3月14日のブログの冒頭で「パンドラの箱」という喩を出しましたが、パンドラはギリシャ神話に出て来る女性で、プロメーテウスが人類に火を与えたことにゼウスが怒り、愚かでやっかいな女性パンドラを作り、地上に送り込みます。パンドラは「絶対開けてはいけない」と言われた箱を好奇心から開けてしまいます。箱から飛び出したのはありとあらゆる災いでした。あわててふたを閉めるとそこには希望だけが残った、というお話です。神話ですから諸説いろいろあるようですが、今の原発事故を見ていると神をも恐れぬ人間の驕りへの試練のようにも思えますし、危機に際して「希望」だけが唯一の救いのような気がします。
世界の動きを見ていると津波までは「同情の嵐」でしたが、福島の原発がクローズアップされた途端「世界の困ったちゃん」化しているようにも思えます。北朝鮮ですら在日朝鮮人に見舞金を出すという按配です。日本人がテポドンにおびえたどころの恐怖心ではないのかも知れません。
中国では塩が放射能被害を防ぐというデマから塩の買い占めが起こりました。何と1人で6トンを買った人まで現れました。量からして個人で使用するとは思えませんので一発当てようと思ったのでしょう。
その他、香港では日本料理店の売上が1-5割ダウン、中国本土では今まで日本製の食材を使用と偽っていたのを暴露してまで客離れを食い止めるという漫画のような報道もありました。
中国のみならず東南アジアでも粉ミルク、化粧品なども買い占めの対象となりました。放射能の汚染前の製品を買っておきたいという衝動からです。
これらの製品は「安全、安心」を売り物として時には政府が音頭を取って長い時間をかけて販路を開拓してきただけにまったく残念でなりません。
中国での買い占め騒動は日本の比ではなく、オイルショックの時の日本のトイレット・ペーパーの買い占め騒動を思い出しました。たしか私が大学生の時です。授業を休んで母と一緒に売っているお店を何軒も何軒も歩いてまわった記憶があります。価格もあっという間に値上がりしました。その次はやはり塩でした。
日本のオイルショック時の買い占め騒動が終息した後、洗剤を4畳半の部屋いっぱいに買い占めた消費者から「そんなに持っていても爆発しませんか?」とメーカーに問い合わせがあったという笑い話さえ残っています。
先日も昼間私鉄に乗り、車内に照明がついていない事に気づき、昔はそうだった事を思い出しました。照明を落とした店やオフィスを見ながら、昔はもっと夜暗かったのに皆いつしか不要に明るいのに慣らされている事を反省もしました。
照明を制限したり、産業活動もフルでないせいか、東京の夜空にも星が戻ってきました。ここ何十年とこんなに星を見たことがないような気がします。日没も美しいですし、桜もちらほら咲き始めました。自然は時には過酷すぎますが、こんなにも美しい、そして人間も自然の一部である事を忘れてはいけないような気がします。
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粉ミルクと幻の酒
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2011年03月
JETROによる東北地方太平洋沖地震に関する緊急対応策
1. 東北地方太平洋沖地震の国際ビジネスへの影響
日本から輸出される物品の放射線線検査、救援物資の関税・消費税の免税および通関手続きの簡素化、不可抗力による契約の不履行などについて、また各国の対応状況はこちら。
http://www.jetro.go.jp/world/shinsai/
2. 国際ビジネスに関して緊急災害対策のための相談窓口
日本企業向けのみならず、国内の外資系企業向けの英語での相談窓口もあります。
http://www.jetro.go.jp/news/announcement/20110317949-news
3. 電池の輸入手続きについては
http://www.jetro.go.jp/world/japan/qa/importproduct_12/04M-010984
4. ミネラル・ウォーターの輸入手続きについては
http://www.jetro.go.jp/world/japan/qa/importproduct_01/04M-010715
混乱に乗じて詐欺まがいのビジネスも国内外で発生する事が懸念されます。念には念を入れ、落ち着いて対応されますように。
危機意識
私にとって今までの最大の不安は築70年の家の耐震性でした。阪神大震災の後、屋根材は軽量なものに全部変えました。この10年に4回もリフォームを行っていますが、床や壁、塀の点検はその都度も行い、必要な所に補強をして来ました。また、家中のウェイトのバランスを考え、かつ倒れてきても死亡事故に至らないような家具配置をしています。
非常時の持ち逃げ用品はいつもセットしてありますし、母が長らく目を患った事もあり床につまづくような物を一時的にでも置かない、引き出しを出しっぱなしにしない、開けたドアはストッパーで必ず止める習慣がついています。また、私が仕事で買い物に行けない事もありますので、保存のきく食糧や消耗品はある程度ストックしてあります。
