ウルトラマンメビウス、第41話は『思い出の先生』
ある朝、一人の教師が生徒を家まで迎えに来ていた。
「今さら学校へ行ったところでしょうがないよ」という生徒に、教師はいきなり逆立ちした。そして「こうしていると、地球を支えている気分になるんだ。地球を背負って立つ・・・先生も登校拒否したことあってな、そのとき迎えに来てくれた先生がこうして教えてくれたんだ」という。そして、「そんなに難しいことじゃない、ほんの少し勇気を持てばいいことなんだ」と告げた。
学校の正門では、クラスを代表して2人の生徒が待っていた。「カイ君、早く教室へ行こう」「みんな待ってるよ」という声に生徒の顔から笑みがこぼれた。
ある日、太平洋上のとある島に遠い宇宙からウルトラマン80と円盤生物ロベルガー二世が降り立った。
ウルトラマン80とロベルガー二世が闘いを続けていたとき、その危機を察知してウルトラマンメビウスが援護にまわった。ロベルガー二世の手から手裏剣のように赤い光が投下される2人のウルトラマンは危機に瀕するも、メビウムシュートとサクシウム光線でロベルガー二世を倒した。
そのときウルトラマンメビウスはウルトラマン80からマイナスエネルギーが発生しつつあると忠告を受けた。
フェニックスネストのGUYSの基地では、ミライが隊員たちに闘いの報告をした。ウルトラマン80は、地球に再びマイナスエネルギーが発生したため調査にやってきた。
テッペイによると、マイナスエネルギーとは「人間の心の暗い波動」といわれており、それが邪悪怪獣を呼び寄せるらしいのだが、ハッキリとした結論は出ていないようだ。

桜ヶ丘中学の前を懐かしく見る会社員。そこへ友人がトラックで通りかかった。2人は卒業生だが、母校は統廃合により無くなることをとても残念に思いつつ、校庭を歩いていた。そこへ教師が現れ「すみません、部外者の方はは立ち入り禁止なんですが」と駆け寄ってきた。教師の顔を見て2人は「お前、塚本じゃねえか?」と尋ねた。その顔に「あーお前、落語!?スーパー!?」と返す教師。3人はこの桜ヶ岡中学の同級生だったのだ。

教室に入った3人。
塚本は先月この学校に赴任したばかりだった。そして、かつては登校拒否だった塚本は、今ではいきなり登校拒否の生徒の担任であることをこぼした。そして3人は旧友の名前を出しながら昔を懐かしんだ。そして、「早いもんだよな、時が過ぎるの」「すっかりオジサンだよな、俺たち」「矢的先生どうしてるかな」と担任だった矢的猛のことを思い出した。
ある日突然、いなくなってしまった矢的先生だったが、誰よりも印象に残っている教師だったと振り返っていたとき、塚本は「矢的先生は、ウルトラマン80だったんだ」と、つぶやいた。その言葉を聞いて笑う、落語とスーパーだが、塚本は確信していた。3人は久々に出会ったこともあり、この学校が壊されてしまう前に同窓会をすることになった。塚本は「矢的先生来てくれるといいな」とつぶやいた。その声に2人もうなずいた。
そこへ、ミライが桜ヶ岡中学へマイナスエネルギーの調査に来ていた。

GUYSの司令室にて。
「ミライ、お前のお兄さんの人形、持ってきてやったぜ」とリュウがにこやかに入ってきた。しかし、ミライの姿は無い。ミライは都内でマイナスエネルギーに似た波動が観測されたので出動したのだった。ほんの微量だったが、サコミズ隊長は「それだけ、お兄さんからの忠告は重たいものなんだよ、彼にとって」という。
その頃、ミライは3人に「何か変わったことはありませんか?」と尋ねたが、何も無かったようだ。しかし、逆に塚本から「かつてUGMの隊員であった矢的猛さんを知りませんか?」と尋ねた。他の2人はUGMの隊員をしながら教師をしていたことを知らなかったようだった。塚本はそのことを前に赴任した学校にUGM隊員の子どもがいてそれを知ったのだった。

