遊星王子の青春歌謡つれづれ

歌謡曲(青春歌謡)がわかり、ついでに文学と思想と歴史もわかってしまう、とてもためになる(?)ブログ。青春歌謡で考える1960年代論。こうなったらもう、目指すは「青春歌謡百科全書」。(ホンキ!?)

 「遊星王子」は遠い星からやってきました。ふだんは東京の街角の靴磨き青年に身をやつしています。アメリカの大都会の新聞記者になりすましているスーパーマンに比べると貧乏くさいけれど、これが日本、これが戦後です。
 宇宙から日本にやって来た正義の味方としては、スーパー・ジャイアンツには遅れましたが、ナショナルキッドよりは先輩です。
(またの名を落日の独り狼・拝牛刀とも申します。牛刀をもって鶏を割くのが仕事の、公儀介錯人ならぬ個人営業の「解釈人」です。)

 「青春歌謡」の定義や時代区分については2011年9月5日&12月31日をお読みください。暫定的な「結論」は2012年3月30日に書きました。
 この時代のレコードの発売月は資料によってすこし異なる場合があることをご承知ください。
 画像も音源もネット上からの無断借用です。upされた方々に多謝。不都合があればすぐ削除しますのでお申し出下さい。
 リンク先が消滅している場合は、ご自分で検索してみてください。youtubeの動画はアカウントを変えて「不死鳥のごとく」(!)よみがえっている場合が多いので。
 お探しの曲名や歌手名・作詞家名があれば、右の「記事検索」でどうぞ。
 「拍手コメント」には返信機能がないので返信できません。コメントやご連絡は「メッセージ」(右上「遊星王子」画像の下の封書のしるし)をお使いください。非公開です。
 なお、以前の記事にも時々加筆修正しています。
 *2015年2月23日
 「人気記事」を表示しました。直近一週間分の集計結果だそうです。なんだかむかしなつかしい人気投票「ベストテン」みたいです(笑)。(一週間じゃなく5日間じゃないのかな?)
 *2015年7月25日
 記事に投稿番号を振ってみました。ブログ開始から3年と11か月。投稿記事数426。一回に数曲取り上げた記事もあるので曲数は500曲ぐらいになるでしょう。我ながら驚きます。

505 青山ミチ「ミッチー音頭」 追悼・青山ミチ

 もう一つ追悼を。ひどく遅ればせながら、2月7日に訃報が報じられた青山ミチ。1月7日に亡くなっていたそうです。
 青山ミチについては以前「夢の超特急」(s39₋10)で書きました。追悼曲は全盛期の「ミッチー音頭」(s38-5)かカムバック曲の「叱らないで」(s43-2)か、ちょっと迷いましたが、やはり、青山ミチが元気いっぱい最も輝いていた時期の曲「ミッチー音頭」が青春歌謡ブログにはふさわしいでしょう。
 こちらで聴きながらお読みください。nicechickencurryさんに感謝しつつ無断リンクします。
 (ジャケット画像の下は「週刊明星」s38₋3₋24号の表紙、「てなもんや三度笠」で大人気の藤田まことと。)

青山ミチ・ミッチー音頭青山ミチ「ミッチー音頭」
  昭和38年5月発売
  作詞:岩瀬ひろし 作曲:伊部晴美
 一 恋しているときゃすてきな瞳(め)
   夢みているときゃやさしい瞳(め)
   そうだそうだよ(そうだそうだよ)
   そうだそうだよ ごきげんさ(ごきげんさ)
   涙をケロリと忘れたら
   町に出ようよ(ハイハイ)
   若い風(イェイイェイ)
青山ミチ&藤田まことs38-3-24   胸に抱こうよ(ハイハイ)
   若い夢(イェイイェイ)
   *唄って踊ってスタミナつけて
    唄って踊ってスタミナつけて
    イェイ イェイ イェイ イェイ イェイ
 二 いかさぬ人には肘でっぽう
   すてきな人には無てっぽう
   そうだそうだよ(そうだそうだよ)
   そうだそうだよ ごきげんさ(ごきげんさ)
   二人にハートがある限り
   恋は地球が(ハイハイ)
   出来てから(イェイイェイ)
   恋は地球が(ハイハイ)
   割れるまで(イェイイェイ)
   *繰り返し
 三 泣き虫弱虫 かくれんぼ
   倖せ一ぱい喰いしんぼ
   そうだそうだよ(そうだそうだよ)
   そうだそうだよ ごきげんさ(ごきげんさ)
   明るく笑って恋をすりゃ
   若い心に(ハイハイ) 夢が湧く(イェイイェイ)
   若い瞳が(ハイハイ) 燃えあがる(イェイイェイ)
   *繰り返し

