「ザ・面接」は、女の子がそれまでに経験した入学・入社での面接とはおおよそかけ離れた状況において、戸惑ったり、ときには本気で犯されて泣き叫んだり……というところからスタートした。ここで重要なのは、当の女の子がアダルトビデオに出ていないこと、つまり初撮りの子であるということだった。未体験であるがゆえに、段取りを無視した事の運びが世の中に合わせて作った偽りの自分をいっそう打ち砕く。


 しかしである。近年になって初撮りの子をキャスティングするのが難しくなっている。先日撮った最新の「VOL.155」は、面接に来る子もエキストラも、全員がビデオ経験者だ。少ない子で3本、多い子で45本の作品に出演している。


 どうして初撮りの子をキャスティングできなくなったのか? AVへの出演強要問題がニュースになったし、5、6年前と比べれば新たにプロダクションに登録する女の子(出演希望者)の全体数が減っているというのもあるだろう。もしくは、段取りも約束事もないところで進んでいく僕の現場に、まだ右も左もわからない子を送り込んだりしたら、それこそ危なくてしょうがないと考えるプロダクションもあるのかもしれない。


 というのも、男優たちから他の現場の様子を聞いて思うのは、いろいろな事件が起きているので、プロダクションもメーカーも問題が起きぬよう、あらかじめ設定した枠からハミ出さないように、とにかく「安全に安全に!」を心掛けているということだ。それが悪いとは言わないけれど、なかには女の子がヘラヘラしていても監督が注意すらできない現場もあるというから驚く。


 初撮りの子が撮れないのも時代の流れかなぁと思って、僕は事前の監督面接で女の子たちと向き合う。いったい彼女たちはセックスについて、そしてビデオの現場について何を思っているのだろうかと。


 多くの子が口にしたのは、マンネリ化した現場での不満だった。「もう少しでイキそうになったときに限ってカットがかかる」、「『ここでこうしてくれ、次はああしてくれ』と、似たり寄ったりの指示ばっかで、自分のやりたいことがぜんぜんやれない」。でも、「ギャラはもらっているし、ビデオとはこういう仕事なんだろう」と半ば自分を納得させつつ、彼女たちは本気で欲情することを抑えたままAV女優を続けている。


 また、「カメラに見せなきゃいけないから、体位とかもけっこう不自然な姿勢になって大変なの」と言う子もいた。「それは要らないよ」と即座に僕は言った。「オレが撮りたい所に回り込むから」と。


 こうして撮った「VOL.155」だが、果たしてどうだったかというと、僕はとても楽しかったのである。まずエキストラも含めて、それぞれの個性がよく出ていた。


 ひとりの子は事前面接で「中でイキたい!」とあれほど言っておきながら、僕が「今だけ好きになれ!」と言ったら「うるさい!」みたいなノリで……。これはこれで今の子のわがままさがよく出ていたし、こりゃ男は大変だなぁという現実をまざまざと見せつけられた。


 今まで企画モノで、アナルを始めいろいろエグいことをやってきている子もいた。面接軍団のなかにも、その現場でカラんだ者がいた。だが、今回彼女が見せたセックスは“ドMで歓ぶキャラ”とはまったく違うものだったのである。「これが本当のこの子だったんですね」と以前カラんだ男優が言った。


 面接軍団から迫られ、股間から溢れる愛液を見た途端、「マンコ濡れてるっ!」と驚きの表情を見せたのは、今回のメンバーのうち最も多くの作品に出演してきたエキストラの女の子だった。濡れた股間はいわばAVの定番であるにもかかわらず、その場で一部始終を見ていた彼女はなぜ驚いたのか……。そこに現在のアダルトビデオの病巣がある。


 何年かぶりに、思わず僕が撮らされてしまったセックスもあった。これまで撮りながら「好きって言え」とか「目を見ろ」とか「名前を呼べ」と僕はしばしば言っている。それが見栄えのするセックスであっても、やはりどこかに足りない部分はあるわけで、それを埋めようとするがあまり、つい声をかけてしまうのだ。


 ところが、その子のセックスで僕は声をかけるどころか、ただただ引き込まれ、夢中で撮りつづけていたのだった。撮影中にいいアングルを探そうと場所を変えたりもするが、このときは動くことすら忘れていた。彼女とセックスした森くんが言った。「彼女、終わったあと僕の耳元で言ったんです、『もうこれでビデオやめてもいい』って」。それくらいよかったということだろう。


 ビデオに慣れてくると「監督が指示してくれれば、私、言われたようにできますから」と言う子もいる。だが、僕が「こうしてくれ」と指示を出すことはない。そういう子にいかに本当の自分を出してもらうかが、ある意味勝負なのだ。引退まであと何本「ザ・面接」が撮れるかわからないけれど、その勝負を僕は楽しみにしている。



(「週刊代々木忠」は夏休みをいただきます。次に読んでいただけるのは9月1日(金)になります)





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