発明でした)

そして、この「仲介物(貨幣)」と「それ以外のモノ」のバランスで起きる現象が「インフレ(デフレ)」なのです。

今回は回答に変えてこの一見不思議な「インフレ」というものを紹介してみましょう。

「市場はどうやって価格を調整するの?」

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「インフレ」は「貨幣(お金)とそれ以外のモノ」とのシーソーゲームの結果発生する。


まず「インフレ」は何かという事を確認しておきましょう。

これは「お金の量がモノよりも多くなった結果、モノの値段が上がる事」です。

おぉ!!「多くなったら」「モノの値段が上がる」!!

まさに「お金を刷ったら、モノの値段が上がる」という事ですね!!

そして「モノの値段が上がる」という事はどういう事でしょう?

「モノの値段が上がる」逆に見れば「お金の価値の下落」になります。

なるほど「希少価値」というものは世の中に厳然と存在するのですから「お金も量がダブつくと価値が下がる」という事はありそうです。

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「なぜ希少になると(量が減ると)価値が上がるの?」

スーパーなどでも日常的に観察できるようにモノの値段は簡単に上下します。
「台風で白菜が大被害」となると、店頭価格は跳ね上がります。

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タベルタイムスより

白菜一つが先週まで250円だったものが、「750円!!」なんて三倍にまで跳ね上がる事もあります。
(絶対的な価値のはずの「お金」の価値が一気に1/3になってしまうわけです、何という事でしょう!!)

さてでは「白菜は台風で1/3に減ってしまった」のでしょうか?
そうだとすると誰がそれを見ているのでしょうか?
(そうです!もちろん誰かが見ているわけはありませんが)

このような場合の価格は「希少価値」と共に「予想(期待)」と「プレミア」で動きます。

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「だれも完全な情報を持たないが、市場は正しい値段に「調整」してくれる」

では「畑」から話を進めていきましょう、ある農家のおじさんは台風で大きな被害を受けました。

なんと出荷できそうな白菜は畑の半分ほどです!!
おじさんは考えます(いつもの値段で出荷したらクビをくくるしかねぇだ)、そうおじさんも人間なのです。

「台風なんて消費者には関係ない」とモンスターっぷりを発揮してみたところで、おじさんも霞を食べて暮らすわけにはいきません。

おじさんは泣く泣く「よし、普段の倍の値段で出荷しよう!!」と決めました。
(実際には農協のおじさんが判断しているかもしれません-農家には保険で充当し、出荷価格を高くするような処理が行われる可能性もあります)
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ヤンマーのサイトより

……さて、なんせ台風です、被害の規模は雰囲気でしかわかりませんが「半分くらいしか取れないよ」という話は本当のようです(行きの車から見た状況かとも合致します)。

バイヤー(仕入れ担当)は農家のおじさんの提案を(多少叩いて)受け入れました。

さて、後は良い売り先を探しましょう。
……やはり台風のニュースの効果は絶大です、スーパーの生鮮野菜売り場担当は真っ青なのでしょう。

メールがわんさか入ってきます……「100玉支給求むXX円」「今回は普段よりX円追加YY円で」「たすけてZZ円」……

ふむ、このZZ円というのは良いな……と思ったら「やっぱりXX円」とメール、ライバル業者からモノが入ったのかもしれません。

「いかに希少価値がある」とはいえライバルは多いのです……早く売ってしまわなければ!!

結果、このバイヤー卸価格は通常価格よりも2.5倍高いYY円前後になりました。

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YouTubeより

スーパーではこれに「リスクプレミア(高価な白菜が売れずにダメになるリスク)」と「台風で大被害を受けた白菜を今日買う」というプレミアを乗っけた価格に決定しました。

(明日の仕入れ値が今日より安くなるかは仕入れ担当にはわかりません、彼らは農家のおじさんやバイヤーよりも「現場の状況」は見えないからです、誰かが「完全な情報」を持っていないのに値段が決まっていくところが市場の不思議なところです)

結果普段の販売価格の3倍の750円となりました。

しかしみなさんご存じの通り、台風の去った後しばらくすると徐々に価格は下がっていきます。
(予想の誤差分とプレミアが薄れ「1/2」に相応しい値段まで収まっていきます)

このように「市場」は「概ね正しい水準に」価格を調整する機能があります。

このように「だれも総量を知らなくても、不思議と値段はあるべき価格に落ち着いていく」のです。
(これを「見えざる神の手」と呼んだりします)

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白菜ではこのように「価格は調整されていく」のですがではお金はどうでしょう?

実はお金も同じで、世界中に「お金の取引で儲けているプロ」がたくさんいるのです。

単純に言えば「為替」でA国とB国の通貨発行量のバランスが変われば「交換レートが変わる」のでそれでも稼げますし、「キャリー取引」というような手口だと「安い白菜を、高いところまで運んで売る」ようなやり口です。
Wikipedia:キャリー取引

身近なところでは「中国では金(Gold)に消費税がかからないので、中国で買って、日本で売るとそれだけで儲かる」というような事もあります。


「お金だけは神聖にして侵さざる価値がある!!」というのは幻想です(そもそも台風の時には白菜に対して1/3になってしまうぐらいあやふやなものなのです、もっとも「お金の価値は変わらないだろう」という「期待」も価格設定にいくらかは関与しますが)。

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ですから(ルートはもう少し複雑ですが)お金も「白菜のように」うまく値付けされていくのです。
(ちなみに通貨は白菜よりも値付けは簡単で「円」「ドル」などは政府の発表を見て量を比べる事もできます)

そう、そして「お金」と「労働価値※」との交換レートを決める「市場」参加者は僕たち自身です。

例えば現在は「仕事は増える一方なのに給料が増えない…けど何となく仕方ない」というように僕たちは雰囲気で何となく「適切な交換レート」をカタチ作っているのです(好景気下なら「こんな会社やめてやる!!」でしょう)。

※「労働価値」としたのはこの場合まさに「賃金」の話をしているからですが、「製品」にしても「原料」との価格差(付加価値)は「労働」で作られます。

(この意味で言えばすべての企業は「労働(とそれによって生じる価値)」を売っているのです)