 ちっとも民謡調じゃないのに「音頭」。
 「音頭」は民謡の中でも多人数で歌い踊る祝祭性の強い形式。独唱者がまず歌い出し(この独唱者が「音頭取り」)、唱和者たちが後について文句を繰り返したり合いの手を入れたりするスタイルが基本。たしかにこの歌、14歳!の「音頭取り」青山ミチの後についてコーラスが唱和し、合いの手を入れています。(上記の歌詞で、丸カッコ部分がコーラス。)
 何といってもこの祝祭感。ことに「そうだそうだよ(そうだそうだよ)」の掛け合いが最高。
 同じく祝祭気分あふれる守屋浩の「♪ 有難や有難や」(「有難や節」s35-11:これも「節」、つまり民謡の伝統を踏まえたタイトル)には、けれども微量のアイロニー(皮肉)が、つまりちょっと斜に構えた諷刺と否定性がありましたが、青山ミチの「そうだそうだよ」には、恋愛中心とはいえ、否定性のかけらもありません。
 涙なんかは「ケロリと」忘れて、明るく笑って恋をして、唄って踊って「スタミナ」つけて、生命力肯定のこのヴァイタリティ―。これこそ坂口安吾の言った絶対肯定の「ファルス(=笑い)の精神」ではあるまいか、などと大げさなことを思ったりします(笑)。
 《ファルスとは、人間の全てを、全的に、一つ残さず肯定しようとするものである。
   (坂口安吾「FARCEに就いて」)
 そうまで言わずとも、この祝祭気分、前向きな絶対肯定精神が、高度経済成長時の気分や精神に通じているのはたしかでしょう。
 岩瀬ひろしの歌詞も遊びがたっぷり。特に二番がうまい。「肘でっぽう」と「無てっぽう」もうまいが、「恋は地球が出来てから/恋は地球が割れるまで」が秀逸。「地球が割れる」は驚異的でしかも明朗でマンガっぽくて滑稽でさえあります。ここでは地球の終末さえも「肯定」されているようです。たしかに、核戦争による人類終末など考えたくもありませんが、地球がぱっかり割れる終末なら酒でも飲みながら見てみたい(笑)。
 三番冒頭の「泣き虫弱虫」とは世界を「肯定」できない弱者たち、弱者たちは現実との対峙を回避して「かくれんぼ」するしかないが、対して、現実と堂々対峙して「肯定」できるのが強者なのだ、というなんだかニーチェみたいな(笑)メッセージとも読めるでしょう。その強者(倖せ)イメージを(「かくれんぼ」と韻を踏んで)「喰いしんぼ」で代表させるのは、青山ミチががまだ「色気より食い気」の14歳だから。なるほど「喰う」ことは生命を養う行為なのでした。

 「ミッチー」はもちろん青山ミチの愛称ですが、そういえば、昭和33年には民間から初めて皇太子妃候補になった正田美智子が「ミッチー・ブーム」を巻き起こしていました。さらに当時、三橋美智也の愛称も「ミッチー」なのでした。
 少し遅れて第三の「ミッチー」青山ミチも、この「ミッチー音頭」で人気絶頂を迎えます。この昭和38年、映画「下町の太陽」(s38-4)ではツイストを踊りながら唄ったり、映画「悪名波止場」(s38-9)では流しのギター弾きスタイルの田宮二郎の脇で唄ったり。

