2014年07月14日

ハモニカクリームズ@Jirokichi, 高円寺

 後半の2曲め、大渕さんの新曲。巧妙に複雑に異様に美しくねじくれたメロディとリズムを浴びているうちに体のなかから何か湧いてきた。むくむくと湧いてきたものがすぱあんと頭から発散しそうになる。しそうになるが、しないまま、体のなかをぐるぐる廻る。顔がゆがむのがわかる。苦しいのではない。嬉しいのだ。自然に口が開いて、笑顔になる。うわあああとわめきだしそうにもなるが、実際には声は出ていかない。入ってくる音楽と出ていこうとするものが均衡をたもっている。その間で身も心も揺さぶられている。その快感! 音楽を、ライヴを体験するということはこういうことだったのか。

 トシさんが抜けたことでどうなるのだろうと不安が無かったわけではない。一方で何か思わぬことをやってくれるのではないか、と期待もしていた。それがどうだろう。器が一回りも二回りも大きくなり、3人の絡みあいかた、呼吸の合いかたが一層緊密に、しかも自在になっている。フィドルとハモニカは、以前はユニゾンでなければそれぞれ勝手にやっていた。今はそこにもう一つ、付かず離れず、同時に全然違うことをやっていながらしかも微妙なバランスを崩さずにもつれたまま疾走するというカタチが加わった。髪の毛一筋のところで破綻を回避しながら、それを延々と続ける。二つの即興が同時に続いてゆくのだ。それをギターがかっちりと支えながら、うりうりと煽る。

 ジャズの手法をとりいれていることは確かだが、それ以上に連想したのはグレイトフル・デッドだ。デッドのライヴで全員の集団即興が佳境に入ったときの感覚によく似ている。全体としてあるまとまりを形成しながら、それぞれが勝手なことをしている。二つの、相反する方向へ同時に引っぱられる感覚。スピード、疾走感はハモニカクリームズの方が強いが、それは個性でもあり、時空の異なるところもある。

 しばらくはトリオをベースに、様々なゲストを迎えてやってみることを続けるという。今回はドラム・キットだったが、ピアノは既にやってみたそうだ。ダブル・ベースとチューバも良いのではないか、と長尾さんに薦めてみた。バスクラも面白そうだ。

 ビル・コンセロというゲスト・ドラマーは曲に合わせた叩き方のできる人で、3人のやろうとしていることをきちんと理解把握し、うまく乗せてゆくことができる。今夜の成功に、ビルの貢献は大きい。日本在住のようで、友人知人が何人も来ていた。ハモニカクリームズのライヴは初めてらしいその人たちが、こりゃあすごい、すばらしいを連発していたのは、ぼくの体験がぼくだけのものではなかった証拠だ。

 異質の要素のぶつかり合いから始まったバンドだが、今や前人未踏の宇宙の彼方を、キント雲を駆って突き進む。この分なら、お釈迦様の掌から飛びだすのも時間の問題だろう。

 これからまたスペインをツアーし、今回は向こうで録音もするそうだ。あちらのミュージシャンも参加し、プロデュースもあちらの人になる由。いよいよますます楽しみだ。09/19 マンダラ2@吉祥寺の「凱旋」ライヴには、なにをおいても行かねばならない。

 ああ、それにしても、このようなライヴを、音楽を体験できるとは。生きててよかった。(ゆ)


yosoys at 12:23|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック イベント