かみさんが元気だったころ。
かみさんと俺には語るべき未来があった。

夢を語り合った。
希望を語り合った。

未来を想像するだけで、かみさんと俺はウキウキしていた。

1週間後の予定を話し合い、1か月後のことを語り合った。
1年後のことに想いを馳せて、10数年後のことを想像した。

そして…
老後のことを語り合い、2人は一緒に笑っていた。

そこには何時だって、光が見えていた。

それなのに…
今の俺には語るべき未来がない。

未来を想像するだけで、暗澹たる気持ちになってしまう。
心臓を鷲づかみにされているみたいで、息苦しくなってしまう。

1週間後のことが不安で、1か月後のことを考えると胸が苦しくなってしまう。
1年後のことなんて、想像もつきやしない。

確実なのは、俺が孤独死することくらいだ。

かみさんが亡くなって数か月後。
俺の人生は、今以上に悪くなることはない…と思っていた。

今こそが最悪な状況だ。
今後は死ぬまで、最悪な世界で生きていかなければならないだろう。
だが、いま以上に悪くなることはないはずだ…とも思っていた。

しかし、底辺だと思っていた場所は、決して底辺ではなかった。
底辺に穴が開いてしまうこともあるのだ。
穴を覗くと、そこには「奈落」が垣間見えている。

俺はまだ、底には落ちていなかった。
俺が「奈落」に堕ちるのは、これからだ。

そうだ。
俺は「奈落」に堕ちるだろう。

かみさんのいない世界で独りぼっち。
果たして俺は、耐えられるんだろうか。

かみさんを喪って、俺はすべてを失った。
だが、すべてを失った者からも、何かを奪い去ることはできるらしい。

今後、俺はさらに奪われるだろう。
生きたまま肉を裂かれ、爪を剥がされ、眼球を繰り抜かれるだろう。

それでも生きろと人は言う。

だが、俺には耐えていける自信は無い。


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