 ところで、岩瀬ひろしは石本美由起が主宰していた歌謡同人誌「新歌謡界」の同人として星野哲郎などと同期だったそうです。岩瀬ひろしが最大のヒット曲を書いた青山ミチは数年後には覚醒剤で逮捕されたりして低迷しますが、その青山の久々のヒット曲「叱らないで」(s43-2)の詞を書いたのが星野哲郎なのでした。
 なお、その覚醒剤逮捕のせいでお蔵入りになったという「風吹く丘で」(s41-11)は、後にタイトルとアレンジを変えて(歌詞はそのまま)ヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」(s43-2)となって大ヒットします。
 また、坂本九の「レットキス」(s41-11)もその一年前に青山ミチが「レット・キッス」(s40-8)としてレコード発売していたのでした(訳詞が異なります)。
 どちらも青山の歌はヒットせず不運ではありましたが、これらもまた青山ミチの功績として記憶しておきましょう。

504 松原智恵子「ひとりで歩くのが好き」 追悼・鈴木清順(2) 「東京流れ者」の松原智恵子と静御前

 (先日(3月5日)、国有地格安ダンピング(8億円も!)取得疑惑の例の「森友学園」が設立申請中だった小学校の予定校歌が、何と舟木一夫「あゝ青春の胸の血は」だったことがテレビ報道され、アクセスが急増しました。青春歌謡を穢した籠池某への腹立ち止みがたく、言いたいことは山ほどありますが、ほんの一端を「あゝ青春の胸の血は」の項に追記しました。)

 気を取り直して、鈴木清順追悼をもう一回。一回目の追悼が和泉雅子「教えて欲しいの」(s41-8)だったので、二度目の追悼は松原智恵子の歌で。
 松原智恵子はもちろん、鈴木清順の傑作「東京流れ者」(s41‐4)で「不死鳥の哲」(渡哲也)の恋人役。クラブ歌手だったので、悪人ども(そこには敵と組んで哲を裏切り、哲に対する「追討」命令を出した元の親分も)に強いられて歌を歌わせられる場面もありました。(下の画像はその場面から。)歌は吹き替え(鹿乃侑子)ながら、「ブルーナイトインアカサカ」というその歌の歌詞は
松原智恵子in東京流れ者2  指からこぼれるかなしみを
  静かに見つめる夜の街 
  シャンゼリゼの灯(ひ)も消えて
  青い夜霧にただひとり
  ブルーナイト ブルーナイト
  ブルーナイト・イン・アカサカ
 むろん、哲が死んだという偽りを聞かされた彼女の嘆きを託して唄うのです。
源義経・静御前・藤純子・絵葉書 まるでその昔、源義経の恋人・静御前が義経追討の命を出した源頼朝(義経が忠誠を尽くしてきた兄=「元の親分」!?)に強いられて鶴岡八幡宮で白拍子の舞を舞う場面のようでもありました。(右は昭和41年のNHK大河ドラマ「源義経」で白拍子の舞を舞う静御前(藤純子)。)
 そのとき静御前が舞いつつ唄ったその歌は
  ♪ しづやしづしづのをだまき繰り返し昔を今に繰るよしもがな
  ♪ 吉野山峰の白雪踏み分けて入りにし人の跡ぞ恋しき

 義経と共に過ごした昔の今に帰らぬことを歎き、また、吉野山から道の奥なる奥州へと落ち延びて行った義経を慕う歌です。

 「東京流れ者」は日活時代のいわゆる「清順美学」の代表作ですが、その「清順美学」が初めてはっきり打ち出されたのは任侠映画「関東無宿」(s38-11)でした。
鈴木清順「関東無宿」より 着流し姿の小林旭が敵の一家に単身斬り込み、敵を斬り斃した瞬間、背景の障子がいっせいに倒れて画面が真っ赤に変わります。言ってみれば、これを全篇にわたって展開したのが「東京流れ者」。(右の画像は上鈴木清順「東京流れ者」より1が「関東無宿」、下が「東京流れ者」。)
 実は松原智恵子は、小林旭の一家の親分の娘役で、この「関東無宿」にも出演していました。女学生の松原は作中で清純を保ちますが、代わりにやくざの魔手にかかって堕ちていくのが松原の同級生の中原早苗(中原はこのとき28歳での女学松原智恵子in関東無宿s38-11生役!)。(右は「関東無宿」の一場面から、セーラー服にお下げ髪の松原智恵子。)
 (映画「関東無宿」ではオープニングに小林旭唄う主題歌が流れますが、レコード化されていません。)
 
