出会った当初は、かみさんが23歳の専門学校生、俺が21歳の大学生だった。
それ以来、かみさんと俺は、ずっと一緒だった。

死に別れるまでの20年間。
俺たち夫婦は、自分たちがこんな形で引き裂かれるなんて、一度も想像したことはなかった。

いずれは二人とも死ぬ日が来るだろうとは分かっていた。
しかし、その日は遠い未来のことだ。
すぐ目の前に迫っているなんて、一度も予感したことはなかった

かみさんより俺の方が先に死ぬだろう。
ひとり遺されたかみさんが、日々の暮らしに困らないようにしておかなければならないと万全の準備を整えていた。
だが、まさか俺がかみさんを看取り、自分がひとり遺されることになるなんて、想定の範囲を越えていた。

・・・

かみさんと俺はいつだって、明るい未来しか想像していなかった。

いや、「想像」ではない。
俺たち二人は明るい未来を「確信」していたのだ。

出会ったときから幸せだったからだ。
それ以降も、右肩上がりで幸せになっていったからだ。

明るい未来を確信していたのも当然の成り行きだったんだろう。

しかし…
かみさんが癌だと診断された「あの日」。

俺たち夫婦の人生は、突然、暗転してしまったのだ。

・・・

毒親のもとに生まれてしまい、虐待されて育ってきた。
人生なんてロクなもんじゃないと思っていた。

それなのに、かみさんが俺に「光」を見せてくれた。

しかし…
やっぱり人生なんてロクなもんじゃない。

生き甲斐もなく、大切なものもなく、守りたいものもありはしない。
残されたのは、かみさんと過ごした幸せな記憶だけだ。

それらはすべて過去のこと。
もはや俺には何にもない。


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