髙橋洋 ブログ 二塁手

2015年05月

ブログの更新をちょっとばかりサボっていたら、何人かのひとにお叱りや催促や心配を…要は「なんで書かないの?」という不満をそれぞれのカタチでお示しいただいた。えっと…これ一応締切のない自主活動なんだけど…と思いつつでも、とりあえず仕事が忙しく疲れているときも、どヒマだがメンタルが撃沈しているときも関係なく月に三回更新しようというひそかな契りを破ってしまった自覚はあります。だからごめんねとパソコンのまえで頭を下げたつもりですがやはり伝わらないようで。そもそもブログを始めたのが世間ではとっくに下火となった三年くらいまえだったし、そうやって煽ってもらえるのはむしろありがたいことです。時代遅れのひとりごとにこれまでつきあって下さっている読者さま、あらためまして僕は元気です。これからもできるだけコンスタントに書こうと思います。

 

笑ってもらってかまわないのですが、さいきんフェイスブックをはじめた。最近かよ…と何人かのひとにあたたかい失笑と歓迎をいただいた。とっくにブームは過ぎ去っているのですね。「フェイスブックは放置」と言うひとが結構いた。何年も前から一度やってみたらと誘われていたのを漠然とした怖れから拒否し、ここらでようやく腰を上げる僕の仕事は人気・流行商売なはずで、そのあたりもう少しアンテナ立てないと…反省。だって、実際にやってみるとなかなかおもしろい。「今日のランチは抹茶パンケーキで~す」というお友達のキラキラ写真を日々眺めるためにおれはケータイもってるんじゃない、というSNSに対する偏見をひどく反省した。べつにパンケーキ写真だけをアップする場ではないようだし、なんならだれかが投稿したマジに美味そうなパンケーキ写真って結構「いいなあ~」と思うことがあり結果「いいね!」という心境になるわけなのですね。反省に次ぐ反省。

 

イッチン、という中学の同級生に再会した。大学時代に僕のアパートに泊まったのが最後だったか。その後は手紙のやりとりくらいであるときから連絡先がわからず途絶えた彼と、すこし前に品川のビヤバーで会った。これ完全にフェイスブックのおかげ。出張終わりで束の間会っただけなのだが乾杯のビールが運ばれるのも待たず鳴る仕事の電話に対応する彼の(おそらく上司としての)話をとなりで聞いていると、自由業・柄シャツの自分にはチンプンカンプン、でもあきらかに仕事できるダークスーツのビジネスマンであった。えらくなってんだな。心技体すべてにおいてコイツには絶対かなわないと思いながら、それでもちっぽけな自分にしては珍しく疎むでも妬むでもなくひたすら(どの教師よりも一番)影響を受けたイッチンも、はるか劣等生だった僕もともに42歳。青い血がさわぎました。あるテレビドラマで僕を見つけおどろいていたという彼のオカン、向かいの団地の坊主少年はいまコツコツと俳優をやっております。今度大阪に帰ったとき奥さんにも挨拶に行こうかな。フェイスブック、いまごろいいかもと思ったのでした。あ、ちなみにオフィシャルではなく個人的な知りあいとオトモダチさせていただいています。

舞台『アドルフに告ぐ』の稽古中である。前回出演させていただいた舞台『私のなかの悪魔』が2013年の春だから、ちょうど二年ぶり。二年というのはいざ稽古がはじまる前にはとんでもないブランクに感じて、怖れと不安からすがりつくように禁酒に走りそれでいてラーメン率が上がるというみみっちい混乱状態におちいるわけですが、稽古前日の「あ~もうどうなってもカマワン、煮るなり焼くなりメッタ打ちにしてくれ」というすがすがしい敗北感を経て、いま現在二週間の横浜通いを終えた。神奈川芸術劇場という立派な稽古場を完備した施設で日々、アドルフ・ヒトラーを演じている。ん?ヒトラーやるの!?…とおどろかれる。そう、ヒトラーやるんだよと答える自分もさいしょはおどろいた。というか、やっぱヒトラーってだれかが演るんだ?…そりゃ演るよな、演らないと芝居が成立しないしな…しかしおれか…まじか…ヒトラー?ヒトラーなんてどう演ればいいのだ? というはげしい混乱状態がいまだつづいている。



演出家・栗山民也はヒントしかくれない。いや違うな。ヒントを、くれる。それはおもに人間をつかまえる具体的な方法というよりも、あくまでもその人間をつかまえている具体的で明確なイメージ。イメージはこの悩み多い左脳をすり抜けてもっともっと身体の奥深くに到達したとき、ヒトラーとは100%別人であるはずの自分のなかでスパンと息を吹くであろう…であるはず。だから本番までに、なんとか本番までに…といま稽古しています。栗山さんとご一緒させていただくのは今回が初めて。初日の顔合わせのとき、「初めまして髙橋洋です」とご挨拶した僕に、「あ…」と無表情にひとこと。え?それだけ?とビビった新参者に対して、いまはときどき(ほんとうに時々)ダメ出しの途中でニヤッとわらう。ちょっとしたジョークを発するときの初動がさりげなさすぎてそれが冗談だと一瞬気づかない、その隙間を、あるとき写真を見せてくれた愛犬そっくりな栗山さんの「ニヤリ」が埋めるのです。僕が仕事をさせていただいて好きだなと思った演出家や監督はみな、あいまいで且つもっとも直接的なヒントをくれる。



共演者の鶴見辰吾さんは毎日ランニングか自転車で劇場まで通っている。鶴見さんの自転車熱は有名だが、すこし前にフルマラソンを3時間12分で走ったというエンタメニュースをみたとき僕はひっくり返り、はじめてご一緒させていただいた十年以上前の舞台で「おれ今日、横浜から埼玉まで自転車で来たんだよ」とさらりと言われたあのショックを思い出した。鉄人にもほどがあるでしょ…カープの衣笠祥雄か。という心底のおどろきを先日通勤マラソンの汗を楽屋シャワーで落としたばかりの彼にぶつけてみると、「うん、変態だよねおれ」とわらう。ど変態です、先輩。そして敬意を表します。にもかかわらずみんなで中華街へ(道一本へだててそこ)行ったときには普通にビールをがんがん飲み楽しんでいるようなところや、今回同じく共演させていただく成河さんのべつの舞台を観劇した際たまたま鉢合わせた僕に「あんなすごい俳優と一緒にやるのかと思うとおそろしい(同感)」と素直に話してくれるようなところも、ナイスガイ。僕もみならってがんばります。というわけで、他のスタッフや共演者のことなど追々書いていこうかなと思う。




舞台『アドルフに告ぐ』
http://www.adolfnitsugu.com/

 


 

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