 というわけで、日活時代、「清順美学」の最初の作品と代表作の二作でヒロインを演じた松原智恵子は、鈴木清順追悼にふさわしいでしょう。
 歌はいまyoutubeにある「ひとりで歩くのが好き」。デビュー曲「泣いてもいいかしら」のB面です。こちらで聴きながらお読みください。C.Matsubara fanさんに感謝しつつ無断リンクします。
 (レコードジャケットの下は、「近代映画」(s42-9)表紙。)

松原智恵子「ひとりで歩くのが好き」
  昭和42年8月発売
  作詞:植田俤子 作曲:戸塚三博 編曲:河村利夫
松原智恵子・ひとりで歩くのが好きs42-8 一 ひとりで歩くのが好き ひぐれの銀座
   ほんとはあのひとに 逢いたいけれど
   たまにはひとりでコーヒー飲むの
   ひとりで歩くのが好き 若いんだもの
 二 ひとりで歩くのが好き 新宿の街
   ひとごみのなかに 夢もあふれて
   たまにはひとりでショッピングするの
   ひとりで歩くのが好き 楽しいんだもの
 三 ひとりで歩くのが好き 夜の赤坂
松原智恵子s42-9   ほんとはあのひとと 歩きたいけれど
   たまにはひとりでネオンを見るの
   ひとりで歩くのが好き 胸がおどるの

 A面「泣いてもいいかしら」は、恋人に甘える松原智恵子。B面は一人で東京の街を歩く松原智恵子。彼女が歩くのは「新宿&銀座&赤坂」。これは一カ月後に和泉雅子&山内賢「東京ナイト」(s42-9)が二人で歩くことになる「(羽田&)銀座&新宿&赤坂」と同じ。ちなみに、新川二郎「東京の灯よいつまでも」(s39-7)は「外苑&日比谷&羽田」、三田明「アイビー東京」(s41-5)は「新宿&銀座」でした。
 松原智恵子にとっての昭和42年は、前年からの日本テレビ石坂洋次郎ドラマ・シリーズでの連続ヒロイン役などでブロマイド売り上げが吉永小百合らを抑えて女優部門第1位になった記念すべき年なのでした。 

503 和泉雅子「教えて欲しいの」 追悼・鈴木清順(1) 付・映画「悪太郎」と「けんかえれじい」

 松方弘樹船村徹と、ブログはこのところ追悼記事が続いています。
 船村徹追悼で舟木一夫「夏子の季節」を書いた翌々日の2月22日には、映画監督の鈴木清順の訃報が流れました。2月13日没。大正12年生まれ、享年93。
 鈴木清順はヘビースモーカー市川崑(享年92)もヘビースモーカー。黒澤明(享年88)もヘビースモーカー。タバコは創造的人生の友。気持よく煙草を喫って長生きしましょう(笑)。
 
和田浩治・峠を渡る若い風・清水まゆみ&島倉千代子&井上ひろし 鈴木清順は青春歌謡とまるで無関係だったわけではありません。日活プログラム・ピクチャーの監督として、鈴木は一時期、和田浩治主演もの等を撮っていました。その一本、「くたばれ愚連隊」(s35‐11)の主題歌として和田浩治が歌ったのが「純情愚連隊」。わが「有朋愚連隊」の元歌でもあり、竹越ひろ子「東京流れもの」(&渡哲也「東京流れ者」)の源流でもありました。
 また、人気歌手に映画の中で歌を歌わせるのはプログラム・ピクチャーではあたりまえ。鈴木作品でも和田浩治主演「無鉄砲大将」(s36‐4)では佐川ミツオが「ゴンドラの唄」や「可愛いあの娘は拾と六」を歌ったり、同じく「峠を渡る若い風」(s36‐8)では島倉千代子が「襟裳岬」を歌ったり井上ひろしが「思い出だけじゃつまらない」を歌ったり。(右は「峠を渡る若い風」ポスター。)

