俺が還ることのできる場所。
それはいつだって、かみさんの隣だった。

かみさんがどこにいようと、俺はかみさんのいる場所を目指した。
そして、かみさんの姿が俺の視界に入ったとき、俺は還ってきたんだな…と感じることができた。

自分の還れる場所というのは、温かくて、柔らかい。
心も身体も緊張から解放されて、安らぐことのできる場所であり、人が無防備になれる場所だ。

そこはいつだって、愛情と慈しみで満ちている。
そこはいつだって、笑顔と幸せで満ちている。

還れる場所というのは、そういうものだ。

・・・

かみさんが亡くなってから。
俺は還れる場所を失った。
自宅でさえも、還りたい場所ではなく、還るべき場所でもなくなってしまった。

自宅にいたって安らぐこともできない。
そこには慈しみもなければ、笑顔もないのだ。
温かさも柔らかさもない、無機質な空間なのだ。

自宅以外の場所はなおさらだ。
どこにいたって、寂しくて、孤独を感じる。

周囲の世界のすべてが、俺の心や身体とズレている。
周囲の世界のすべてが、俺の皮膚と摩擦を起こしている。
おかげで俺は、心も身体も擦り傷だらけだ。

そうだ。
世界のすべては、俺にとって痛いのだ。

この世界には、俺の還れる場所がない。
この世界には、俺の還りたい場所がない。

もう、どこにも戻れない。
だからこそ、俺は戻れる場所を探し求め、「還りたいな…」とつぶやくのだ。

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