遊星王子の青春歌謡つれづれ

歌謡曲(青春歌謡)がわかり、ついでに文学と思想と歴史もわかってしまう、とてもためになる(?)ブログ。青春歌謡で考える1960年代論。こうなったらもう、目指すは「青春歌謡百科全書」。(ホンキ!?)

2021年01月

 「遊星王子」は遠い星からやってきました。ふだんは東京の街角の靴磨き青年に身をやつしています。アメリカの大都会の新聞記者になりすましているスーパーマンに比べると貧乏くさいけれど、これが日本、これが戦後です。
 宇宙から日本にやって来た正義の味方としては、スーパー・ジャイアンツには遅れましたが、ナショナルキッドよりは先輩です。
(またの名を落日の独り狼・拝牛刀とも申します。牛刀をもって鶏を割くのが仕事の、公儀介錯人ならぬ個人営業の「解釈人」です。)

 「青春歌謡」の定義や時代区分については2011年9月5日&12月31日をお読みください。暫定的な「結論」は2012年3月30日に書きました。
 この時代のレコードの発売月は資料によってすこし異なる場合があります。
 画像や音源の多くはほぼネット上からの無断借用です。upされた方々に多謝。不都合があればすぐ削除しますのでお申し出下さい。
 お探しの曲名や歌手名・作詞家名があれば、右の「記事検索」でどうぞ。
 なお、以前の記事にも時々加筆修正しています。
 遊星王子にご用のある方は、下記アドレスの○○を@に変えてメールでどうぞ。 yousayplanet1953○○gmail.com(22-8-1記:すみません。5月初めにパソコンを新調して以来、なぜか自分でもこのアドレスに入れません。)
 *2015年2月23日
 「人気記事」を表示しました。直近一週間分の集計結果だそうです。なんだかむかしなつかしい人気投票「ベストテン」みたいです(笑)。
 *2015年7月25日
 記事に投稿番号を振ってみました。ブログ開始から3年と11か月。投稿記事数426。一回に数曲取り上げた記事もあるので曲数は500曲ぐらいになるでしょう。我ながら驚きます。
 *2017年6月17日 累計アクセス数1,000,000突破。
 *2017年10月16日、他で聴けない曲に限ってyoutubeへのアップ開始。
  https://www.youtube.com/channel/UCNd_Fib4pxFmH75sE1KDFKA/videos
 *2022年11月29日 累計アクセス数2,000,000突破

654 青山和子「憧れのスチュワーデス」 JALの歌? 彼女たちのお仕事(2)

 もの云わぬは腹ふくるるわざ。
 これは古くからある格言。
 「おぼしき事言はぬは、げにぞ腹ふくるるここちしける」(『大鏡』序)
 「おぼしき事言はぬは腹ふくるるわざなれば」(『つれづれ草』19段)
 私の腹がこんなに膨れてしまったのも言いたいことを我慢してきたせいか(笑)
 ここ数日、東京都の新規陽性判明者が急速に減少してきてわずかに希望の光が見えたかなと思えるのは、ひとえに都民(&国民)の自粛の成果。ロックダウンのさなかに大規模パーティを開いたり抗議デモのあげくPCR検査場に放火したりという諸外国のニュースを観ると、日本国民は何とモラルが高いのだろうと思います。
 ここでいう「モラル」の根底にあるのは、他者の苦難を思いやって自分のわがままを控える社会的な友愛感覚。「みんな名もなく貧しいけれど」(s38-12)と三田明が歌った「無名」の庶民の連帯意識。57年前の青春歌謡の精神は、おそるべき「格差社会」になった現在の日本でも、まだ死んでいなかった!?
 (しかし、つい先日、「有名」な某与党政治家は無症状でもPCR検査を受けて陽性になったら即座に入院できました。一方、年末には野党民主党の某代議士がPCR検査さえ受けられずに急死。もちろん、「名もなく貧しい」庶民は検査も受けられず孤独死したり救急車で運ばれる途中で死んだりしています。この「格差」!)

