塾生のA君が教室に入るなり、口を開いた。

「漢字テストが30点だった〜」

「それって、もしかして百点満点?」

「うん」

「漢字は苦手なの?」

「漢字はすっごく苦手!」

「漢字の勉強は、やっているのかな?」

「うん、出された宿題は全部やっているよ。

だけど、ぜんぜん頭の中に入らない」

A君の顔には絶望感が漂っている。

「じゃ、今日は特別に漢字の覚え方を特別に伝授しよう!」

うちの塾は小学生は算数のみの塾なので、ふだん漢字の勉強をすることはない。
だけど、話を聞くとこれはなんとかしなくてはと
他の塾生たちの了解をとって、最初の数分間を漢字学習にあてることにした。

「それじゃ、龍という字、知っているかな?
ドラゴンボールに出てくる、あの龍なんだけど…」

みんな、首をかしげる。
小学生で習う漢字ではないので、案の定、みんな書けない。

「それじゃ、今から、龍という漢字を覚えてみよう」

ホワイトボードに大きく、龍と書いた。

「まず最初に、書き順をチェックするので、
先生の手の動きに合わせて、指で空中に書いてみよう」

全員の手が龍の字をかたどって宙を舞う。

「それでは、目を閉じて、頭の中で龍の字を書いてみよう。
もし途中で書けなくなったら、目を開けていいよ。
もう一度、龍の字を見て、書けない部分を確認したら、
再度、頭の中で龍の字を最初から書いてみよう」

A君は漢字が苦手ということもあり、一度だけ途中で目を開けて、龍の字を見て、つぶやいた。

「えっと…、3本ね」

おそらく最後の横棒の数のことだろう。
他の子は全員、頭の中で書くことができたのか、一度も目を開けなかった。

「それじゃ、本番だよ。龍の字をノートに大きく、一度だけゆっくりと書いてみよう」

本当に書けるかな?とやや緊張した面持ちで
ゆっくりとノートに龍の字を書いた。

「書けたら、ホワイトボードの字と比べて答合わせをしてみよう」

口々に「合ってる」「お、書けた!」と嬉しそうな声が飛び交った。

「せっかく、龍の字を書けたのだから、もう一度、書いてみない?
今度はさっきよりもすらすら書けると思うよ」

「ほんとだ」「さっきよりも書きやすい!」

この方法は10年前ぐらいだっただろうか。
「どんぐり倶楽部」のサイトでイメージフィックス法という漢字の学習方法が紹介されていた。

これはおもしろそうだと思い、さっそく当時の小1生、小2生に、この方法で
薔薇という漢字を覚えてもらうことにした。
この漢字は大人でもふつう書けない。
だけど、この方法で小学生の低学年の塾生でも覚えることができたのだ。

そのことを思い出し、再度試してみたくなったのだ。

「じゃ、この方法で今度の漢字テストに挑戦してみない?」

A君は今度はもしかしてうまくいくかもしれないと思ったのか、嬉しそうにうなづいた。

一週間後、A君が教室に飛び込んできた。

「先生、今度は80点だった!」

「お、そうか。よかったね。その分だと、今度は満点も狙えるかもしれないね」

「うん、がんばる!」

漢字の覚え方といえば、「何度も書く」方法が一般的だろう。
これをまったく否定する気はないが、漢字の覚え方は
個人によってちがっていてもいいのではないだろうか。

「授業の神様」と呼ばれている、国語教育界では一目置かれている大村はま氏がご自身の著書の中で
漢字の覚え方について言及されていた。

 漢字は何度も書いて覚えることになっていますが、
 私の見たところ、漢字が本当に得意な子どもは
 「何度も書く」よりも「見て」覚えていることが多いようです。


読んだのが7,8年前で正確な表現で再現できないが
たしかこのような内容だった。
(本のタイトルは忘れています。ごめんなさい。m(_ _)m)
このとき、「イメージフィックス法」を思い出し、
やはりそうであったかと思わず膝をたたいた覚えがある。

他にも、いろいろな方がイメージフィックス法を試されています。
参考までにリンクを貼っておきます。

 書かずに漢字を覚える方法!
 イメージ・フィクス法の効果
 漢字の練習♪ イメージフィックス法 (1)



ということで、漢字に悩んでいるお子さんをお持ちの親御さんへ。

どうでしょうか。

この方法を試して見ませんか。

効果はてきめんです。

ただ、何度も書く宿題を出されていると、真反対の方法ゆえ、
効果は出にくいだろうと思います。

そのような場合は、先生に事情を話してみて
漢字の宿題を免除してもらうというのもひとつの方法だと思います。

とお勧めしても、このような話は先生に話しても初めから断られるだろうと
最初から諦めている方があまりにも多いと思います。

10年ほど前、このブログに
私自身、当時小2になる娘の計算ドリルの宿題を免除してもらった話を書いていますが
きちんとお話をすれば担任の先生は快諾してくださいました。

実は学校の先生は子どもの学力をあげたい一心で
いろいろ頑張ってくださっています。
もちろんただ単に怠けるための宿題免除の要望であれば
認めてもらえないのは明らかです。
現状を打開するための方法であるわけですから、
先生も喜んで協力してくれると思いますよ。

ということは、今、必要なのは

お母さんの勇気だけ!

です。

さあ、明日にでも交渉してみましょう。(^^)/


PS

気になって、大村はま氏が漢字について書かれた本をググってみました。
この本を読まれた英語の先生のブログの記事が出てきました。
便利な世の中になりましたね。
リンクを貼っておきます。

 大村はま(4)〜追求魂

次の箇所を引用されています。

 漢字は何度繰り返して書いたって覚えないでしょう。
 見て覚える子の方が多いでしょう。


思ったよりも過激な表現を使っていました。(^_^;)