 和泉雅子&山内賢コンビの代表作といってもよい映画「悪太郎」(s38‐9)も鈴木清順が撮りました。(この映画を鈴木本人も気に入ったのか、後に設定を少し変えて「悪太郎伝 悪い星の下で」(s40‐8)も撮っています。)
 この映画「悪太郎」、私の中では名作「けんかえれじい」(s41‐11)への序章という位置づけです。
 ともにモノクロ。もちろん「悪太郎」は今東光原作なので「けんかえれじい」とは何の関係もないはずなのですが、山内賢は正義感の強いはみだし中学生(大正時代の旧制中学)、素行不良で転校させられた先での恋人となる和泉雅子は良家の女学生でオルガンも弾く。このあたりの設定が「けんかえれじい」の高橋英樹と浅野順子の関係を連想させます。高橋&浅野の場合とちがって山内&和泉は一夜を共にしますが、周囲に仲和泉雅子&山内賢・悪太郎&田代みどりを裂かれ遠く隔てられた後、和泉は病死してしまいます。この和泉の薄幸さがまた「けんかえれじい」の浅野の役柄に引き継がれる、というふうに、私には思えるのです。(右画像は「悪太郎」のスチール。山内賢&和泉雅子&田代みどり。)

 というわけで、私「遊星王子」の鈴木清順追悼は和泉雅子&山内賢の歌で、と思ったのですが、実はこの二人のデュエット曲は全5曲、すべてもう取り上げました。(二人が歌うのでなくせりふ劇を演じた「二人の虹」は除きます。)
 それで、和泉雅子のソロ曲から「教えて欲しいの」。いまyoutubeにはありません。(ジャケット画像の下は「女学生の友」昭和41年9月号表紙。)

和泉雅子「教えて欲しいの」
  昭和41年8月発売
  作詞:吉田央 作曲:中村八大 編曲:中村二大
和泉雅子・教えて欲しいの 一 あなたがいつも唄ってる ふるさとの歌
   淋しいんだと唄ってた ふるさとの歌
   教えて欲しいの そして一緒に唄いたい
   教えて欲しいの あなたの心の歌
 二 あなたがいつも唄ってる ふるさとの歌
   レンゲ畑で唄ったの 幼い頃に
   知っておきたいの
   あなたのふるさとの事
   知っておきたいの 二人の愛のために
和泉雅子s41-9女学生の友 三 あなたがいつも唄ってる ふるさとの歌
   うれしいんだと唄ってた ふるさとの歌
   憶えておきたいの 私がママになった時
   唄ってあげたいの その子の子守唄に 

 「文化放送〝八大朝の歌〟」とあります。それもあってか、詞も曲も、恋唄というよりホームソング風。なにより、大阪朝日放送の「クレハ・ホームソング」だった北原謙二「ふるさとのはなしをしよう」(s40‐1)を連想させます。
 男である語り手が「きみ」(恋人?友人?)に自分のふるさとの話をしよう、と歌い出す北原の歌と逆に、和泉の歌では、女が男に、あなたのふるさとの歌を教えてほしい、あなたのふるさとの事が知りたい、とせがむのです。その歌を憶えて将来我が子に子守唄として歌ってやりたい、というところが女性らしい夢。もちろん「あなた」と「私」、ユー&ミーの二人の子供です。なるほど「ユー・アンド・ミー」(s41‐2)でも「パパとママになる夢」と歌っていました。
 なお、吉田央は後に、ちあきなおみのレコード大賞受賞曲「喝采」(1972‐9)を作詞します。 

502 舟木一夫「ブルー・トランペット」 追悼・船村徹(2) 歌うトランペット(1)

 船村徹追悼をもう一曲。
 「演歌の船村」が作ったリズム歌謡「夏子の季節」(s42-5)も意外だったでしょうが、これも意外な都会派歌謡を。
 舟木一夫「ブルー・トランペット」。こちらで聴きながらお読みください。K.Funaki fanさんに感謝しつつ無断リンクします。