 ところがこんな従順で良識ある国民に対して、政府の感染症法やコロナ特措法改正案は国民を処罰することばかり。ことに陽性者が入院拒否したり病院を抜け出したりしたら懲役刑だとか。強権的な権力者どもの欲望むきだし。知恵のない無能な権力者ほど強制力を欲しがります。あぶなくってしょうがない。(コレラやペストじゃないんだよ!)
 その政府与党は何をしてきたか。少し落ち着いた去年の夏場にこそ、冬に備えてPCR検査体制拡充や病床拡大や保護隔離施設増設や保健所体制整備や、やるべきことはいっぱいあったのに、野党の要求を退けてまで「なぜか」(私にはいろんな「推測」があります)国会を閉会しっぱなしでした(アベ政権時代のことですが、当時のスガ官房長官はアベ首相と表裏一体)。
 まるでイソップ寓話「アリとキリギリス」のキリギリス。おかげでいま、入院を拒否するどころか希望しても病院にも療養施設にも入れてもらえずに「急死」する「自宅療養者」が急増中。この状態はまだまだ続きます。
 こんなウソツキで厚顔無恥で傲慢で怠慢で無責任なキリギリス政府(&与党)にはささいな違反で国民を処罰する権利なんて絶対にない!

 さて、「おぼしき事」(心に思うこと)の三分の一ぐらいは言ったので、がらりと気分を変えて、今日は青山和子「憧れのスチュワーデス」を。
 こちらで聴きながらお読みください。ジャケット画像の下は、「マーガレット」昭和41年1月30日号表紙、スチュワーデス姿の青山和子。

青山和子「憧れのスチュワーデス」
青山和子・憧れのスチュワーデス  昭和39年5月発売
  作詞:三浦康照 作曲:遠藤実
  編曲:安藤実親
 一 銀の翼に 憧れのせて
   今日も飛びます 青空へ青空へ
   想い想いの 心を寄せて
   空いっぱいは 花の雲
   あゝ 夢見る私は スチュワーデス
 二 うしろ姿に ひそかな夢を
青山和子s41-1-30   そっと托した 制服よ制服よ
   白いカラーは 清らなこゝろ
   空いっぱいは 銀の星
   あゝ 夢見る私は スチュワーデス
 三 空はみんなの しあわせ抱いて
   明日の希望を 祈ります祈ります
   空路(みち)は世界へ つづいているよ
   空いっぱいは 愛の雲
   あゝ 夢見る私は スチュワーデス

 この歌については、橋幸夫&吉永小百合「そこは青い空だった」(s39-4)の項で短く紹介しました。
 (なお、そこでは「そこは青い空だった」も「憧れのスチュワーデス」も同じ39年5月の発売、と書橋幸夫&吉永小百合・そこは青い空だった他・ソノシートきましたが、別資料では「そこは青い空だった」は4月25日発売。)
 (右は「そこは青い空だった」のソノシートブックのジャケット。)
 「憧れのスチュワーデス」というタイトルは、スチュワーデスになりたい女の子の歌かな、と思わせますが、歌詞はもうスチュワーデスとして仕事している女性の歌。つまり、スチュワーデスという職業自体が「憧れ」の職業になったということです。以後、スチュワーデスは女子の将来なりたい人気職業の代表であり続けました。

 橋&吉永「そこは青い空だった」は全日空(ANA)が導入した初のジェット機「ボーイング727」のイメージソングでした。 
 こちらはどうでしょう。上掲のジャケット画像を比べると、吉永小百合のANAの制服と青山和子の制服は違うように見えます。ではこちらは日航(JAL)の方でしょうか。
吉永小百合&浜田光夫s38-11平凡 こういうことにうといので断言しにくいのですが、右画像は「平凡」38年11月号表紙でパイロット&スチュワーデスに扮した吉永小百合と浜田光夫。これはふたりが手にもつ飛行機模型がはっきり示しているように、まちがいなく日本航空(JAL)。そして、この吉永の制服はジャケットの青山和子の制服とそっくりに見えます。
 では、先に出たビクターの橋&吉永の全日空に対して、コロムビアは急遽、青山和子の日航イメージで対抗した、ということでしょうか。
 さらに、「そこは青い空だった」は国内線でした(全日空が国際線定期便に本格進出を許可されるのは1986年から)。対してこちらは三番に「空路(みち)は世界へつづいている」。うーん、さすが日航、「日本の空」しか飛ばない(飛べない)橋&吉永と、さりげなく、「差別化」してみせた、とまで言っては勘繰りすぎでしょうが。
 もう一つ言えば、「空路(みち)は世界へつづいている」は舟木一夫ほか「夢のハワイで盆踊り」(s39-7)の項で触れた昭和39年4月1日の海外渡航自由化と関連しているのかもしれません。まさしく、戦後19年、一般国民にとっても、日本航空の「空路」が「世界へつづいている」時代が来たのです。
 ただし、この昭和39年、日本人の海外渡航者は約12万8千人、しかしそのうち観光目的で海外に行った人はわずか数千人にすぎなかったそうです。海外旅行の大衆化は翌40年1月の海外パックツアー企画ジャルパック(JALPAK)開始から始まるのです。

