2015年01月22日

伝説の劇画家・山森ススム先生宅訪問記(本編)

タクシーに乗り、二条城近くの通りで降りて、
京都らしい町並みの小道を進むと、
「YAMAMORI」の表札の掲げられた
これまた京都らしい風情のある京町屋のお宅…
そこが伝説の劇画家・山森ススム先生のお宅でした。

巴先生、下元先生、ロッカーさんに連れ立って
遠慮がちに玄関から中に入ると、その横に山森先生の仕事場があり、
中にお邪魔すると、山森先生がリラックスして座っておられました。

山森ススム先生山森ススム先生は1935年生まれなので、
今年80歳を迎えられます。
持病をかかえられてると聞き、心配していましたが、
かなりお元気そうにみえました。

職人ですので、厳しい方を連想していましたが、
終始にこやかな笑みを絶やさず、
私みたいな若造が貸本時代の話を尋ねるのが珍しいのか
(若いったって70歳オーバーの方々に囲まれたこの中では
比較的若いってだけで、もうアラフォーですがw)
親しげにこちらにも話しかけていただきました。

「若い人は知らないだろうけど、昔は漫画は書店で売っていなかったんだよ。
書店で売ってるのは※大人漫画とかね、日の丸文庫も大人漫画だして失敗したけど
漫画とか劇画は貸本でしか普通は発表できなかったんだよ」
と、いう事を仰っていました。
(※大人漫画とは新聞・週刊誌を主な発表場所とした、1コマ・4コマないし、
短いページのナンセンス・風刺を主題にした旧来の「漫画」の事で
現在の大人むけのストーリー漫画とは別の存在です)

よくNHKあたりのドキュメント番組で
職人の部屋を訪れる…というレポートがありますが、
まさしく今、それを私はナマで体験しているのです。
その上、山森先生の「京都の職人の仕事場」にて車座になっているのが
日の丸文庫時代から山森先生を良く知る、
少女漫画界の大御所・巴里夫先生に、
伝説の貸本劇画家として、辰巳ヨシヒロ先生と交流があった
下元克己先生に、
貸本劇画の研究家で、資料も知識も豊富なF・M・ロッカーさん
と、いったスゴいメンバーなのです。

・・・この中に私が混ざってしまって本当に良かったでしょうか?
こんな体験したくたって、そうそう出来るモノではありません!
それもこれも下元先生のお陰です。本当に先生には感謝です!

さて「劇画漂流」作中にて、
「(前略)『劇画』なぁ あれをわしらにも使わせてくれへんか?
みんなの作品に『劇画』とつけて発表したらおもろいと思うんどすわ」
と山森先生から辰巳先生(劇画漂流作中では勝見ヒロシ名義)に
提案するというシーンがあります。
(青林工藝舎版「劇画漂流」下巻296ページ参照)
それは事実なのか山森先生に伺ったところ、
(「まんが道」のように、作品上の演出等の可能性もありますので)
だいたいそんな感じだったと答えていただきました。
そうなると、山森先生が「劇画」の名称を広めた立役者という事です。
まさに漫画(劇画)の歴史を動かしたひとりなのです!

山森先生と巴先生は何十年ぶりかの再会という事で
日の丸文庫時代の思い出話に花を咲かせていましたが、
それを横で聞いていても興味深かったです。

「あの頃はいつも同じお好み焼き屋にいってたなぁ」
「久呂田さんは飲まなきゃいい人でずいぶん世話になったよ」
「けど久呂田さんは胃薬飲みながら酒も飲んでたなぁ」

久呂田さんとは、日の丸文庫の顧問格の
古株漫画家・久呂田まさみ先生の事です。
劇画の立役者のひとりですが、「劇画漂流」でも描かれてるとおりの
実際にかなり濃い〜い人物だったようですねw

さて、山森先生は中学校時代のクラスメートだった、
のちにさいとうプロで「ゴルゴ13」の脚本を手がける
K・元美津先生とは対照的にだいぶ早い時期に劇画家を引退されました。

「もともと西陣の仕事しながら、劇画もかいてたんだけど
西陣の仕事が忙しくなって、そのまま劇画から離れたんですわ」
と、ご本人は話しておりました。そして、
「ありがたい事にその時から、今の螺鈿細工の仕事も
途切れる事がなく仕事が入ってきてるんですわ」
と笑っておられました。

山森先生新作しかし、山森先生の劇画への思いは
未だ消えてはおりません。

ここ数年、山森先生は新作の劇画をコツコツと執筆されているのです!
貸本劇画ファンには懐かしいと思われるキャラ
「北大路竜之介」も活躍しているみたいです。

発表の場がないというのが、漫画(劇画)文化の観点からみても
非常にさみしい話ですが、
ファンの方がネット上にUPしようという動きがあるとの事ですので、
いつの日かこの新作群が気軽に読める時が来るだろうと思います。

新作の一部分はこちらで見る事ができます。
http://ameblo.jp/kage-ryunosuke/entrylist.html

山森先生の仕事場山森先生の仕事場の壁には、螺鈿の作品の他、
こうして劇画家時代の盟友、
さいとう・たかを先生の色紙が飾ってあったり、
劇画工房結成のきっかけとなった
短編誌「摩天楼」のポスターも貼ってありました。

