専業主婦だったかみさんは、家事の天才だ。
料理はプロ級に上手だった。
洗濯だってしっかりやってくれた。

そんなかみさんにも、苦手な家事がひとつだけあった。
それは「
かたづける」ことだ。
かみさんは、いわゆる「かたづけられない女」
だったのだ。

掃除をしないわけではない。
埃がたまるのは嫌いだったらしく、週に1、2回は床掃除をしてくれた。
そのおかげで、
足元はいつでもピカピカだった。

だが、
床のあちこちに物が散乱している。
部屋の隅には雑誌などが積み上げられている。
断捨離や収納が苦手だったのだ。

かみさんが「かたづけられない女」
だっただけじゃない。
俺も似たようなもので、「
散らかっていても、まったく気にならない男」だ。

そんなかみさんと俺がペアを組めば「最強」だ。
一緒に暮らした20年。
家の中は、いつでも散らかり放題だった。

・・・

我が家には、時折かみさんのお袋さん(俺の義母)が遊びに来た(かみさんが亡くなった今でも来てくれる)。

お義母さんは
家の中が散らかっていることに驚いた。
かみさんに向かって、「
あんたは専業主婦なんだから、整理整頓くらい、ちゃんとやりなさい!」と言っていた。
そして返す刀で俺に向かって、「
プーちゃんも容子を叱らないとダメでしょ!かたづけろ!って言わないとダメでしょ!」と言っていた。

・・・

容ちゃんって面白いなぁ…と感じたエピソードがある。

普段あまり使わない部屋の隅に、たくさんの本が積まれていた。
それらの本は、上手な「収納」や「断捨離」のノウハウ本だったのだ。

収納上手になろうと思って、
かみさんはノウハウ本を大量に買い込んだ。
だが、
そのノウハウ本のせいで、逆に部屋の中を散らかしている。
本末転倒だ。

そんなかみさんのことがおかしくて、
俺はかみさんをからかった。
かみさんも自分のやっていることがおかしいと思ったのだろう。
かみさんと俺は、腹を抱えて一緒に笑った。

・・・

かみさんが生きていた頃。
かみさんと俺は、こんなふうに、
いつも一緒に笑っていた。

あの頃は、
かみさんが死んじゃうなんて思ってもみなかった。
だからこそ、
あんなに笑っていられたんだ。

俺はもう二度と、
あんなに笑うことはないだろう。
心の底から笑うことなどないだろう。

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