 なお、「憧れのスチュワーデス」はさほどヒットしたとは言いにくいのですが、青山和子はこの2か月後に発売する「愛と死をみつめて」(s39-7)が大ヒット、年末にはレコード大賞を受賞することになります。

653 コロムビア・ローズ(二代目)「デパートの花」&初代「東京のエレベーターガール」 彼女たちのお仕事

 書くまいと思へど今日の感染数
 〈云ふまいと思へど今日の暑さかな〉のもじりですが、「今日の感染者」はもちろん不正確。正確には「数日前のPCR検査による新規陽性判明者数」。
 前回、もう新型コロナウイルスによる死者数のことは書きたくない、といったばかりですが、それでも都市部での感染爆発と医療崩壊は毎日の重大な関心事。とうとうこうなったか! 素人ながら、わが身の命にかかわる問題として、いろんなことを考えます。
 PCR検査もやっと少しは増えたようですが、問題は、陽性が判明しても行き場がないこと。東京都では自宅療養(自宅待機?自宅放置?)者がもう一万人近く、全国では3万人を超えたそうです!(共同通信)。 
 無症状でも軽症でも感染力を持つのがこのウイルス。本気で終息を急ぐなら、陽性判明者はみんな隔離しなければなりません。自宅療養(自宅待機)は最悪のやり方。必ず家族にうつすし、一人暮らしは容体急変の危険大。
 都は民間病院にコロナ患者受け入れを要請するというけれど、それはかなり困難だし、可能でもたいした人数をまかなえないでしょう。
 一番いいのは、東京なら23区内の都が所有する土地(都立や区立の公園など、ほんとうはオリンピック用地が最適だが)に急造の隔離療養施設を作って(去年の春の武漢のように!)無症状&軽症者をみんな集めること(本格的な「病院」ではなく、仮設の「隔離療養施設」でよい)。もちろん建設業界(そこで働く人々)にお金を落とせるし、「緊急事態」なのだから自衛隊の手も借りましょう。こうすれば多数の陽性者を集中管理できるから医師や看護師も比較的少数で済むでしょう。専門性を要しないさまざまなお手伝い係には研修をほどこしたうえでアルバイトを雇えば失業対策にもなります。
 しかも、そうなれば今は目に見えない切実な現状がはっきりと目に見えるようになるから、人々(若者だって子供だって)の危機意識が一気に高まって「自粛」もおのずから徹底できます。
 ただし、こうすれば、東京(&日本)の現状が全世界に可視化されてしまいます。
 国も都も一番恐れているのがこの可視化。東京(&日本)の安全イメージが低下して東京オリンピック開催があやうくなるから。だから彼らは去年からずっと現状を隠し続けてきました(政府がPCR検査を増やさなかった一因でもありましょうし、東京都だけが「重症者」の定義を変えて数字を少なく見せ続けている理由でもありましょう)。
 こうしている間にもウイルスはどんどん変異をつづけています。はてさて、現状のままで本当に乗り切れるのかどうか、実に心もとない。
 無力な私はただワクチン接種を待つばかり。

 さて、素人考えはこのくらいにして、今日は、前回の「田舎へかえろう」からずいぶん間があいてしまいましたが、二代目コロムビア・ローズ追悼の二曲目のつもりで、「デパートの花」。
 こちらで聴きながらお読みください。
 ジャケット画像の下は、ソノシートブック「智恵子のふるさとを訪ねて」から。

