辛いことがたくさんあった。
俺を取りまく世界は、とても理不尽で、不条理で、卑劣で、残忍だったのだ。

それでも仕事中は堪えなければならなかった。
残業が多かったせいで、同僚たちと飲みに行って発散することもできなかった。

心と身体に「怒り」と「哀しみ」が溜まっていく。
それらを「相手」にぶつけてしまえば、ある種の恍惚感を得ることができるだろう。
だが、もはや子どもではない以上、「怒り」や「哀しみ」は抑圧されなければならない。

抑圧された感情が、心と身体の内側で膨張していく。
行き場を無くした「怒り」と「哀しみ」が、俺の中で沸騰し、心と身体を痛めつける。

痛い。
苦しい。
はち切れそうだ。

そんな毎日が本当に辛かった。

仕事が終わって帰路に就く。
もうすぐ容ちゃんに会えるんだ。
いまだに「怒り」や「哀しみ」は燻っているものの、心が少しずつ軽くなっていく。

自宅の玄関が開く。
家の中は明るくて、暖かい。
夕食の香りもする。

そして…
かみさんが「おかえり~」と言いながら、満面の笑顔で俺を出迎えてくれる。

その瞬間だ。
俺の中で沸騰していた「怒り」と「哀しみ」が消えてしまう。
心が鎮まって、全身の筋肉がほぐれていく。

あれこそが「癒し」だ。
俺は自分が安心して眠れる場所に帰ってきたのだ。

・・・

最近、辛いことが多すぎる。
かみさんの死に比べれば、どうということはないのだが…

だが、かみさんを亡くし、俺は絶望を見てしまったんだ。
見たくもないのに見せられてしまったんだ。

人生において、伴侶や子どもとの死別ほど辛くて悲しいことはない。
それほどの悲しみを味わわされただけで十分だ。
もうこれ以上、些細なことであったとしても、辛いこととは無縁でいたかった。

それなのに…
俺の周囲は依然として理不尽で、不条理で、卑劣で、残忍なのだ。

俺はかみさんの生前を想った。
家に帰れば、容ちゃんが俺を待っている。
そして、玄関を開けた瞬間、かみさんが「おかえり~」と言いながら、満面の笑顔で俺を出迎えてくれる。
すると、俺の心身は癒される。

しかし…
かみさんはもういないんだ。

帰宅した俺は、仏壇の前に座り、かみさんの遺影を見つめた。
あの満面の笑顔で俺を癒してほしい…と思った。

だが…
やっぱり、かみさんはいないんだ。

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