舟木一夫「ブルー・トランペット」
舟木一夫・ブルートランペット  昭和41年12月発売
  作詞:古野哲哉 作曲・編曲:船村徹
 一 夜の中から 流れてひゞく
   ブルーブルー トランペット
   誰が吹くのか 心にしみる
   恋を失くした 泣き虫ペット
   夜ふけの空に 涙が匂う
   ホッホー
 二 二度とあえない あの人なのに
舟木一夫・ブルー・トランペット他   ブルーブルー トランペット
   想いださせて 悲しくさせる
   ひとりぽっちの 泣き虫ペット
   泣かずにおくれ 辛いじゃないか
   ホッホー
 三 呼んでおくれよ もいちど恋を
   ブルーブルー トランペット
   ぼくとうたおう 想いをこめて
   うるむ音色の 泣き虫ペット
   涙はすてて 悲しまないで
   ホッホー……

 作詞したのは都会派歌謡の傑作「哀愁の夜」(s41-2)を書いた古野哲也。誰が吹くのか都会の夜空に切々と流れるトランペットの響きに、「ぼく」の失恋の悲しみを託します。各連末尾の「ホッホー」はたぶん作曲時に付加されたのでしょうが、舟木の息の長い高音が抒情的な詠嘆の尾を引きます。
 (「失恋」というカテゴリーを初めて作りました。もっと早く作っておけばよかったのに(笑)。)
 「ブルー」はもちろん憂愁の色。舟木一夫には愁いの「ブルー」が似合います。
 (ちなみに、夜空に流れる楽音を都会派のトランペットでなく伝統的な横笛の音に変えて「ブルー」をやまと言葉の「青(蒼)」に変えれば、やはり船村が作曲した「ふるさとの蒼い月夜に/ながれくる笛の音きいて」(「夕笛」s42-8 西條八十作詞)の世界になるでしょう。)

 ところで、庶民的なハモニカから上流家庭のピアノまで、歌謡曲の歌詞は様々な楽器をモチーフにし、タイトルにもしてきました。
 日本調なら代表楽器はもちろん三味線。これは三橋美智也やこまどり姉妹の独壇場。歌謡曲の歴史を通じていちばん多かったのはたぶんギター。ポップス系、演歌系を問わずギターは歌われました。
 トランペットが、伴奏に使われるだけでなく、歌のタイトルにもなるのはおよそ1960年代から。もしかすると「夕焼けのトランペット」(1961=s36)「夜空のトランペット」(1964=s39)などが世界的に大ヒットしたイタリアのトランペット奏者ニニ・ロッソの影響かもしれません。
高橋英樹・さすらいのトランペット・ポスター 映画では高橋英樹がペット吹きの若者に扮した日活映画「さすらいのトランペット」(s38-2)がありました。(右はその映画ポスター)
 少し遅れて青春歌謡もトランペットを歌い始めます。その都会性と哀愁を帯びた抒情性が青春歌謡の世界に似合ったのでしょう。ギターは演歌調でも歌われたので、むしろ青春歌謡のシンボル楽器はトランペットだったとさえ云えるかもしれません。
 タイトルにトランペットが入るのは、
 三田明「僕のトランペット」(s39-5)、久保浩「断崖のトランペット」(s40-12)、ちょっと時期遅れで吉永小百合「銀色のトランペット」(s44-8)など。
 ほかにも渡哲也がソノシート・ブック「東京流れ者」(s41-6)に収録した曲の一つに「さすらいのトランペット」(上記高橋英樹主演映画とは無関係)。渡は映画「反逆」(s42-8)でも主題歌「反逆のトランペット」(レコード化はされず)を。
 しかし、上記のうち、シングルA面曲は久保浩「断崖のトランペット」だけ。
 舟木一夫「ブルー・トランペット」は、こうした曲の中で最大のヒット曲なのでした。

501 舟木一夫「夏子の季節」 追悼・船村徹(1) 船村徹と舟木一夫 &名前連呼18回!