コロムビア・ローズ(二代目)「デパートの花」
コロムビア・ローズⅡ・デパートの花/川のほとりで  昭和38年12月発売
  作詞:石本美由起 作曲・編曲:市川昭介
 一 若いのぞみも あこがれも
   紺のスーツに 抱いている
    私は街の エレベーターガール
    「いらっしゃいませ いらっしゃいませ」
    お客さん
   声も明るく デパートに
   笑顔の花を 咲かすのよ
コロムビア・ローズⅡ「智恵子のふるさとを訪ねて」より 二 地上八階 地下二階
   夢も楽しく上り下り
    売り場のガイド エレベーターガール
    「いらっしゃいませ いらっしゃいませ」
    お客さん
   いつか私も あの人と
   買物したい 寄り添って
 三 こゝろ優しく 親切に
   いつもお客のお友だち
    職場の乙女の エレベーターガール
    「いらっしゃいませ いらっしゃいませ」
    お客さん
   今日も働く しあわせが
   ちいさな胸に あふれてる
 
 大ヒットする「智恵子抄」(s39-1)の一ヵ月前に出した歌。
 デパートは街の中心。そして、「声も明るくデパートに笑顔の花を咲かす」「デパートの花」、それは「エレベーターガール」。「いらっしゃいませ いらっしゃいませ」が彼女らの訓練された独特な口調にうまく似せていてほほえましい。
 「働くしあわせ」を歌う若い女性の職業讃歌です。

 働く若い女性の歌、ことにも仕事そのものをテーマにした歌は少ないし、あってもあまりヒットしない。そういう中での例外が、初代コロムビア・ローズが歌い、二代目もカバーした「東京のバスガール」(s32-10)だったことは前に書きました。
 「若いのぞみもあこがれも」という冒頭の歌詞が「東京のバスガール」の歌い出し「若い希望も恋もある」に似ていることにお気づきでしょう。
 さらに、エレベーターガールの職業的口調「いらっしゃいませ いらっしゃいませ」の挿入も、「東京のバスガール」の職業的口調「発車オーライ」を思い出させます。

 実は初代コロムビア・ローズは、「東京のバスガール」のほぼ一年後、「東京のエレベーターガール/若い看護婦さん」(s33-11)というレコードを出していました。AB両面とも若い女性の職業歌。しかし残念ながらあまりヒットしませんでした。youtubeにもありません。
 私自身、どちらも聴いたことがないのです。もし「若い看護婦さん」があれば、このウイルス禍、我々のために働き続けてくれている看護師さんたちへの感謝をこめて取り上げたいと思っていたのですが。
 (なお、看護学校で学ぶ少女たちを描いたNHK連続ドラマ「素顔の青春」の主題歌、倍賞千恵子「虹につづく道」(s42-4)は以前取り上げました。)
 「東京のエレベーターガール」の方の歌詞だけはわかります。いつかどなたかがyoutubeにupしてくれることを期待して、ここに歌詞だけ写しておきましょう。
 (21-3-4追記:なんとà la elvisさんがこちらに「東京のエレベーターガール」をupしてくれました。感謝。)
 
コロムビア・ローズ(初代)「東京のエレベーターガール」
  昭和33年11月発売
  作詞:丘十四夫 作曲:上原げんと
 一 恋も悩みも あこがれも
   白い手袋 制服に
   そっとかくして デパートを
   明るくやさしく のぼり降り
   私は東京の あゝ エレベーター ガール
 二 今日は楽しい 二人づれ
   肩をやさしく 寄せあって
   夢をささやく むつまじさ
   ときめく心で のぼり降り
   私は東京の あゝ エレベーター ガール
 三 売場きかれて ふりむけば
   声も明るい 学生さん
   男らしさの 匂う方
   明るく教えて のぼり降り
   私は東京の あゝ エレベーター ガール
 
