女装タレントの大島薫さん(アングラ仕事人01)ハイトーンボイスのミナミトモユキさん(アングラ仕事人02)

2017年01月02日

モザイクの向こう側 〜その1〜

さて、10月に発売した「モザイクの向こう側」である。
この本の中では、2016年に話題になり、今もなお、くすぶり続けている「AV出演強要問題」について記載している。

mozaiku

この本は双葉社さんから依頼があって書いたのだが、僕にとっては非常に書くのに苦労した本だった。
ヒューマン・ライツ・ナウ(HRN)が昨年3月に出演強要の調査報告書を発表したころから、世間はAV擁護派と、AV否定派に分かれて議論が沸騰した。

大手メディアも動き始めた。
NHKのクローズアップ現代の担当者もうちの会社に来て、テレビに出て喋ってくれないかと頼まれたのだが、悩んだ挙句、お断りして、知り合いの事務所関係者を紹介した。
すると、その方は、女の子を口説くときにはいかに考えさせる間を与えずに契約に至らせるかが大事かと、内情をあけすけに語っていた。非常にサービス精神旺盛である。僕はきっとNHKの担当者の方には感謝されているだろう(笑)。

この問題については、あまり関わりたくなくてネットの議論に巻き込まれるのも避けたかった。

拙著『封印されたアダルトビデオ』をご覧になった方ならわかるだろうが、まず、僕がカメラマンとして初めて参加したAVの現場がまさに、出演強要のようなものだった。
それ以来、AVの現場がトラウマになっていて、もう、この業界とはあんまりかかわるのはやめておこうとAV制作からは身を引いたのだ。

それから、2年ぐらい、着エロ系のプロダクションのマネージャーをやったことがあった。
そこで僕がマネジメントしていた女の子が、のちに3人、AV女優に転身した。
2007年ぐらいだったかと思うが、当時は、AVスカウトマンが強引に着エロアイドルをAV女優に口説いていた。
「AVやった方が絶対、君の経歴的にはプラスになるから」
と口八丁手八丁で口説き、複数本契約で数千万円という金が飛び交っていた。

なお、口説かれた着エロアイドル3人のうちの1人は、裁判沙汰にもなって大揉めに揉めた。
HRNが2460万円の裁判の事例を発表したけど、それよりも大きな額が飛び交う裁判は水面下でいくらでも起こっていた。
そこが金になるんだったら、少々強引だろうが口説く者というのは現れてくる。
ほしのあすかさんだったり、香西咲さんなどが、事務所に洗脳されて出演を強要されたと被害を打ち明けたが、それは彼女たちが口説いたら明らかに金になる芸能人だったからだ。

出演強要問題…そりゃ、あるでしょう、というのが、HRNの発表を聞いたときに思ったことだった。

ただ、僕自身、今は男性誌を中心に執筆しているため、仕事上ではAV事務所やメーカーとお付き合いしていて、仲のいいAV関係の担当者も多かった。
ましてや2015年からはAV業界を舞台にしたAV漫画「Highイキ!」の原作も務めていることもあり、頻繁にAV関係者や女優をインタビューしたり取材していた。
それに、2012年に『封印されたアダルトビデオ』という本を出版したけど、そのときも各方面のAV関係者にはお世話になった。

こうした立場からすれば、この問題からは距離を置こうと考えたのは自然なことだった。
昔に比べればそりゃクリーンな世界にはなっているんだろうけど、それが完全にクリーンかというと、そんなわけないと分かっていたからだ。業界を擁護したら絶対にボロが出るし、僕の経歴からしてみれば、そもそも「おまえが言うか」という話になる。

けど、そんなさなか、本を書いてみないかという提案を頂いたのである。
自分の立場的には非常に語りにくい問題だったけど、興味があるかないかということでいうと、もちろんあることだった。
今の仕事上の関係よりも、ライターとしてこの問題をルポしてみたいという思いの方が上回った。

いざ取材を進めてみると、事務所関係者がメーカーへの不満をぶちまけたり、制作関係者が「こんな安いギャラでやってられるか」と愚痴を語ったり、AV被害相談窓口のPAPSの担当者がAV業界のアコギな手口を暴露したりと、皆さん、あけすけにこの問題について語ってくれた。
今のAV業界には歪が至るところで起こっていて、みんな鬱憤が溜まっていて、語りたかったのだ。それに一口にAV業界といっても、立場によってそれぞれ思惑は異なっている。
AV業界のことはよく知っていたつもりだったけど、関係者たちの率直な思いは知らなかった。
また、なぜ、AV業界が今のような形になってしまったのかということも、話を聞いていくうちに分かった。
今のAV業界に大きな影響を及ぼしたのが、90年代中盤以降のレンタルからセルへの転換、そして、2008年の芸能人AVの出現なのだろう。

僕自身は、どの立場に立つというわけでもなく、彼らが語る言葉をそのまま書き起こしてまとめていった。

先日、安田理央さんから特選小説のインタビューを受けたんだけど、「本ではこう書いてあるけど…それは井川さんの考えではなくて、井川さんが取材した人が言った言葉なんですね」と苦笑しつつ語られていた。
その通りだった。

僕は今後、AV業界がこうなればいいとか、こうするべきということはあまり主張していないけれど、『モザイクの向こう側』の中では、多くの人たちから見た業界の姿が描かれていて、そこには業界の問題点が浮き彫りにされている。そこから導き出される答え、方針というのは、読んだ人の数だけ存在しているのではないかと思う。

この人やこの団体に話を聞いたらきっと深い話が聞き出せるというところを当たって取材していったので、業界のことを真剣に考えたい人にとっては、きっと有益な資料だ。

まあ、ただ、DMMの亀山会長、SODの高橋がなり社長の二人に取材できていないのはマイナス点なのだろうと、客観的な読者の視点からすると思う。今後、この問題を書くことがあれば、今の業界をけん引するこのお2人に話を聞いてみたい。

そんな「モザイクの向こう側」(双葉社)は好評発売中。

https://www.amazon.co.jp/dp/4575311812/ref=tmm_pap_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=1483364019&sr=1-2

youji_igawa at 23:55│Comments(0)TrackBack(0)

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