
最近のバイクじゃ当たり前のようについていることも多い「ラジアルマスターシリンダー」
なんかちょっといい感じの大型バイクならもうみんなラジアルマスター使ってますよね。
つい先日、XSR700にYZF-R7のラジアルマスターを移植したい、とご相談を受けて近日作業予定だったりします。

これはMT-07やXSR700で純正採用されてるフツーの横置きマスター。
別にコレがダメってわけじゃぁないんだけど、なんとなくラジアルマスターのほうが凄そうだし格好いい気がしますよね。
ところで、たまにお客様から「ラジアルマスターって何?」「何がいいの?」と聞かれることがあります。
最近の大型スポーツバイクだとほぼほぼラジアルマスターだから、「なんとなく良いもの」と認識はしていても実際のところ何が優れているのかはあまり知らない人もいるんじゃないでしょうか。

コレはMT-07の横置きブレーキマスターを上から見た画です。
赤の矢印がブレーキレバーを引く力(入力)の方向、黄色のまるで囲われてるのがブレーキマスターのピストンの位置。そして青い矢印がピストンを押す(出力)方向です。

一方コチラはXSR900のラジアルブレーキマスターを上から見た画です。
何が違うか、分かりますよね?
横置きマスターでは文字通りピストンがハンドルに対して横(並行)に置かれており、レバーへの入力と90度交差しています。
ラジアルマスターだとピストンは縦(垂直)に置かれておりレバーへの入力と同じ方向にピストンを動作させているのが構造上の大きな違い。
ピストンが垂直≒ラジアルに置かれているからラジアルマスター。そういうコトです。
細かい説明は省きますが、この差によってラジアルマスターのほうがレバーへの入力に対してより正確にブレーキの制動力を発揮させることが出来るようになっています。
また、構造上レバーの長さや引き代が大きくしやすい。それによってブレーキのコントロール性を高めている物が多いのも特徴
ブレーキマスターはピストン径やレバー比といった要素によって
・ちょっと握っただけでガツンと効くけど微調整が難しい
・握りしろが大きいが繊細なコントロールが出来る
上記の2つの方向に特性が寄っていきます。

一般的にはガツンと効くブレーキが好まれる傾向がありますが、スポーツ走行では微細なブレーキコントロールが不可欠です。不意に過度な制動力が働くとかえって危険ですし、ブレーキをより細かく正確に調整できたほうがより詰めたコーナリングができますからね。
一般ユースでも、効きが唐突ないわゆる「カックンブレーキ」はおすすめしません。平時ならともかく、濡れた路面や砂の浮いた低ミュー路面では唐突なブレーキは非常に危険。前輪が滑ってしまったら立て直しはほぼ不可能ですからね…ブレーキの性能は強弱だけでなくコントロール性でも見れるようになると良いと思います。
ラジアルマスターはその構造上、そうしたコントロール性が高めやすいことも合ってスポーツバイクでは欠かせない存在になってきているわけですね。
もちろん横置きマスターでも設計次第でコントロール性を高めることは出来るので、コントロール性の高さはラジアルマスターだけの強みでは有りません。
ただ構造上ラジアルマスターが有利…というのは事実ですね。
一方横置きマスターにもちゃんと利点が合って、ピストンが横に置かれるのでブレーキマスターが前方に突出せずに済む。つまりブレーキマスター自体をコンパクトに出来るんですね。周りと干渉しにくいので取付スペースに難儀したりすることがほぼありません。
横置きマスターを使用しているバイクをラジアルマスターに変えようとしたらカウルやスクリーンなどとあたってしまって上手く取り付けできない…なんてケースも多々あるのでカスタムする際には注意が必要です。

そうした問題を避けるために採用されることがあるのが過去YZF-R1などでも採用されていたセミ・ラジアルマスターシリンダーと呼ばれるもの。
見ての通り、ピストンが斜めに配置されることで突出を抑えています。
その分ラジアルマスターの利点である「正確性」は多少損なわれてしまいますが、横置きマスターとラジアルマスターの間を埋めるような存在ですね。

また、ラジアルマスターの特徴でもある別体式のリザーバータンク。
実はコレがあるからと言ってラジアルマスターというわけではないですし、逆にコレがなくてもラジアルマスターの場合だってあります。

たとえばコレはVMAX1700のブレーキマスター。一見すると普通の横置きマスターにしか見えませんが…

実はこうなってます。セミ・ラジアルマスターなんですね。分かりにくいわ!
見分けるときはリザーバータンクの有無ではなくピストンがどの向きに置かれているか。ピストンをどの方向に押しているかで見極めましょう。
ここまでの話では、ラジアルマスターのメリットは正確性。そしてラジアルマスター全般にある傾向としてコントロール性が高い、というものでしたね。
大型スポーツバイクで多用されているからと言って、ラジアルマスターにするとブレーキの効きが良くなる、というワケではないのでそこは要注意。

ブレーキの効きの強さ、というのはどちらかというとキャリパーやパッド、ディスクと言った最終的に制動力を発生させている箇所に拠るものが大きいです。
複数のパーツの性能がせめぎ合い、動作しているブレーキ・システムにおいて、どこか1箇所だけを極端な性能に振ってしまうとバランスが崩れてしまうのは必然。
ブレーキカスタムの際は「マスター」「ホース」「キャリパー」「パッド」「ディスク」それらをトータルで考えることが望ましいです。
不用意に全てを強める方向に強化してしまうと「強烈に効くが微調整がしにくい」という非常に危険なバランスになってしまいかねませんので、そのあたりは本当に気をつけてください。
ちなみに、当たり前ですがどれだけ素晴らしいブレーキ・システムを実装していたとしてもブレーキパッドやタイヤ等消耗品のコンディションが悪ければその性能は発揮されません。
タイヤやブレーキパッドは使うほどに消耗しますし、ブレーキディスクも僅かずつではありますが減っていきます。
ディスクとパッドは最終的に互いの摩擦で制動力を発生させる部分。そしてタイヤは路面とのグリップでバイクを減速・静止させる部分です。
何より大事なのはそうした消耗品をしっかりと管理して、いつでも十全なブレーキが掛けられるようなコンディションを維持することですよ。
カスタムも楽しいですし、乗るのも当然楽しいですが、点検を受けたりメンテナンスをしたりするのも忘れずに。安全に帰ってこれるようにしましょうね。









