以前、「共感する能力」は男より女のほうがもともと高いという話を書いた。「共感」とは、ミラーニューロンの機能でもある。


 これまで現場で会った多くの女の子たちが「男の人がイカせようとしてるのって、わかっちゃうのよね」と言う。「イカせよう」という思いが、ミラーニューロンを介して伝わってしまうのだろう。これではイクどころではない。イカせようと思ったら、女はイカないのだ。


 けれども、ミラーニューロンによってバレバレというのなら、自分が真に欲情し、それを言葉や表情に出せばいいと僕は思う。そうすれば、相手の脳の中でも欲情のスイッチが押される。


 ふり返るに、太賀麻郎も、日比野達郎も、平本一穂も、自分が欲情しているのを相手の女の子に表現した。僕も男優たちには「おまえが気持ちよさを出せよ!」と言いつづけてきた。当時、ミラーニューロンに関する知識はまったくなかったけれど、「男が冷めていて、なんで女が欲情するんだよ」とはずっと思っていたのだ。


 だから、もしも女をイカせようとするならば、自分が先に欲情し、それを素直に表現するのが、いちばん手っ取り早くて簡単な方法と言える。


 たとえば「お姉様淫女隊 ジラして犯してのどの奥まで咥えてあげる!」という作品には、中堅どころの男優たちが出演している。その1人が愛川賢剛。男優歴5年目にして初めて受け身を経験することになる。しかし「受け身になって感じなきゃいけない」という思考がずっと働いている。


 相対する淫女隊は、渡辺美乃、望月英子、新田利恵。彼女たちは局部を見せたり、オナニーをしてみせたりするのだが、愛川の「イカなきゃいけない」という思考はなかなか落ちない。彼はそのもどかしさから、ついには自分でシゴき出す。すると、淫女隊の3人も一緒に絶頂を迎えるのである。


 もう1人は大島丈。当時、彼は男優歴8年目で約2000本に出演している。淫女隊といっても、大島からすれば新人女優には違いない。その彼女たちが主導権を握って自分を責めている。大島も明け渡そうと努力はしているものの、経験が長いぶん、なかなか自我が壊れない。


 淫女隊は大島の両手を縛り、目かくしをして、そのまま別の若い男優にちょっかいを出しはじめる。こちらは男優歴4カ月、出演数30本。経歴からすれば大島と比ぶべくもない。淫女隊は若い彼をイジり、それを大島に聞かせている。


 こういうシーンがアダルトビデオにはしばしば登場する。目の前のセックスを見せつけたり、目かくしをして卑猥な声を聞かせたり……。このとき視覚や聴覚を通してミラーニューロンが発火する。ただし、セックスしている者や卑猥な声の主が本当に欲情していればだが。


 若い男優の声は大島の頭の中に同じ快感を生む。そうなれば、男優のプライドなどよりも「やりたい」が勝るのである。淫女隊の直接の愛撫に、大島が悶えはじめる。すると彼女たちの雰囲気が一変する。淫女隊の3人もまた感じているのだ。大島は両手を縛られているので、淫女隊に対して文字どおり指1本ふれてはいない。彼がやったことといえば、欲情し、それを表に出しただけである。


 ミラーニューロンの視点からこの作品を見返すと、若い男優の欲情が大島に伝わったあと、大島の欲情が淫女隊に伝わり、その快感をまた大島が受け取ってさらに欲情しているように見える。つまり、大島と淫女隊がお互いにフィードバックしながら高まっているのだ。イッたあと、大島はものすごく幸せそうな顔をしている。なんの屈託もない笑顔。人はこんなにも素直な表情ができるんだよなぁと思う。


 にもかかわらず男たちは、いや今は女たちも、逆へ逆へと頑張っているように僕には思える。


(2012年5月4日掲載)


 逆へ逆へと頑張ってしまう要因はいろいろあるが、今が情報の時代であることもそのひとつだろう。ネットで検索すれば〈女性の全性感帯と愛撫の仕方〉〈愛撫で女性を乱れさせるには?〉〈女の性感帯のとっても正しい使い方について〉〈女をイカせるGスポットの愛撫の仕方〉などなど、ダーッと出てくる。


 自己肯定感が育っていれば、未知なるものへの「好奇心」が湧き、情報に頼らずとも済む。育っていなければ、未知なるものは「不安」でしかないのだ。たとえ借り物の知識であっても、とにかく情報を仕入れて目の前の不安を軽減しようとする。今はこっちが多数派になっているような気がしてならない。


 僕は映像の世界で、少数派というより異端としてやってきて50年が経った。ナンバーワンとオンリーワンという言葉があるが、まわりが気になるとどうしても比較したり、競争したりしてしまうのではないだろうか。オンリーワンのほうが気楽で楽しいよと老婆心ながらお伝えしておきたい。






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