睡眠薬を飲んでから床に就く。
目を閉じて、
自分の心臓に意識を集中する。
このまま永久に目が覚めなければいいのに…と想う。

次第に意識が鎮静してきて、
いつの間にか眠りに落ちてしまう。
夜中に数回の中途覚醒はあるものの、ある程度は熟睡できているんだと思う。

午前6時前後には目が覚める。
あまりにも哀しくて、あまりにも虚しくて、あまりにも
重苦しい1日の始まりだ。

永遠に眠っていたいけど、
仕方がないので起床する。
頭の中に
靄が掛かっているかのようで、ボンヤリとしている。

それでも俺は、かみさんの仏壇の前に座り、線香を手向ける。
線香の煙に意識を集中していると、なぜだか無性に哀しくなってしまう。

そして俺は、
バルコニーに出る。
ゆっくりと時間を掛けて、
1本のタバコを吸う。
その間おそらく10分弱だろう。
1日の中で最も哀しくて、最も虚しくて、最も重苦しい時間だ。

人の気配のしないバルコニー。
まだ薄暗い空。
物音さえしない。

そんな環境のせいか、抑圧していた想いが噴き出してくる。
隠していたはずの「
生の俺」が、剥き出しになるのだ。

かみさんがいない。
俺は独りぼっちだ。

心が凍えてしまいそうだ。
心が
潰れてしまいそうだ。

なんで容ちゃんは死んじゃ
ったんだ?
なぜ俺は容ちゃんを救えなかったんだ?
容ちゃんがいないのに、なんで俺は生きているんだ?

こんなに哀しいのに、こんなに苦しくて辛いのに、いったいいつまで生きていかなきゃならないんだろう…と想うと、気が遠くなる。

哀しみと、寂しさと、後悔と、罪悪感。
その他のさまざまな想いが綯交ぜになって、俺を苛む。

それでも俺は、想いを圧し殺す。
明るく元気な課長の仮面を被り、日常へと踏み出す。

誰も知らない。
誰も気づかない。
バルコニーでタバコを吸っている10分弱、俺がどれほど醜い心を抱いているのか、誰も知りはしない。

俺が心の中で哭いていること。
俺の心が血を流し続けていること。
周囲の人々は誰も気づかない。

本当は哀しいくせに。
本当は死にたいくせに。

それでも俺は笑うんだ。

なんのために?
みんな、哀しい人が嫌いだからだ。
みんな、哀しむ人を遠ざけたいからだ。

だが、こんな日々が長く続くはずはない。
そう遠くない将来、俺も消える。

俺が消えるとき、あらゆる想いも消滅する。
その瞬間、俺は至福の「光」を見るだろう。


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