リフォームのたびに「オール電化」「IH」についての提案を受けましたが、停電になったら何もできないという理由で断りました。業者は「停電になるなんて今どきまずありませんよ。」とせせら笑いましたが、今のように広域での停電でなくとも、一部の地域で停電になる可能性はいくらでもあり、会社員の時都心のオフィスで2回も停電を経験しています。
いつどこで停電になるかわかりませんので、家のあちこちに懐中電灯を置いてありますし、電池のストックは定期的にチェックします。ふだんはインテリアグッズになっているキャンドルも停電になれば十分活躍するでしょう。(ただ、キャンドルは芯が命で、芯が悪いとすぐ消えてしまいます。)
一般家庭でもこのくらいはしているのですから、政府や東電は原発に対しとっくにそのくらいの準備やチェックは済んでいると思った私たちが甘かったのか、「やっぱりずさん」だったのか、いずれにせよ、被害をこうむるのは私たちなのですから情けなくて言葉にもなりません。
3/20のブログで庭先の賃アパートの住人が「大丈夫でしたか」とたずねてきてくれた事を書きました。これは3/13の事です。この時一緒に食事をしながらの会話をよく覚えています。
81歳の母「原子炉は止めるか、冷やすか、封じ込めるかしかないんでしょう?地震でもう止まっているんだからどんどん水でもかけて冷やせばいいのに、何をしてるんだろう?」「海水を入れるとか言ってたわよね。真水を入れて使っている所へ海水を入れるという事はもう使えませんよね。」と私。「使えないと思います。」と住人Eさん。「まさか、まだこのまま使おうなんて東電はたくらんでないでしょうね?いい加減古いでしょうに。」と私。
この時点では自衛隊やハイパーレスキューによる放水はまだまだ始まっていませんでした。
実は昨日調べたのですが、ウィキペディアによれば1.2.6号機はGE、3.5号機は東芝、4号機は日立、建設は鹿島建設と書いてあります。一番古い1号機は何と1971年に稼働、新しい4.5号機ですら1978年に稼働したものです。何と30数年から40年前のもの、設計は数年前でしょうから、その頃と今の技術水準はどれだけ違うことか。
各国からの支援を東電が断り続けていたとか、石原都知事が早々に送ったハイパー・レスキューを「自治体が出て来る幕ではない」と政府が追い返したとか、いろいろな裏話が飛びかっていますが、このような時は「タテマエ」優先ではないでしょう。
話は13日に戻ります。「知人が福島で果樹園をやっています。風評被害で売れなくなるのではと心配です。」とEさん。「そんな事になったらますます復興は遅れますね。」と私。やはりほうれん草が犠牲になりました。ただですら災害で食糧が減っているのですから農水省なり農協で放射能を計測して安全なものは認定シールを貼って出荷したら良いと思います。農家にとって価格は多少下がるかも知れませんが捨てるよりははるかにましでしょう。
今回の大震災で「危機意識と備えの重要性」や「どんな人や組織が役にたつか」がよくわかった気がします。
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メディアに伝えてほしいこと
昨日ある駅に上質感のある食品スーパーと輸入食材店がオープニング・セール中という事で行ってみましたが、町中お祭りのようなにぎわいでした。レストランはどこも満員。昔から有名なラーメン店は10メートル以上の行列です。輸入食材店もレジにたどりつくまで店の外に並ぶはめになりました。
考えてみれば平時なら卒業、入学、就職などで人の往来の多い季節です。本来なら都心へ出かけて行くのでしょうが、遠出せずに手近ですませたに違いないと思いました。どの家も車は家に置いたままでした。
このあたりは大富豪が集まる地域というより、中の上、あるいは上の下くらいの世帯年収の密集地ですが(文化人、芸能人、政治家も含め)有職主婦が多く食物に神経質にならざるを得ない当節、週末にまとめ買いという事もあるかも知れません。
自粛や人が出歩かないためお店や外食産業はピンチなんてとんでもない嘘です。ニュースだけ見て家に引きこもっていたらとんでもない「世間知らず」になりそうです。
もうひとつ、ニュースから見えてこないのは「西日本の頑張り」です。たしかに阪神大震災などを経験された方々がボランティアに行ってくださるのは非常にありがたく被災者の方々もさぞ頼もしいことでしょう。それとは別に経済活動のニュースがありません。東日本に変わって工場がフル稼働しているとか、注文に応じきれないといったニュースを内心期待していたのです。
今日はやっとトヨタが動き始めましたが、東日本からパーツが出てこないだけで日本中どころか海外も生産が止まってしまう事態は「真の世界の工場はやはり日本だった」事の証明であり誇りに思うと同時に、効率一辺倒でリスク・マネジメント上は問題がある事を露呈したような気もします。
