ふとした瞬間、俺は深いタメ息をつきながら、還りたいな…と呟く。
呟いた直後に我に帰り、
俺はいったいどこに還りたいんだろうか…と不思議な気持ちになる。

かみさんがいた頃に還りたい。
これは偽らざる本心だ。
だが、そんなことは不可能であることを、
俺の理性は知っている。

そうだ。
俺は決して彼女が元気だった頃には還れない。
あの幸せで、
暖かくて、柔らかで、穏やかで、安らいだ日々に還ることはできない。
そんなことは嫌と言うほど分かっているはずだ。

それなら俺は、
いったいどこに還りたいんだろう…

・・・

恥ずかしいことをしてしまったとき、「穴があったら入りたい」
という。
恥ずかしい、いたたまれない。
自分を他人の視線から隠したい。
だから、どこかに隠れたい…
という心理の現れだろう。

それと同様、還りたいな…
という呟きの裏にも、何らかの想いが隠されているはずだ。

それは恐らく、強烈な否定の意志だ。
今ここを否定し、
残された未来を否定し、自分自身の「生」を強烈に否定する「何か」。

その「何か」が、俺の意識の奥底に潜んでいる。

・・・

もう、
どこにも戻れない。
俺の還れる場所なんてない。

それでも俺は、
どこかに「還る」ことを願っている。

それは多分、「無」に帰すことだ。
死んで焼かれて土に還ることだ。

俺は意識の奥底で、
もう消えて無くなりたい…と願っているのかもしれない。

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