ミライは夜空を眺めていた。
『ウルトラマンとしてだけではなく、教師としても慕われていたんですね。25年もたった今でも、まだ・・・。桜ヶ岡中学で最後のクラス会をしようとしています。ぜひ参加してください。矢的猛先生として』と念じた。
しかし、ウルトラマン80は『それはできない』という。ウルトラマン80は、『元々私は地球にはマイナスエネルギーの調査のために訪れた。そして人間と触れ合ううちに人間のもつ限りの無い可能性に感じた。それはメビウス、君もおんなじだろ?』という。しかし、人間はその可能性を誤った方向にも向けかねないこともわかった。そのことによって生まれるのがマイナスエネルギーだということがわかり、ウルトラマン80は、教育という見地からマイナスエネルギーの発生を抑えられるのではないかと中学校の教師になったのだった。
しかし、それを食い止めることはできず、次々と現れる怪獣の対応に追われ、ウルトラマン80は教師という立場を捨てなければならなくなったのだという。遠く離れたとはいえ、いつもウルトラマン80の心の中にあった。そしてミライに謝ってほしいと頼んだ。

ある朝、新聞に『ウルトラマン80 現る!』と大きな見出しと写真の入った新聞記事が発表された。それを目にして驚くスーパーと落語だったが、矢的猛がウルトラマン80だと確信し、最後のクラス会に来てくれたら・・・と切実に願った。

また微量のマイナスエネルギーが検知された。検地された場所は桜ヶ岡中学校だった。コノミは学校が取り壊されるのが嫌でマイナスエネルギーを発生しているのではないかというが、テッペイは「無生物がエネルギーを発生するなんて」という。
そんな折、ミライは「板ばさみって辛いですよね」とウルトラマン80の人形を見てつぶやいた。
サコミズ隊長はミライを外に呼び寄せて、ミライの悩みに応じた。サコミズ隊長は「君が何かしなきゃいけないことなんか無いんじゃない?」と笑った。そして「出会い、別れ、喜び、悲しみ・・・人間って面倒くさい生き物なんだ。だけど時がくれば、それが思い出というものに変わる。その思い出が何も無いことが、一番人間にとって悲しいことかな」と諭した。

桜ヶ岡中学校で、1980年度1年E組の同窓会が開かれた。
学校の屋上には次々と懐かしい仲間が集まった。スーパーも落語も、そしてファッション、博士も集まった。会場が屋上になったのは矢的先生が来たときにメッセージを送るためだった。

『やはり伝えなければならない。80兄さんの言葉を・・・』と、ミライが思ったとき、砂嵐が舞い、桜ヶ岡中学校に硫酸怪獣ホーが現れた。
屋上では硫酸怪獣ホーに怯える1980年度の同窓生たちがいる。そこへウルトラマンメビウスが現れた。果敢に向かうメビウスだったが、そこへウルトラマン80が現れ、「マイナスエネルギーが呼んだ怪獣なら、私が倒す」と、メビウスの代わりにバックルビームで硫酸怪獣ホーを倒した。
戦いを終えたウルトラマン80に「矢的先生!」と声援を送る教え子たち。その声に振り向くウルトラマン80に、
塚本は「先生にあこがれて僕は教師になりました」
ファッションは「私は結婚して3人の子どものおかあさんです」
落語は「地元の信用金庫に勤めています」
博士は「大学で研究する日々を送ってます」
スーパーは「親父のスーパー継いでがんばってるでー」
と近況を報告した。
「矢的先生、思い出をありがとう」という横断幕をひろげ、ウルトラマン80に「仰げば尊しの歌声と集まった教え子の姿を感慨深く眺めるウルトラマン80。
「教え子たちに逆に教えらてしまったな」という矢的猛は、「感謝しているのは私のほうだ。彼らと過ごせた時間は、私にとってもかけがえの無い思い出だからなぁ」という。
ミライは「さあ、みんなが待っています」と促すと、矢的は「メビウス、私は自分の言葉で謝ってみるよ。大切な自分の生徒たちだから」と、教え子たちの方へと向かっていった。
「きっとあの怪獣は、桜ヶ岡中学が呼んだんです」というミライ。「コノミがいっていたようにか?」というジョージに、ミライは「でも、ちょっと違うのは、桜が岡中学が壊されてしまうから、悲しいからじゃなくて、80兄さんと生徒さんたちを合わせてあげたくて、怪獣を出現させたんです」と説明した。
「思い出の人・・・・」というマリナに、「っていうか、思い出のウルトラマンか」というジョージ。そしてミライは「思い出って、本当に大切なものなんですね」


