ウルトラマンメビウス、第32話は『怪獣使いの遺産』
今回は、巨大魚怪獣ゾアムルチ、宇宙調査員メイツ星人ビオの登場です。

その人は不思議な人でした。
ピアノのレッスンに出かけた帰り道、近くの土手を通るたびにいつも姿をみかけました。
一体何故なのでしょう。
その人は広い河原のあちこちを一生懸命に掘り返しているのです。


少女が「おにいちゃん、何でこんなとこ掘っているの?」と尋ねると、少年は、「円盤を探しているんだよ」という。
「円盤?」という少女に少年は、「うーん・・・UFO、つまり宇宙人の乗り物だよ」という。
すると、少女の母は少女に近寄ってはいけないという。少年は宇宙人と言う噂で、昔このあたりに住んでいたのだと言う。そして
「怖いわね。宇宙人だなんて」という母に少女は「宇宙人だとどうして怖いの?・・・どうして?」というが、答えてはくれなかった。

GUYSスペイシーより緊急連絡が入った。今から40分前、一機の未確認飛行物体が発見され、午前9時47分にタクマ山中に到達するらしい。コノミの保育園の園児達は今日タクマ山中に遠足に行っていた。
園児達は未確認飛行物体が着陸するのを見たが、「宇宙人だったら、コノミ先生がやつけてくれるよ」といった。この危機にGUYSの面々は緊急出動することになった。

未確認飛行物体の中には大型生物の生体反応があった。動いている様子はなくそれは一種の冬眠状態だった。
リュウは隊長に攻撃を要請したが、サコミズ隊長は宇宙船側の目的がわからない限り攻撃はできないという。リュウは侵略目的に決まっているというが、ミライには宇宙人からのテレパシーが入った。その声は「我々には侵略の意思はない」という。「君は誰だ?」というミライに「私はメイツ星人」という。

GUYSの司令室では、平和的な宇宙人なら怪獣など連れてこないだろうと疑念がもたれていた。サコミズ隊長は「とにかく歩み寄ってみなければ」という。
「君がウルトラマンメビウスか?」というメイツ星人にミライは銃口を向けた。するとメイツ星人は「待ちたまえ、どうして君が私に銃をむけなければならないんだ」という。

ミライは地球に来た目的を尋ねた。するとメイツ星人は「地球と友好を結ぶこと」だと言う。なぜ怪獣を連れてきたのかと問うと「君がいるからだよ。メビウス」といい、万一のために見方をつれてきたのだった。
メイツ星人は、無益な争いを起こすわけにはいかないとし、メビウスが介入することがなければゾアムルチを覚醒させることはないという。友好が目的であると確認したミライにメイツ星人は「ただし地球人と握手をするまえに、どうしても解決しなくてはならないという問題がある」という。
それは、今から30年ほど前のことだった。一人のメイツ星人が気象観測のために地球を訪れた。しかし、地球の大気汚染が予想をはるかに超えていたために、彼は深刻な病に犯されてしまっていた。体力の消耗が激しく隠しておいた宇宙船を起動する力もなり、やむをえず地球人の姿となり体力を温存しようとしたが、宇宙人とわかった彼に対し、地球人は恐怖のあまり、一人の警官が射殺してしまったのだと言う。
「無断で地球に入り込んだ我らにも確かに非があるが、命を奪われるほどのことをしたわけではない」と主張するメイツ星人は、メイツ星と地球との問題だと改めて主張した。ミライは「怪獣を暴れさせることなく平和的に地球人と話すことができるのなら、僕は手を出さない」と約束した。
しかし、そこへリュウが「大丈夫か、ミライ!」とメイツ星人を銃撃した。撃たれたメイツ星人は、地球人と異なるものを敵とみなすと悟り、憤りを感じていた。

GUYSの基地でも、30年前の事件について話していた。悲惨な話だが、テッペイはいきなり宇宙人が目の前に現れたら怖いと思うといい、宇宙人か悪い宇宙人かは見た目ではわからないという。サコミズ隊長は「だから、勇気を持って話し合うことが大切なんだ、話し合って、お互い知ろうとしなければ」という。するとコノミは園長先生が同じことを言っていたという。

