December 19, 2008

システマティックカウンセリング:『熟練カウンセラーをめざすカウンセリング・テキスト』 2

熟練カウンセラーをめざすカウンセリング・テキスト
熟練カウンセラーをめざすカウンセリング・テキスト Gerard Egan 鳴沢 実 飯田 栄

創元社 1998-08
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本書は、組織研究などの分野の著作を多く出しているジェラード・イーガン氏による、「援助」をするための、学際的で問題解決志向のアプローチとしてのカウンセリングを勉強するためのテキストになります。


本書を読む前に理解しておかねばならないことがあるのですが、アメリカでは日本と違い、“カウンセリング”はそれ単体として授業が成り立っており、日本のように“異常心理学”(精神病理など)とは峻別する形をとっています。

そんなわけで、この本はカウンセリングそれ自体の過程について具体的なアプローチの進め方を勉強するということが目的となっています。
(よって、病理の深い人の治療や、人格変容を目的としている精神科医などの病身臨床の方には多少物足りないものになる可能性があります。)


背景となる特定の理論があるわけではありませんが、


行動主義者からは本書はヒューマニスティック(人間中心的)な考え方をうまく取り入れたテキストであると、ヒューマニスティックな人たちからは行動主義の考え方をうまく取り入れたテキストであると評された。私たちにとってはどちらの学派の理論もなくてはならないものであり、かつ相補的であるため、この改訂版においてはさらに両方の理論を折衷することに努めた。援助するためのテクノロジーには、医学のテクノロジーがそうであるように、常に人間味がなくてはならないのである。(はじめにより:括弧内筆者)


とあるように、“行動主義”“人間性”といった二つの大きな理論を折衷したものを軸としたカウンセリングについて書かれています。


また本書におけるカウンセリングの説明の特徴として、カウンセリングの過程を、以下のように大きく3つに分けそのそれぞれにおいてやるべきことを細かく設定するという形式をとっています。


≪ステージ1≫ 問題状況の明確化(現在のシナリオ)

≪ステージ2≫ 目標設定(好ましいシナリオの開発)

≪ステージ3≫ 実行(クライエントが実行するのを援助する)

このように、3段階に分けて援助過程が解説されています。
枠組みから見てお分かりの方もいるかと思いますが、非常に行動主義的で、解決指向型の形式となっています。

この形式に沿って実際の援助をすすめていくわけですが、その際に必要になってくる“傾聴”だとか“かかわり”などのコミュニケーションの能力についても解説されており、この点がヒューマニスティックの考えを取り入れたという部分になるわけです。


大雑把に言ってしまえば『行動主義的立場から援助過程を組み立て、ヒューマニスティックなコミュニケーションを用いてその援助過程を進めていくことにより、問題状況を改善する事を目標としたカウンセリング』、が本書の言う『カウンセリング』に値するということになります。


本書の内容は、上記の3段階の枠組みを基本として、


第1部 援助とは
  第1章 援助の専門家としてのカウンセラー
  第2章 援助モデルの概観

第2部 基本的なコミュニケーションの技能
  第3章 かかわりと傾聴
  第4章 共感とプローブ

第3部 [ステージ1] 現在のシナリオ
  第5章 [ステップ-A] 話せるように援助する
  第6章 [ステップ-B] 焦点化
  第7章 [ステップ-C] 「促進」すること:新しい展望に向けて
  第8章 促進の技能

第4部 [ステージ] 好ましいシナリオの開発
  第9章 新しいシナリオづくりと目標設定

第5部 [ステージ] クライエントが実行するのを援助する
 第10章 [ステップ-A] 実行のためのストラテジーを考えるよう援助する
 第11章 [ステップ-B] ストラテジーを選択し実行計画を作成するのを援助する
 第12章 [ステップ-C] 実行―クライエントがプログラムを遂行するのを援助する 


といった構成になっています。


この構成を踏まえて、その援助過程をより具体的に記述するなら、


クライエントが問題状況を話せるようにし、

問題状況を明確化し、

何が問題で何をすべきかを明らかにし、

そのためには何を目標にすればいいかを具体的に考えるようにして、

目標ができたら、それを実行するための具体的な方法(戦略:ストラテジー)を考えるようにし、

その中から現実的なものを選択し、さらにそれを実行計画に落とし込み、

最終的には実行するのを援助する


といった感じになります。


行動主義と、ヒューマニスティックの考えを上手くまとめてひとつの援助過程の枠組みを提示したという意味では非常に参考になります。

また、説明の合間に「こういう応答だとクライエントがこんな反応する」といった具体的な事例が豊富に挟まれているので、具体的なレベルで理解できるつくりにもなっています。
翻訳もすんなりと読めるレベルです。


ですが、ひとつひとつの説明が冗長で、「その喩えをここで記す意味があるのか」と疑問を感じるような文章が多く、読みすすめるのが非常に辛い本です。
1冊通して理解するには相当骨が折れます。
分量から言っても、500ページ弱もあるため、間を空けると前の援助過程の段階を忘れてしまったりするので、読むのであれば一気に読むのが無難だと思います。


ロジャーズ一辺倒で“傾聴”しか知らないために、実際のカウンセリングにおいて何回やっても同じような話でぐるぐる回ってしまい、一向に先に進まないという方や、身近に指導者がいなくてカウンセリングの筋道をどう立てていいか分からないといった方には、本書が“カウンセリングの枠組みの見本”として役立つでしょう。


しかしながら、それ以外では、どうしても読みたい人だけ読まれるのが良いのではないかと思います。


【関連エントリー】
『熟練カウンセラーをめざすカウンセリング・ワークブック』(投稿予定)
(本書がテキストなら、これはその演習版。)


『カウンセラーのための基本104冊』
(本書に関する書評が載っている、心理臨床家を目指す人のための読書案内。)

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