かみさんは毎日「愛妻弁当」を作ってくれた。
俺が頼んだわけでもないのに、かみさんは毎日「愛妻弁当」を持たせてくれた。
俺が忙しくて、毎晩「午前様」
で帰宅するような部署にいたときは、二食分もの「愛妻弁当」を作ってくれた。

俺は「毎朝作ってたら大変でしょ?」、「
そんなことまでしてくれなくてもいいのに…」とは言った。
甲斐甲斐しく弁当を作ってくれる彼女の姿を見て、俺は切なくなってしまったのだ。

だが、かみさんは「
別に大変じゃないよ~」と応え、鼻歌を唄いながら「愛妻弁当」を作ってくれた。

・・・

昼休みになると、
かみさんが作ってくれた弁当を食べる。
ゆっくり時間を掛けて、
味わいながら食べる。

激務に耐え続ける俺にとって、かみさんの「
愛妻弁当」を食べるのは、癒しの時間だったのだ。
離れてはいるけれど、かみさんを身近に感じることのできる優しい時間だったのだ。

そんな俺の姿を見て、部下の女性が「嬉しそうですね~」
と言っていたことを覚えている。

そうだ。
確かに俺は嬉しかったんだ。
確かにあの時、俺は幸せだったんだ。

・・・

俺は誰かのために料理をしてあげたことがない。
ましてや弁当を作ってあげたことなどない。
俺は料理
ができないのだ。

だから俺には、かみさんの想いがわからない。

彼女はどんな想いで「愛妻弁当」を作ってくれていたのだろう。
想像するしかないのだが、きっと「プーちゃんのために…」とか、「プーちゃんが歓んでくれるだろうなぁ…」だとか、「プーちゃん、美味しい!って言ってくれるかな?」だとか、そんなことを想ってくれていたんだろう。

本当にありがたい。
本当にありがとう。
かみさんの想いに応えたい。

だが、
もう彼女はいないんだ。
たった一言、
感謝の気持ちを伝えるだけなのに、それさえもできない。

そのことが、とても哀しいんだ。


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