こんな野蛮な連中にまともな話などできるものか!」とメイツ星人は円盤を誘導した。
GUYSの司令室でもその様子が映し出された。そこへメイツ星人がモニターに現れ「我々は改めて命を奪われた同胞の賠償を要求する。地球の大陸部の20%を割譲せよ」という。できないというと「ならばコチラのやり方でやらせてもらう」という。

サコミズ隊長は「30数年前の出来事は二度と起してはならない悲劇です。無知と恐れが生み出した不幸な事件といえるでしょう。我々は自らの過ちを知り、改めなければなりません。ですが、今危機にさらされている人を救うのもGUYSの使命です」という。サコミズ隊長はジョージとマリナに宇宙人の侵攻をくい止めるように指示し、ミライとリュウに対しては話し合いを持ち説得するように指令した。

マリナとジョージは宇宙船の侵攻を食い止めるように務めたが、しかし宇宙船はそれを交わした。

メイツ星人がよろよろと歩いていると、園児たちが下山してきた。そこへ一人の園児がメイツ星人のケガに気がついた。「先生、あのおじさん、怪我してる」というと若い先生は宇宙人だから近寄るなという。「でも、先生、宇宙人でも怪我をしたら痛いよ、ハイおじさん」とミーコちゃんがハンカチを出した。すると園児達が次々にハンカチを差し出した。すると「ミーコちゃん、立派よ。本当に宇宙人だって怪我をしたらいたいのよ」と園長先生がメイツ星人を介抱した。

ミライはメイツ星人にお互いに話し合おうと説得するが、メイツ星人は「我らの痛みを知るがいい、地球人たちよ」と円盤は地上を襲った。
「これは、地球とメイツ星との問題・・・ぼくはどうすればいいのか」とミライは考えた。リュウは「ミライ、なにをやっている!街が大変なことになっているんだぞ」という。ミライは意を決してウルトラマンメビウスに変身した。

円盤はムルチを地上に降ろした。メビウスとムルチが戦っている間、リュウがメイツ星人と交渉にあたった。メイツ星人は地球人を野蛮で暴力的だといい続けた。ムルチはメイツ星人の脳波と同調しており、メイツ星人との怒りが収まらない限り闘い続けるのだという。
「仲間の復讐か?」というリュウに、メイツ星人は「殺されたメイツ星人は私の父だ」という。それをきいた園長は、「あなた、メイツ星の人?30年前にいたのはあなたのお父様?」と尋ねた。そして「メイツ星の人は本当に心が優しい」と聞いたという話を続けた。
園長は「あなたのお父様は、地球人の少年と二人で暮らしていたのよ」と昔のことを話し始めた。メイツ星人の父は地球人の姿となり身寄りのない少年と一緒に暮らしており、優しい人だったということを伝えた。「たぶん、お父様は自分の星に帰れないことを悟っていたのね。だからきっとあなたの面影をお兄さんに見立てていたのよ」という。
園長はその少年が「おじさんが言っていたんだ、いつかメイツ星人と地球人が手を取り合って仲良くする日が必ず来るといい」と言っていた話をした。少年は、一足先にメイツ星にあってみたいと思っており、一足先に握手をしたいのだと言っていたことも伝えた。園長はその言葉に感銘を受け、いつのころからか、その言葉を伝えたいと思い、今では保育園の園長になったのだという。
愛情という遺産はしっかり受け継がれており、この子達が大きくなる頃、この星は今より優しくなっているという園長の言葉にメイツ星人は「この星が今よりやさしくなっているって・・・」と呟いた。
リュウはメイツ星人に「もう一度だけ、地球人を信じてみてくんねいか」と言った。すると「私の父の遺産・・・」とメイツ星人はつぶやいた。
メイツ星人の思いが次第に父のことに傾くと、ムルチは次第に弱っていった。攻撃を加えるメビウスを見て、苦しむメイツ星人は、「だめなんだ、もう一度地球人を信じてみようと気持ちが起こっているのに、すぐに憎しみが止まらないんだ」という。そして、「お願いだ、私の憎しみを消し去ってくれ!ウルトラマンメビウス!」とさけぶと、メビウスはムルチの攻撃を避けて倒した。