先日のブログ「メディアの問題点」に出て来るS氏には「TVは今知りたい事だけ知らせ、あやふやな事を言う専門家の話は国民を混乱させるだけだから放送をやめて節電しては?」「俺も息子にそう言ったらケンカになったよ。そんな事したらTV局つぶれちゃうんだって。」放射能については見えないだけに放送が続けられている限り時間のある人はつい見てしまうでしょう。専門家の言う事に一喜一憂し、それだけで気疲れするに相違ありません。また、もっとも無駄な電気の使い方のような気もします。
米国では放射能被害を大袈裟に伝える記事やコメンテーターのリストとその評価(いい加減度や煽動度)を出しているサイトがあるそうです。一昨日のブログ「欧米ビジネスマンから見た今の日本」の最後に私なら国家転覆罪(現在の刑法にはないそうです)で捕まえると言いましたが、「ネット版町内引き回しの刑」といったところでしょうか。
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欧米ビジネスマンから見た今の日本
昨夜、地震で中断していた日本のクライアントの中国進出のために事業計画書作成の準備でデスクの上が紙だらけになっていたところへパリの日本人経営戦略コンサルタントのN氏からSkypeで電話がありました。
彼の顧客はEUを中心に米国、アフリカ、中東と幅広いエリアにあります。
「日本の復興をどう思われますか?」おそらく彼はいろいろな顧客にそう聞かれて困っているのでしょう。「大地震と津波までは必ず、しかも早く復旧すると言える自信があったのですが、原発事故が足を引っ張っています。」
「幸い私のところは停電はありませんが、関東圏のクライアントは工場の操業時間が短かったり、卸業では注文のFAXが受けられない時間帯があったりで困っています。長期にわたればジワジワと弱っていくのではないでしょうか。」事実、震災を理由に解雇されたり、内定取り消しも被災地以外であったと聞きます。小売店や飲食店も節電のため営業時間を短縮したりしていますので、時間給のパートやアルバイトの方も収入が当然減るでしょう。復興需要のある業種やそちらへシフト可能な人材は救われるでしょうけれど。
「不安で消費意欲もわきませんよね。本当は経済を盛り上げていかないといけないのに。」とN氏。「ええ、本来は春需要の時期で消費活動が盛んな時期なのですけれど。自粛は困ります。知人で小売関係の方々にはチャリティを呼びかけてはおります。寄付になると思えば少しは消費をしていただけるのではないでしょうか。」
「ところで国民は政府の言うことを信じていないって本当ですか?欧米人は信じられないって言うけれど。」「こういう時は強いリーダーシップやカリスマ性のある人がいないと無理です。最初の頃の東電の記者会見など地震のショックで私は日本語のヒアリングができなくなったのか?と疑うほどわけのわからないものでした。正確な情報をわかりやすくタイムリーに伝えることが大事だと思うのに、あの態度では頼りないと思うのが普通です。」やはり昨日私のブログで触れたように閣僚の作業着は「変」というのが欧米ビジネスマンの一致した姿のようです。
「日本政府はどうして海外に向け、安全性についてアピールしないのでしょうか?たとえば日本の放射能の基準は他国より低く設定してあるとか、放射能が検出されたほうれん草を何キロ一遍に食べても健康被害はないとか説明していかないと、日本に投資をする人は激減するし、日本製品を警戒して輸入する人もいなくなるでしょう。」「そんな大所高所から見た発想をする閣僚はいないですね。国民に対してだってきちんとできないのですから。」
「日本は被爆経験があるから放射能の影響についての詳細なデータを持っているのでは?」「それに関してはとてもナーバスですね。被爆者や被爆者2世に対する差別助長につながるなんてすぐ言いますから。私の父の従姉は広島で被爆をしましたが昨年91歳で亡くなりました。大学時代の恩師はドイツ人の神父様ですがやはり広島で被爆し3月の初めに94歳で亡くなっています。被爆したから短命というものでもないと思います。」
父の従姉の子どもたち、長女は4歳の時に被爆しましたが子ども3人に孫もいますが今まで誰も病気になったことはありません。長男は50代で病死しましたが被爆と直接的な関係はなさそうです。
「なぜ政府や東電は事実を把握できないのでしょうか?」とN氏。「作業は協力企業、関電工や下請がやっているからです。官僚体質です。現場の仕事ができなければ緊急時には何の役にも立ちません。これは私の仕事でもまったく同じなのでそのように思います。」私自身は作業着で倉庫で作業をするのが好きでしたし、建設現場視察ではヘルメットに軍手、長靴という姿で鉄板の上を歩きました。アセアンの工場などはエアコンが入っていませんので額からつたう汗で目が見えないこともありました。そういう積み重ねがいざという時の判断力や現場指揮力につながるものです。
「メディアを通じて視聴者を不安に陥れるような発言をする専門家やコメンテーターは私なら即国家転覆罪で捕まえますね。」と私。海外から「日本国民は世界一」と絶賛される中、その国民の代表、リーダーたるべき方々はなぜお粗末なのか首をひねります。
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