 これは「東京のバスガール」と同じ丘灯至夫・上原げんとのコンビ。(丘灯至夫はこの頃はまだ「丘十四夫」と表記。)タイトルからして、明らかに「東京のバスガール」の続編でしょう。
 この歌い出し「恋も悩みもあこがれも/白い手袋制服に/そっとかくして」が、ほぼそのまま二代目の「デパートの花」冒頭「若いのぞみもあこがれも/紺のスーツに抱いている」に引き継がれているわけです。石本美由起は丘灯至夫の歌詞を意識して、むしろ寄せていっています。
 二代目の「デパートの花」は、タイトルは変えたものの、やっぱり同じ「エレベーターガール」の歌。こちらは「東京」とは限定せず「街のエレベーターガール」ですが、「地上八階地下二階」。こんな立派なデパートはまちがいなく大都会のデパートです。同じ主題で似た歌い出しで、まぎれもなく継承者たる二代目による初代へのオマージュなのです。
コロムビア・ローズⅡLP白ばら紅ばら 右画像は二代目のLP「白ばら紅ばら」。「白ばら紅ばら」(s37-8)でデビューしてまもなく、たぶん初代のヒット曲二曲をカバーした二枚目EP「東京のバスガール/ロマンスガイド(s37-10)を発売したころに、出したLPです。
 レコード盤に書いてある収録四曲は
  「白ばら紅ばら/哀愁日記/りんごの花は咲いたけど/しあわせはどこに」。
 おわかりのように、「白ばら紅ばら」以外はすべて初代のヒット曲。
 「あゝお姉様 お姉様/せめてあなたのお名前継いで/踏むも恥かし初舞台」(「白ばら紅ばら」)と歌ってデビューした二代目は、姉思いの妹として、「お姉様」にオマージュを献げ続けていたのです。

652 鰐淵晴子「小鳥とあんみつ」 映画「あんみつ姫の武者修行」主題歌

 明日あたり、一都三県に緊急事態宣言が発令されるようですが、たぶんもう手遅れ。
 検査体制が足りないから望んでもすぐにはPCR検査を受けられない、隔離療養施設も病床も足りないから陽性が判明しても自宅待機しなきゃならない(そして一部の人は容体が急変して「急死」する。去年12月には新型コロナウイルスで病院じゃなく自宅や施設で「変死」した人が55人いたそうだ)、一方で無自覚未発見の感染者は市中を横行している、これじゃ去年の春と全く同じじゃないか! この一年、なにも改善していない。実質「医療崩壊」が始まっています。
 東アジア3国の新型コロナウイルスによる累計死者数
 2021年1月6日朝時点
  (日本は昨年春の豪華クルーズ船の死者は含めず)
  ( )内は前回2020-12-26記事から11日間の増加数
 日本 3,655(+550) 韓国 1,007(+234) 台湾 7(+0)

 なお、昨年5月28日以来毎回続けてきたこの記録、今回を最後とします。
 もともと、目にも見えず症状もないまま感染力を持つこの厄介なウイルス相手に「検査と隔離」という感染症対策の基本をないがしろにし続けてきた無能無策愚作悪策の政府(しかも怠慢。アベ時代もスガ時代も政府は「なぜか」国会を閉会しっぱなしだ)が欧米と(だけ)比べて「日本モデル」などと手前味噌で威張っていたのに腹を立てて始めたこと。
 大げさにいえば、現実を直視せよ! 現実を隠ぺいした手前味噌の日本バンザイ(浅はかなナショナリズム)は、大東亜戦争時の大本営と同じで、日本を滅ぼすだけだ、という思いです。(76年前に日本を滅ぼしたのは「手前ミソ軍部&手前ミソ右翼(自称愛国者)」連中です。)
 さすがに今はもうそんな手前味噌連中も声をひそめたみたいだし、私が書かなくたって現実は誰の目にもあからさまに見えているので、もうやめます。書くのもつらい。まったく、こんな数字を書きたくてこのブログを書いていたわけじゃないのです。
 ただ自衛あるのみ!

