俺の会社は、伊豆大島などの離島にも支店を持っている。

普通であれば、離島へ異動させられることはない。
だが、管理職は別だ。
本人の意思に関わらず、伊豆七島のどこかの島に異動させられることがある。

平成19年の夏、俺が管理職になることが決まった時、
「ひょっとしたら、俺は近い将来、伊豆大島とか八丈島あたりに異動させられるかも・・・」と心配になった。

たいていの場合、離島への異動を命じられた管理職は、家族を東京に置いて、単身赴任をする。
そんな事情があったので、俺が管理職になった時、離島への異動を命じられたら、かみさんと俺との生活はどうなるんだろうと不安になった。

・・・

島というのは、とても狭いコミュニティだ。
良く言えば、人間関係が濃密。
悪く言えば、閉鎖的。

これまで島に異動した社員の中には、島独特のコミュニティに耐えられず、鬱になったり、本土に逃げ帰ってきた人もいたそうだ。

俺はかみさんに聞いた。
「俺が管理職になった時、もし島に異動させられたらどうする?」

かみさんの答えは意外だった。
「私も一緒に行く」

俺は言った。
「島って大変らしいよ・・・。本土から来た人は、何をしても噂の的になるし。いつも誰かに監視されてるような気分になるらしいよ・・・」

すると、かみさんは言った。
「私、そういうの平気だもん」

・・・

以前、「かみさんとの出会い」というタイトルでブログを書いた。
その記事の中で、俺は次のように書いた。

> 俺がかみさんに対して抱いた第一印象、それは「不思議な女性」だった。
> 「他人に対する不信感」を拭えない俺、他人に対してバリアーを張っているような俺に対し、
> かみさんは、無理やりバリアーを破って接近してくる、そして、俺の傍でニコニコと笑っている。
> そんな女性だった。

こういう性格のかみさんだ。
初対面の人にでも気軽に話しかけ、アッという間に仲良くなってしまう。
20年以上一緒にいて、そんな場面を何度も見た。

それがかみさんの長所であり、強みだ。
島の住民たちがいかに閉鎖的であろうと、かみさんなら、島民たちと馴染んでしまうに違いない。

・・・

結局、島に異動になることはなかったのだが・・・

島に異動になって、かみさんと一緒に数年間、島で暮らす。
そんな姿を想像すると、心が暖かくなる。

俺が会社で仕事をしている間、きっと、かみさんは一人で島内を散歩しただろう。

港に行けば、漁師さんがいる。
かみさんは好奇心が旺盛だ。
きっと漁師さんに話しかけただろう。

「このお魚、何ですか?」
「どうやって、獲ったんですか?」
「どうやって食べると美味しいの?」

そんな風に話しかけ、漁師さんとすっかり仲良しになり、魚をもらって帰ってきたかもしれない。

興味、関心があれば、相手が見ず知らずの人であっても、かみさんは平気で話しかける。
そして、あっという間に仲良しになってしまう。

会社が休みの日には、仲良くなった人の家に俺を連れて行ってくれたかもしれない。
そうして、俺も、次第に島民と仲良くなっていく。
かみさんのおかげで、俺も島民の方々と馴染むことができただろう。
かみさんがいれば、俺の島での暮らしも、充実した楽しいものになっただろう。

・・・

そんな生活もしてみたかったな・・・
かみさんが死んじゃった今、こんな暮らしを夢見ても、虚しいだけだ。

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