布団の中で目が覚める。
そして周囲を見回す。

かみさんがいない。

あれ?
容ちゃんはどこに行っちゃったんだろう…
なんで容ちゃんはいないんだろう…

俺は事態を把握することができず、しばし呆然としてしまう。

だが、それはほんの一瞬のことだ。
次の瞬間、俺は残酷で悲痛な現実を思い出す。

あぁ、そうか…
容ちゃんは死んじゃったんだっけ…

自分の半分が欠けていることに気づく。
自分の中心に大きな空洞が開いているのを自覚する。

ほんの数年前までは、毎日そんなふうに朝を迎えていた。

寝ている間に記憶は整理されると聞いたことがあるが、あの頃の俺は、どうやら違ったらしい。
眠っている間、俺の脳は、かみさんの死から無意識に目を逸らし、かみさんの死を全力で否定しようとしていたようだ。
ひょっとしたら、心のどこか奥底で、かみさんが生き返るかもしれない…と期待をしていたのかもしれない。

だからこそ…
目覚めた直後、いつだって俺は、傍にいるはずのかみさんを探していたのだ。

・・

2年前くらいからだろうか。
朝目覚めても、俺はかみさんの姿を探すことがなくなった。
ようやく俺の脳が、かみさんの死を受け入れたらしい。

だが、そこに肯定的な意味合いはない。
立ち直ったとか、前に進み始めたとか、そういうことではないのだ。

俺の脳が「かみさんの死を受け入れた」。
それは、俺が絶望したということだ。

あらゆる希望を棄てて、何にも期待しなければ、少しは楽になれるはずだ…
絶望してしまえば楽になれるはずなのだ…
ときおり俺は、そう思ってきた。

しかし、絶望した現在、目覚める瞬間が怖くなったのだ。
朝目覚める瞬間が、恐怖の対象になったのだ。

また朝が来てしまった…
今日も虚しい一日が始まってしまった…
まだ俺は世界と関わっていかなければならないのか…

目覚めた直後、俺は自分が生きていることを知る。

そして次の瞬間。
俺は「いまだに自分が生きている」という単純な事実に恐怖するのだ。


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