 さて、あどけなく「七色仮面」の歌で2020年を締めくくったこのブログ、あどけない歌で2021年を開始します。今はあどけないものだけが私の腹立ちをなだめてくれます。
 15歳の鰐淵晴子が歌った「小鳥とあんみつ」。こちらで聴きながらお読みください。
 (レコードジャケットの下は、映画ポスター。ポスターの右上に映っているのは三波春夫。ただしこの映画の中の三波春夫じゃなくて、たぶん松竹映画「中乗り新三・天竜鴉」(s35-10-19)のポスターから三波の顔だけ切り取って着物の色を塗り替えて流用したものでしょう。なんだこのずぼらなやり方は!(笑)。)

あんみつ姫・鰐淵晴子s36rec鰐淵晴子「小鳥とあんみつ」
  昭和36年1月発売
  作詞:関沢新一 作曲:浜口庫之助
 一 籠の小鳥が囁いた
   ちゅン ちゅン 花が咲くように 
   あの娘も としごろ 
   人目 しのんで
   ちゅン ちゅン ちゅン 何処へゆく
   すずめも めじろも 気がもめる
あんみつ姫の武者修行・ポスター&鰐淵晴子&三波春夫 二 町の小鳥が話してた
   ちゅン ちゅン 恋じゃないでしょか
   こっそり 横丁で
   あまい あんみつ
   ちゅン ちゅン ちゅン たべたとサ
   すずめも めじろも みてたとサ
 三 可愛い小鳥のひとりごと
   ちゅン ちゅン 夢でみた人は
   あんみつ 月夜に
   そっと わたしを
   ちゅン ちゅン ちゅン 呼んでいた
   すずめも めじろも 聞いたとサ

あんみつ姫・光文社2 映画「あんみつ姫の武者修行」(s35-12-27公開)の主題歌。
 「あんみつ姫」はもちろん倉金章介作の人気少女漫画。昭和24年5月号から昭和30年4月号まで、光文社の少女マンガ雑誌「少女」に連載。(「少女」はもちろん「少年」の対。)
 昭和31年から32年にかけては「続あんみつ姫」として「りぼん」で連載再開。
続あんみつ姫s31-2別冊 さらに33年から37年4月まで「明星」誌上で「あんみつ姫もお年頃」としてまた連載。
 (右は、上が光文社版単行本第2巻のカバー。下が「続あんみつ姫」31年2月号別冊。)

 「おちゃめおてんばほがらか娘」(これは下記の倉金章介作詞「あんみつ姫」の歌詞)のあんみつ姫は「あまから城」のお姫さま。
 父親(城主)は「あわのだんごの守」。母親(奥方)は「しぶ茶の方」。お小姓が「甘ぐりの助」。腰元が「きなこ」「あんこ」「しるこ」等々。小坊主兄弟が「まんじゅう」と「しお豆」。
 みんな子ども好みの食べ物にちなんだ愉快な名前。(口うるさい母親だけが「しぶ茶」ですが、でも渋茶は甘いものにはよく合います。)まだおやつに(どころか、甘いものに)不自由することも多かった時代の子供向けキャラクターたちです。
 あんみつ姫は母親を「ママ」と呼び、「カステラ夫人(カステラ先生)」というアメリカ人の家庭教師がついています。(上掲マンガ画像の金髪女性がカステラ夫人。)いかにも昭和24年、まだ占領下の戦後日本らしい設定。
 「カステラ夫人」は皇太子の家庭教師をつとめたヴァイニング夫人を連想させます。封建的な気質を残した旧弊な日本人にアメリカが文明と科学とマナーを教えるのです。
 
あんみつ姫・雪村いづみs29-11 その人気ゆえ、昭和26年末からはTBSラジオでラジオドラマ。
 昭和29年末には雪村いづみ主演で映画二本。
 昭和33年12月から35年10月まで中原美紗緒主演でテレビ(現TBS)連続ドラマ。
 その辺の詳細は【Wikipedia あんみつ姫】をご参照ください。
 (右は、上が雪村いづみの映画スチール。下が中原美紗緒のテレビドラマ、「ひとみ」35年8月号から。)

あんみつ姫・TV中原美紗緒35-8ひとみ本誌 歌も何回か作られました。
 まず、早くも連載開始翌年の25年にキングレコードから「あんみつ姫/カステラ夫人」。倉金章介自身が作詞した「あんみつ姫」はこちらで、「カステラ夫人」の方はこちらで聴けます。
 次に雪村いづみの映画主題歌「あんみつ姫」(s29-10)。こちらで聴けます。
 次に中原美紗緒がボニー・ジャックスと歌ったテレビドラマ主題歌「あんみつ姫」こちらで聴けます。

