<2017年も暮れてゆく師走>。
老人は孤独ながら老人の切実な夢を見ている。誰かを深く愛することすらできないなら長生きしたってどうにもならないなんて思っている。
人生100年時代だという。最近人生をリセットするなどと言う言葉が流行っているらしい。いずれにせよこの限りある一生をなんとか充実して生きる道を探す。
自己の夢を実現するとの願望は一個の人間の美しさや魅力は若さにひけを取らない。生理的に若いだけが人間の美しさでもあるまい。
人生をやり直すのではない、一から始めることでもない。
誰も来ない、誰も待たない黄昏た駅のベンチで単行本を取り出して読んでいるフリをする。電車の来るのを待っているのではない。ただただ時間が過ぎてゆくのを待っている。
これっきり会えないと思うと私は彼女にかける言葉が一体なんなのかと考えると不安になった。私の中で広がる闇、こんなに深く冷たい色を見たことがない風景が広がっていた。
繋がれた糸が切れてゆく、床に横たわる紙コップを見つめながら私は自分に呆れていた。
この人の持っている絶望が自分がひた隠しにしている絶望にはげしく繋がっている感じがしたのだ。
「僕は別に君と寝たいわけではないんだ」
老いる〜孤独〜絶望と意味なく繋がっている。
街の寒さを抱え込んでいる歩道の縁石に座った。
「ただ手を繋いで街を歩きたいんだ。あの年老いた外人夫婦のように」と私はポツンとため息のように言った。
自ら求めた孤独の暗部が大きくなってゆく。さらに街を歩くとthgather aloneの孤独をさらに増幅させるのだ。
子供の頃70歳といえば老人を通り越して仙人のような感じがした。まさか自分がその年まで生きようとは思いもしなかった。