その中、気になったのが
宮崎駿監督と宮崎吾朗監督の
宮崎親子と一緒に写っている男性の写真。

「これはね、次男が元ジブリのアニメーターでね、
テレビにうつった時の写真ですわ」

そう、山森先生の次男・山森英司さんは
「千と千尋の神隠し」「ホーホケキョとなりの山田くん」「ゲド戦記」
等、宮崎駿監督、高畑勲監督、宮崎吾朗監督の下で活躍し
「猫の恩返し」では作画監督補も担当された原画マンなのです。

「宮崎駿さんが引退しはったでしょ?だから今はジブリをはなれて
映画のドラえもんに関わっとるそうですわ」
何でも最初は英司さんも漫画家をめざして賞もとった経験があるそうですが、
漫画の道は断念して、アニメーターへと転身されたそうです。

もっと色々なお話をうかがいたい所ですが、
名残惜しくも、そろそろ講演の時間も迫っており、
おいとまする事になりました。

最後に山森先生には玄関先まで見送っていただきました。

「マンガミュージアムへはちょっと行けないけど、
かわりに娘が行くのでよろしくお願いします」
との言葉どおり、講演の時に山森先生の娘さんが来ておられ、
何と先ほど拝見させていただいた新作劇画の数々と、
劇画工房の記念写真に、短編誌「影」執筆者のサイン入りの
手ぬぐいなどなど・・・
このミュージアムに展示されてしかるべきお宝を持って来ていただき、
私も少し見せていただきました!

いやいや、まさか劇画の歴史にこうして触れる事ができるなんて・・・
京都へは日帰り強行軍で遠征しましたが、
予想以上に濃密な時間をすごさせていただきました!

山森先生、有難うございました!
新作劇画が発表されて読める日を楽しみにしてます!

こちら山森ススム(山森博之)先生のホームページ。
美麗なる芸術品である、先生の螺鈿細工もこちらから
注文ができるそうです^^
http://kyoto-hakuho.com/yamamori









yota874harahara at 21:58コメント(4)トラックバック(0)漫画家に関する話  

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コメント一覧

1. Posted by ガチ坊   2015年01月23日 07:00
ひさかたぶりに濃厚な記事でした。ありがとうございます。

私のブログでも一時扱ってましたけど、劇画工房って手作り感が漂っていて、魅力的です。
トキワ荘も生き残りは我孫子先生だけで、同時代の劇画工房も少なくなったものです。

私などは傍観者としての目線しか無いですから、将来も考えず漫画や劇画に賭けたあの熱いソウルは、当人たちでなければ味わえません、と感じました。

山森先生の最近作見ましたけど、相変わらず濃いですね。

こういうムーブメントは日本のロックもそうですが、初期だからいいんでしょうね。下元先生の「逃げたから」という発言は・・・ファンだっただけに、残念なような良かったような。
2. Posted by 原田 高夕己   2015年01月23日 16:43
>ガチ坊さん。
トキワ荘・新漫画党の系列の先生も
国分寺・劇画工房の系列先生も
どちらも将来の補償も無く「悪書」扱いされた
漫画の世界に身を投じた偉大なる先人ですね。

昭和30年代は、そうした若者達が中心になり
一大ムーブメントをまきおこす事が出来た
熱い時代だと、その時代に青春時代をすごした
先生からお話をうかがい、改めてそう感じました。

下元先生も山森先生のように最新作を描くという
意欲はあるとの事ですので、
いつかその新作が読める時を楽しみに待っています。
3. Posted by ハクダイ(ハクダイのカカク管理人)   2015年04月29日 16:47
はじめまして、ハクダイのカカクという昭和マンガ研究サイトを運営しておりますハクダイと申します。今回、山森先生の新作、1作だけですが、公開の御手伝いをさせて頂きました。
 今後、ちょくちょく寄らせて頂きます。
4. Posted by 原田 高夕己   2015年04月30日 10:10
>ハクダイさん。
こちらこそはじめまして!
山森先生の新作がついに公開されたのですね^^
たいへんお疲れさまでした!

私は残念ながらキンドルをもっていませんので
読む事が出来ませんが…
濃密なインタビュー記事、興味深く読ませて
いただきました。

この新作公開をキッカケにして山森作品の再評価が
なされる事を切にねがっております。


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livedoor プロフィール

原田 高夕己 (はらだ たかゆき)

売れないので兼業漫画家をしております。
現在「SPOMA」にて、プロ野球パロディ4コマ
「完全燃笑!プロ野球」が無料配信されています。
よろしければ、覗いてみてください。
http://spoma.jp/

トキワ荘好きが高じて、
トキワ荘通り恊働プロジェクトのスタッフもやっております。

【経歴】伝説のギャグ漫画家ながいけん閣下のアシを経て1999年にデビュー。
翌年小学館・少年サンデー超増刊にて「銀魚鉢」を一年間連載。
その後、2006年に芳文社・まんがタイムで4コマ漫画家として再デビュー。
未だ単行本を出す事無く、現在に至る・・・

お仕事も随時募集しています。
takayukiharada1976?yahoo.co.jp
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