 さて、こうした流れの中で作られた鰐淵晴子版「あんみつ姫の武者修行」。35年12月27日公開なので、36年の正月映画。雪村いづみ版はモノクロだったので(中原美紗緒のテレビ版ももちろんモノクロ)、初のカラー版「あんみつ姫」です。
 その主題歌「小鳥とあんみつ」。作詞した関沢新一は映画の「脚色」も担当しました。倉金章介の漫画が「原作」なので「脚色」としたのでしょうが、実質的には「脚本」を書いたのでしょう。関沢は当時すでに「大怪獣バラン」(s33-10東宝)「宇宙大戦争」(s34-12東宝)などの映画の脚本を書いていたのですから。
 主題歌が「あの娘もとしごろ」と歌うとおり、あんみつ姫16歳の盛大な誕生祝いから始まります。成人祝いなので婿選びを兼ねて延々と儀式と挨拶がつづきます。
 これは当時「明星」に連載中だった「あんみつ姫もお年頃」の設定を踏まえたのでしょう。だから歌詞は「恋じゃないでしょか」「夢でみた人は」と初恋モード。「あんみつ 月夜に」は「あんみつ(のように甘い恋愛ムードの)月夜」の意。
鰐淵晴子s35-10-20 「小鳥と」としたのは、映画のあんみつ姫が小鳥(カナリア?)を飼っていて、大人になったのにお城の外に出してもらえない自分を「籠の中の鳥」にたとえたり、ラストではその小鳥をかごから放してやったりするから。少女が「大人」になることを小鳥の巣立になぞらえたわけです。

 さて、儀式のあまりの退屈さにあんみつ姫はお城を抜け出して旅芸人一座に身を隠し、長屋の浪人にかくまわれ、最後はお家乗っ取りを企む悪家老一味をやっつけて、めでたくお城に帰る、というストーリー。
 何ともお気楽安直なつくりのコメディですが、三波春夫(♪北海盆歌)や島倉千代子(♪花散る下田♪哀愁の信濃路)や守屋浩(♪有難や節 ♪東京へ戻っておいでよ)が(ほとんど脈絡もなく)歌う場面がいっぱいあるのを楽しめるし、なにより、(わざと子供っぽく演じている?)15歳のまだ少女の鰐淵晴子、彼女が姫君から町人娘、村娘、なんとバレリーナから前髪立ちの若衆姿にまで七変化して、そのかわいらしさを堪能できます。
 (右上画像はちょうどこの映画が撮影されていたころでしょうか、「生きる女性」35年10月20日号表紙の鰐淵晴子。映画の印象とはまるで違う実に大人びた感じ。
あんみつ姫の武者修行s35鰐淵晴子&北条喜久&安住譲 なお、映画「あんみつ姫の武者修行」のスチールは守屋浩「夜空の笛」の項にも二枚載せておきました。)
 ちなみに、初恋モードのあんみつ姫の心をとらえる浪人・天堂一角は安住譲という「新人」(オープニングでこう記されています)が演じています。こんなよい役をもらってデビューしたのに、ネット検索してみても昭和38年ごろまでしか映画出演記録がありません。ちょっと仲代達矢似にも見えるこの俳優、実は川崎麻世の父親なのでした。(こちら参照。)
 (右は映画スチール。鰐淵晴子と安住譲と町娘役の北条喜久(北條きく子))
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  • 765 田代みどり&浜田光夫「憧れの東京」 東京讃歌&東京見物 歌う日活(13)
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  • 764 田代みどり「京舞妓」(日活「舞妓の上京」主題歌) 13歳、中学一年生の舞妓はん 歌う日活(12)
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  • 763 高橋英樹「夕焼け山脈」 これも「青い山脈」だ! 歌う日活(11)
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  • 762 舟木一夫「踊ろうぼくと」 「舟木一夫お兄さん」の歌
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  • 761 高橋英樹「エデンの海」 歌う日活(10) 瀬戸内海の「青い山脈」
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  • 760 浅丘ルリ子「青空さんゴメンナサイ」 歌う日活(9) 付・浅丘ルリ子のデビュー(歌手&子役)は?wikipedia存疑
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  • 759 宍戸錠「黒い馬に跨る男」(「早射ち野郎」主題歌) 歌う日活(8)  宍戸錠のウエスタン
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