
(愛知県設楽町つぐ診療所高木所長の夕張研修日記です)
もと炭鉱の街そして観光の街、しかし財政破綻した夕張は人口が国の1万分の1、借金も国の1万分の1、高齢化人口は45%。この国がこのまま進んだとしたら、その未来はこうなっていくでしょう。その街で在宅医療・予防医療に夕張希望の杜さんは積極的に取り組んでみえます。
考えさせられたことはこの今を守るというだけの視点ではないということ。医師が一人頑張っても医師が変われば消えてしまうシステムでは結局だめになってしまうばかりか、次にくる後輩まで前と比較され苦労を背負うことになってしまいます。医師は地域の「安全」を守るためその地域で働きますが、「安心」できる仕組みを作るのは医師だけの努力ではなく、医師が変わっても大丈夫なように住民や地域・行政・診療所のスタッフがシステムを作らなければならないのです。継続的に「安心」して住める地域ならばどのような医師も安心して赴くことができます。医師や現場職に背負わせるだけの地域がどのような経過をたどっていったか、その実例は日本各地にあります。
またもう地域も国も右肩上がりで伸びていくことはありません。今を守るだけでも精一杯の中で、今通りあることを要求しても次の世代はもう地域にはなく、支えるための財源を納める次の世代の負担は増える一方です。次の世代のほうが人数が多いとかお金を持っているとかいうことが前提の世の中ではすでにないのです。人が減っていく中でいかにゆっくり地域を縮小していくか、いかに将来軟着陸させるか、もう考えている段階ではなく行動していなければならない状況にあります。私も今年度多くの人がなくなり地域にが急に寂しくなった気がしていました。今良ければ、ではもう軟着陸ではなくある時に急に墜落していく、それはもう5〜10年程度で奥三河にも来るのではないでしょうか。希望の杜の皆さんは破綻した街でもう行動に移っていました。
夕張では予防医療・在宅医療をはじめとした取り組みによって一人当たりにかかった医療費を大きく減額することができました。これは本人とそれを支える医療や介護福祉の取り組みが次の世代の負担も大きく減らすことに貢献したことになります。不摂生をして病気となって、「安心」のための医療とそのお金を求めるというのは周りにとっても大きな損害です。もちろん病気は「不摂生」だけではないのですが、普段から健康意識を高め、運動をしたり食事に気をつけたり、健診を受けたりすることが、結果として医療が地域で継続できることになり、次の世代への負担を減らし地域や国を残すことになります。年を取ったから支えてもらうというだけではなく、それぞれ各世代でやるべきことがあるはずです。
医師が続いて働いていけるシステムもいろいろ工夫されていました。夕張希望の杜は夕張だけでなく北海道各地や東日本大震災の復興支援を行っている病院地域をさらに支援しています。単純に考えて私のような一地域の診療所よりもハードワークになると思ってしまうのですが、そこが民間の強さかうまく継続できる勤務体系がとられています。医師だけでなく他の職員も同じようです。もちろん継続のためにはスタッフ皆さんの意識の高さが必要なのはいうまでもありません。ひとつのところで各個が燃え尽きるまで頑張ることよりも、多少ゆるくてもみんなでゆっくり継続していけることのほうがずっとすばらしいと思います。
正直、町村合併をはじめとする行政との関係、診療所の今後、このまま継続することがいいのかなどいろいろ悩みを抱えての訪問でした。私はコミュニケーションが下手なだけで決して「赤ひげ」ではないと思っていますが、見せていただくこと以上に話を聞いていただいて、本当にありがたく思いました。次お邪魔するときは取り組みの何かいい話や、取り組みについてのアドバイスなど教えてもらいに行けるよう、燃え尽きることなく無理せずやっていきたいと思います。
まだ夕張で見てきたこと、聴いてきたことが消化できていません。漠然とした気持ちの中でしかし今までと方向の違う風が吹いてきたように思います。きっと多くの医師が経験してきただろうことを遅れて経験しているだけで、なかなかすぐには変われないのかもしれません。半ばショック療法に近いものがありました。今までにない視点を見させていただいたように思います。今は自分の考え方の幅が少しでも広がればいいと思います。
水曜日の健康教室までに話をまとめてみようと思います。また消化していく中でこのブログにも書き込んでいこうと思います。
最後になりますが夕張希望の杜の村上智彦先生をはじめ先生方、スタッフの皆様方、いろいろコーディネートしていただいた事務の皆様、支える医療研究所の皆様に心より御礼申し上げます。
次はもっと晴れ晴れした顔でお伺いできますよう、県支部長(仮)の名に恥じないようがんばってみます。
皆様の今後のご活躍を御祈念いたします。このたびは本当に支えていただき、ありがとうございました。
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