晴れた空と風景を見て、「なかなか、美しいものだな」というメイツ星人はメイツ星にもどるという。握手を求めるリュウに対し、メイツ星人は「じゃあ、握手は父の遺産を咲かせてくれた花を見届けてからにしよう」と腕に巻かれたハンカチを握った。そしてメイツ星人は去って行った。

その人の姿はいつのまにか見えなくなっていました。
病気でなくなったとも、長いたびに出たとも聴きましたが、はっきりとしたことはわかりません。
けれど私の中には、燃え上がるような夕焼けの中でどこか楽しそうに穴を掘り続けているあの人の姿が、今も消えずに残っているのです。



【感想】
今回の話は「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いの少年」の続編的な一話でした。
「怪獣使いの少年」は、父は出稼ぎに出た後の蒸発、そして母を亡くしてしまった身寄りのない少年が宇宙人の子どもといわれ差別や暴力を受けるという、最大の問題作といわれた作品です。河原で穴を掘り続ける少年は、中学生から穴に埋められて頭から水をかけられたり、自転車でひかれそうになるなどの暴力を受けるも、念力でそれを撃退することから宇宙人呼ばわれされます。穴を掘り続ける理由は、自分を助けてくれた老人が宇宙人で大気汚染が身体を虫歯み、病におかされたため、老人が乗ってきたという宇宙船を探す為だということがわかると、こんどは警察を筆頭に近隣住民が宇宙人を探し出そうとし、少年の盾となった老人が警察に射殺されてしまうという話です。今回は、その後のエピソードを絡めながら、30数年後の地球での展開に結びつけたものでした。

30数年たった日本に未確認飛行物体が現れ、それは父を殺されたメイツ星人が宇宙人に対する偏見を説くために友好を結ぶ為のものでした。その父こそ「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いの少年」で宇宙人というだけで射殺された老人だったんですね。メイツ星人は「無断で地球に入り込んだ我らにも確かに非があるが、命を奪われるほどのことをしたわけではない」と憤りをあらわにしますが、メビウスが介入しないことを条件に地球人と話し合うことを約束します。しかし、ミライが宇宙人と話し合う姿を見ただけでメイツ星人は銃撃を受けてしまいます。そしてやはり偏見があるのだと察したメイツ星人は地球人への報復にムルチを投下しました。しかし、怪我をしたメイツ星人を救ったのは、けがれのない子どもの心だったんですね。その心を育てたのが、かつて穴を掘り続けていた少年にメイツ星人が優しくていい宇宙人で、ぜひ行ってみたいほどの星であることを少年から聞いていた少女・・・コノミの保育園の園長だったわけです。

園長は、少年が老人から勇気を持って話し合うことや理解しあうことを教えられたことに共感を受け、愛情という遺産を残したことをメイツ星人に伝えます。そして、リュウも地球人を信じてほしいと訴えるも、メイツ星人は過去のことが頭を過ぎり、メビウスに「私の憎しみを消し去ってくれ」助けを求めます。メイツ星人の脳と同調しているムルチはどんどん弱まり、そしてメビウスが征伐しました。
1970年代初頭は大気汚染や公害が問題となっていた時期。そして、メイツ星人にとっては言われなき差別と偏見を受けるといった暗い雨の降るような過去でした。そして今、環境問題も少しは改善され、宇宙人と地球人のお互いのわだかまりが解け、空は晴れた・・・という結末でした。

雨の中での闘いのシーンは悲しみと苦悩が伝わり、また、30年前を髣髴させるかのようでなかなか見ごたえがありました。

園長役の斉藤とも子さん、久々にテレビで拝見しました。もう40代半ばだと思うのですが、なんだかいつまでもお変わりないですね。

最大の問題作は、直木賞作家の朱川湊人氏によって、じつに清清しい結末となり、「怪獣使いの少年」での差別と偏見という負の遺産の中には、実は老人が心優しく人との共存を求めており、それが少年に伝えられ、そして一人の少女に受け継がれ、園児への愛情となり、怪獣使いの遺産は「愛」や「労わり」という優しさに変わって行ったというお話でした。心の狭い偏見を持った人ばかりではないということですね。


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