 先日、作曲家の船村徹の訃報が流れました。昭和7年(1932)生れで84歳。
 前回の舟木一夫「オレは坊ちゃん」も船村の作曲でしたが、ここにあらためて追悼記事を書いておきましょう。
 船村徹は演歌系の名曲を多く作ったことで知られています。しかし、実は青春歌謡にも大きな貢献をしていました。
 船村徹の初期の代表曲はキング・レコードでの春日八郎「別れの一本杉」(s30‐12)。コロムビア専属になって美空ひばり「波止場だよお父っつあん」(s31‐12)、島倉千代子「東京だよおっ母さん」(s32‐4)、青木光一「柿の木坂の家」(s32‐10)など。どれもしみじみ心に沁みる演歌調。戦後初のミリオンセラーともいわれてレコード大賞も獲得した村田英雄「王将」(s36‐11)で力強い男歌でも成功し、「なみだ船」(s37‐8)で門下生・北島三郎も売り出します。
 しかし、その北島も昭和38年末には新生クラウン・レコードに移籍してしまい、しかも世は青春歌謡全盛期。やがて船村徹も青春歌謡に参入することになります。

 船村が担当したのは舟木一夫。
 もちろん舟木は遠藤実門下。初めて船村が舟木のために作曲したのは、舟木のデビューから一年後、15枚目シングル「夢のハワイで盆踊り」(s39₋7)。しかしこれはまだ単発的な参加にすぎません。
 舟木のための作曲が本格化するのは、昭和40年3月に遠藤実がミノルフォン・レコード創立でコロムビアを離れた後さらに1年以上経過した昭和41年半ばごろから。やがて昭和42年になると、舟木の曲の多くを船村が手掛けるようになり、それは翌43年6月の「オレは坊ちゃん/喧嘩鳶」までつづきます。つまり、前回紹介した「オレは坊ちゃん」は、結果的に、舟木と船村との(一旦の)別れになった曲なのです。
 その意味で、舟木一夫の青春歌謡、デビューから前期を手がけたのが遠藤実、後期というより晩期を手がけたのが船村徹、といってよいでしょう。
舟木一夫・夕笛s42-9-28週刊平凡 舟木一夫&船村徹の最大のヒット曲は「夕笛」(s42‐8)だったでしょう。(右画像は「週刊平凡」s42-9-28号から。)
 こちら「朝日新聞DIGITAL」2017年2月17日夜9時の記事によれば、船村の訃報に接した舟木は次のように語ったそうです。

 《19歳のときに初めて曲を書いていただいて以来、60~70曲はいただいています。
 僕が29歳から30歳のころ、歌手をやめようと思ったことがあり、夜中に突然、船村先生から自宅に電話がかかって来て、「歌手を辞めるって聞いたけど、本当か」「辞めるのは君の勝手だし、自由にすればいいけど、俺の大好きな『夕笛』はいったい誰が歌うんだ」といって、電話を切られました。その時、「男の仕事とは、歌手が歌を歌うということは、そういうことか」と思い、辞めるのを思いとどまりました。船村先生からの電話がなければ恐らく歌手を辞めていたと思います。一生の恩人です。》

舟木一夫・その人は昔&船村徹(CD) 船村徹は舟木一夫の青春歌謡からの「脱皮」の試みにもチャレンジします。しかしそれはありがちな「女歌」や「演歌調」への転身ではなく、舟木の歌唱の芸術性を引き出す試みとして行われました。それが松山善三と船村が組んだ芸術祭参加作品LP「こころのステレオ その人は昔」(s41‐12)です。2年後には西條八十と船村が組んだ芸術祭参加作品LP「こころのステレオ《第二集》 雪のものがたり」(s43‐12)もあります。(右画像の舟木と船村はCDから。)


 さらに特筆すべきは、意外にも、
舟木の初の「本格的」夏のリズム歌謡「太陽にヤア!」(s41‐6)も船村が作曲したこと。「本格的」と書いたのは、舟木の最初の夏のリズム歌謡は前年の「渚のお嬢さん」(s40‐7)、しかし「リズム・ビーチ」による「渚のお嬢さん」はリズム歌謡としてはとてもおとなしめのものだったから。対して、「太陽にヤア!」はアップテンポで、しかも舟木一夫が初めてエレキ伴奏付きで歌った曲なのです。(船村は舟木のために、「夜霧の果てに」(s43‐5)で再びエレキを響かせます。)
 というわけで、今日紹介するのは、まるで季節外れながら、「太陽にヤア!」の一年後、昭和42年夏のリズム歌謡「夏子の季節」(s42‐5)。こちらで聴きながらお読みください。kazuyan_679_sさんに感謝しつつ無断リンクします。
 (レコード・ジャケット画像の下は「明星」昭和42年7月号から。)

