2006年07月07日

『ラグース』武蔵野公演レポート

 武蔵野文化会館大ホールでの『ラグース』公演を見てきました。

 すばらしい!のひと言に尽きます。正直、これほどとは思ってませんでした。
 『リバーダンス』をベースとしていても、音楽とダンスと唄でショウを作るという枠組だけ借りたもので、これはまったく別物です。

 まず特筆すべきは音楽演奏のすばらしさ。バンドはダンスの伴奏だけでなく、バンド独自としての演奏もたっぷり聴かせます。音楽演奏とダンスの比重はほぼ同じ。ダンスの伴奏としても一級で、ある部分ではダンサーに合せるというよりも、ダンサーをコントロールするところもあったと思います。

 一番度肝を抜かれたのはパイプのマイキィ・スミス。十代のパイパーを集めたオムニバス《THE NEW DAWN》にも入っていますが、順調に成長しています。特にレギュレイターの使い方は、パッツィ・トゥーヒやウィリィ・クランシーなどのかつての名匠を彷彿とさせます。だけでなく、ベース的な使い方など新しい感覚もあって、リアム・オ・フリンもここまでレギュレイターの可能性を追求してはいません。ひょっとするとパイプの新時代が始まっているのかも。パイパーの方、関心のある方は必見です。

 DVDではセカンド・フィドルだったブライアン・ガーヴィンはフィドルをメイン楽器にしています。こちらも精進のあとは歴然で、後半、前に出てきて、ギター、鍵盤とでやったソロはなかなかでした。やっている曲が定番曲なので、もう少しバラエティが増すともっとおもしろい。後半、バゥロンをもっての男性ダンサーたちとのコラボはやはりハイライト。バゥロンのソロもおもしろく、観客ものせてました。ビーターで枠をぐるりとこするのは新機軸。

 バンマスで、『ラグース』の生みの親でもあるファーガルは蛇腹の腕も大したもので、サウンドの組立てもあるのでしょうが、この人が入ると常にバンドをリードしてました。即興でアンサンブルを引張っていけるのと、天性の明るい音色はシャロン・シャノンにも通じます。「アーリガト」と、日本語にも節をつけたり、MCにもビートが効いていて、そういうセンスも鋭いのでしょう。

 ブライアンがフィドルをメインにしたので不足気味の低音を補っているのがシェイマス・ブレットの鍵盤。低音だけでなく、この人の鍵盤は実は今のバンドの鍵で、バンド全体を一段レベル・アップさせてます。この人をぼくはニーヴ・パースンズの録音で知りましたが、メンバー紹介では "the old man" と呼ばれてました。おそらく1世代上の年齢でしょう。自身の録音もあるようですが、なによりジャズが弾ける人で、それがこのバンドの演奏を際立ってダイナミックなものにする原動力になっています。後半、ファーガルとのデュオもメドレーの一部で披露しましたが、このピアノが普通の伴奏ではなく、見事なジャズ・ピアノにもなっていて、コンサートの中で最高にスリリングなひと時でもありました。前半最後の〈The rights of man〉ははじめゆっくり始まるところはほとんどもろジャズで、この人のピアノがよく効いています。

 この〈The rights of man〉はじめ、ダンス曲としてホーンパイプがたくさん使われているのも大変おもしろかった。個人的にホーンパイプが大好きということもあって、うれしかったですが、これでダンスに見た目以上の変化がついていたとおもいます。

 どうしても『リバーダンス』と比べられてしまうところですが、これを見ると、いまの『リバーダンス』がいかに硬直したものであるかが、わかります。それだけあちらは細部まで練上げられていて、一瞬の外れも許されないということでもありますが、『ラグース』にはアイリッシュならではの「ゆるみ」、「いいかげんさ」があって、そこから生まれる自由、即興、遊びの感覚は、『リバーダンス』にはないものです。『リバーダンス』の時代は終わった、というと石が飛んできそうですが、少なくとも『ラグース』は『リバーダンス』を越えた、その向こうを目指して、ひとつの成功を収めています。しかもそれを原点である伝統に回帰する、アイリッシュの「肝」をもう一度確認し、それごと革新することでやろうとしている。ですから『ラグース』にはまだまだこれから変化し、新しいものを生出す可能性と潜在性があります。

 おそらく二回、三回と来日すると思われますが、これからどう変わってゆくか、たいへん楽しみになってきました。(ゆ)



yosoys at 09:46│Comments(0)TrackBack(1)この記事をクリップ!イベント 

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1. ラグース 2007 東京公演  [ gandalf.jp ]   2007年07月19日 02:41
2007年7月14日 東京国際フォーラム ホールC 昨年同様、良かったですよ。 詳しく為になるレポートはその方面に明るい皆様にお任せするとして、印象に残っているところをまとめてみました。 素人の評価ですから異論反論ございましょうが、まあ大目に。

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