【感想】
今回は、マイナスエネルギーを察知したウルトラマン80が地球に現れ、かつての教え子たちと再開するといった一話。
1980年にウルトラマン80が矢的猛として桜ヶ岡中学の教師に赴任した際、1年E組のなかでただ一人、矢的が地球防衛軍の特捜チームUGMの隊員と桜ヶ岡中学校の掛け持ちをしていたことを確信していた生徒・・・それが現在桜ヶ丘中学校で教鞭をとる塚本でした。
桜ヶ丘中学にたまたま現れた同級生のスーパーと落語が偶然にもであったのが教諭となった塚本でしたが、3人の会話の「早いもんだよな、時が過ぎるの」「すっかりオジサンだよな、俺たち」「矢的先生どうしてるかな」なんて言葉を聞くと、自分も同じように年取ったなぁ・・・って気がします。
導入部分の、かつては登校拒否だった塚本が、今では自分の中学時代と同じ登校拒否の子どもを諭す身となり、矢的先生に教えられたことを同じように伝えるシーンはよかったですね。迎える同級生の対応に思わず笑みを浮かべる生徒の姿がよかったです。その導入部分が最後まで生きている展開だったと思います。
ホーとの闘いを終えたウルトラマン80に対して「矢的先生!」と声援を送る教え子たちのメッセージと「仰げば尊し」を歌うシーンは、よかったですね。横断幕を用意していたところは「きっとウルトラマン80が現れる」と皆確信したのでしょう。感動ものでした!
しかしながら、メビウスであることがバレバレなミライが「さあ、みんなが待っています」と促すと、矢的先生も開き直って「メビウス、私は自分の言葉で謝ってみるよ。大切な自分の生徒たちだから」と教え子たちの元へと歩み寄っていくのは、この「ウルトラマンメビウス」という番組が「ウルトラマンは身近にいる」という設定がなせるわざですね。
この話には「思い出」がキーワードとなっていました。古きよき日の思い出、子どもの頃の思い出、新たにできた思い出・・・。
しかしながら、やはりミライは宇宙人ですね。勝手に板ばさみになって辛い思いをしています。そこへサコミズ隊長が思い出の大切さを諭すシーンもよかったです。誰かが教えてあげなければならないことってありますものね。
最後の「思い出」が、かつての子どもたちの思い出であり、今の子どもへのメッセージであるという、本当に心温まるいい作品でした。

さて、1980年といえば、1979年の「3年B組金八先生」がブームになった翌年ということもあって、ウルトラマン80も設定としては当時の社会状況を反映したものとなっていた作品でした。
教育現場が荒んでいた当時、生徒の「心の闇」が問題になっていました。ウルトラマン80では、マイナスエネルギーは生徒たちの「心の闇」が引き起こすものではないかと、体を張って向かった矢的先生の熱血漢が、暗い問題を勧善懲悪という視点からうまく切り込んでいましたね。
また、最近では中学生の自殺やいじめがクローズアップされていますが、矢的先生のような(塚本先生のような)体を張った先生が現れてくれないものかと思いますね(金八先生はちょっとくどいです)。

では、また。

おまけにYouTubeの動画でも。
★1980 - ultraman 80 (ウルトラマン80) OP★


★1980 - ultraman 80 (ウルトラマン80) OP2★


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