舟木一夫「夏子の季節」 

  昭和42年5月発売
  作詞:丘灯至夫 作曲・編曲:船村徹
舟木一夫・夏子の季節 一 夏 夏 夏 夏 夏子
   夏 夏 夏 夏 夏子
   ことしも逢えたね 夏子
   初めてこころを うちあけた
   まぶしいビーチの 昼さがり
   すばらしい 夏子
   夏子 夏子 すばらしい
 二 夏 夏 夏 夏 夏子
   夏 夏 夏 夏 夏子
舟木一夫・夏子の季節s42-7明星   きれいになったね 夏子
   ブルーのスカート 風がとぶ
   はじらうひとみに 海がある
   うつくしい 夏子
   夏子 夏子 うつくしい
 三 夏 夏 夏 夏 夏子
   夏 夏 夏 夏 夏子
   おとなになったね 夏子
   ためいきまじりに ふくらんだ
   むねにもやさしい 夜がくる
   すばらしい 夏子
   夏子 夏子 すばらしい

 この歌について、特記すべきことはただ一つ。
「夏子」という名前を計18回も連呼していること。これは、橋幸夫「江梨子」(s37‐1)の「江梨子」8回や奥村チヨ「ごめんねジロー」(s40-10)の「ジロー」8回や美樹克彦「花はおそかった」(s42‐3)の「かおるちゃん」8回はいうまでもなく、久保浩「星空のミッシェル」(s41‐10)の「ミッシェル」10回(または14回)さえも遠く及ばない、青春歌謡における女性名連呼の最高記録でしょう。もちろん「夏子」は夏の化身の名前でもあるわけです。

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  • 503 和泉雅子「教えて欲しいの」 追悼・鈴木清順(1) 付・映画「悪太郎」と「けんかえれじい」
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  • 502 舟木一夫「ブルー・トランペット」 追悼・船村徹(2) 歌うトランペット(1)
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  • 501 舟木一夫「夏子の季節」 追悼・船村徹(1) 船村徹と舟木一夫 &名前連呼18回!
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  • 500 舟木一夫「オレは坊ちゃん」 文芸歌謡(12) 坊ちゃんの名前
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  • 499 松方弘樹「あいつの消えた雲の果」 追悼・松方弘樹(2) 松方弘樹と北大路欣也(2) 悲劇の青春(番外6)
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  • 498 松方弘樹「霧丸霧がくれ」 追悼・松方弘樹(1) 松方弘樹と北大路欣也
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  • 498 松方弘樹「霧丸霧がくれ」 追悼・松方弘樹(1) 松方弘樹と北大路欣也
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  • 497 新川二郎「東京からふるさとへ」 望郷(2) 付・親孝行とひらがな便りとカタカナ便り
  • 496 梶光夫「啄木のふるさと」 文芸歌謡(11)
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  • 495 小宮恵子「故郷はいいなァ」(&中川姿子「ふるさとはいゝなァ」) 望郷(1)
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  • 494 吉永小百合「天に向って」
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  • 493 吉永小百合「嫁ぐ日まで」 花嫁たち(6)
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  • 492 コロムビア・ローズ(二代目)「オリーブの唄」 付・小豆島の歌
  • 491 吉永小百合「あすの花嫁」 花嫁たち(5) 付・奥村チヨ「リキホルモ」の歌
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  • 490 九重佑三子「ウエディング・ドレス」 花嫁たち(4) 結婚式の「和洋折衷」
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  • 489 倍賞千恵子「瞳とじれば」 花嫁たち(3) 付・倍賞千恵子の「花嫁シリーズ」
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  • 488 園まり「この喜びの日に」 花嫁たち(2)
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  • 487 岡本敦郎「白い花の咲く頃」 お下げ髪の時代・番外2 お下げ髪(と)の別れ
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  • 486 三橋美智也「おさげと花と地蔵さんと」 お下げ髪の時代・番外1
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