シーズンが終了しても、ボンズ協奏曲は終わりそうにない。むしろ、激しさを増す一方だ。


 今季、メジャーリーグ(MLB)通算最多の756号本塁打を放ったバリー・ボンズ
 本来ならばら色のオフを迎えるはずだったが、かねてからの禁止薬物の使用疑惑でサンフランシスコ・ジャイアンツのピーター・マゴワンオーナー、ブライアン・サビーンGM(Generarl Maneger)は、「ボンズとは再契約しない」と、シーズン終了を待たずに宣告。そして今月7日には、ステロイド(筋肉増強剤)などの使用に関して偽証、司法妨害の罪でボンズは起訴された。

 裁判で、ボンズ側は無罪を主張。弁護士は起訴そのものを取り下げるよう求めた。ボンズは自身のサイトに「いまの司法制度に信頼を寄せている。特に市民が陪審員を務めるのだから、最後には無罪になると信じている」と書き込んだ。9558d09d.jpg
 はたしてボンズが黒なのか、白なのか――。
 現時点では真相はまったくの「薮の中」だが、少なくともMLB機構と、一部のファンがボンズを追放したがっていることは確かだ。


 ボンズ追放派の急先鋒は、バド・セリグコミッショナーだ。
 ボンズの記録が、ハンク・アーロンが持っていた通算本塁打記録に近づくにつれ、セリグコミッショナーはボンズの記録更新に否定的なコメントを発表。アーロンの記録に並んだ755号では、セリグコミッショナーは観戦していたものの、他の観客と違い拍手もせずポケットに手を突っ込んだまま、神妙な面持ちだった。さらにボンズが記録に名を刻んだ756号では、結局セリグコミッショナーはその場に現れず、代理を送っっただけだった。
 また、記録更新の瞬間に、前記録保持者のアーロンは立会いを拒否した

 ファンも、ボンズに限りなく黒に近い疑惑の目を向けている。有名なのは、記念のホームランボールの措置だ。インターネット投票の結果、ボンズの記念ボールは注釈を意味するアタリスクの刻印を押され野球殿堂に展示されることが決まった。とてもホームラン記録を塗り替えた国民的英雄への仕打ちとは思えない。

 また、ボンズ自身の性格もあり、彼を快く思っていない選手も少なからずいる。チームメイトですらそうだ。ボンズがベーブ・ルースの記録を破る715号、アーロンと並ぶ755号を打ったときには、チームメイトは誰も出迎えに来なかった。


 だが、全員がボンズを嫌悪しているわけではない。2007年5月にUSAトゥデイ紙が493人の現役メジャーリーガー、469人のファンを対象に「史上最も偉大なホームラン打者は誰か」というアンケートを行ったところ、現役選手の72%がボンズと回答斉藤隆(ロサンゼルス・ドジャーズ)、松井稼頭央(ヒューストン・アストロズ)などの日本人選手も、ボンズに敬意を抱いている。

 さらに、疑惑のフィルタを通してもボンズが大きな戦力であることには変わりが無い。裁判が始まったばかりだと言うのに、メディアはオークランド・アスレチックスサンディエゴ・パドレスがボンズ獲得に興味を示していると報じた。


 当ブログでも以前にも書いたが、ボンズもMLBの被害者の一人であると言えるだろう。
 ボンズが使用していると言われている、アンフェタミンは日本では覚せい剤扱いの薬物で各国で規制がかかっているが、MLBの禁止薬物に指定されたのは2006年から。それまで選手の間では長年使用されていた。ステロイドに関しても、ボンズが摂取していたとされる2000年前後は禁止薬物には指定されていなかった。
 しかも、MLB機構はそれまで、禁止薬物の使用の疑いのある選手を放任していた。MLBの人気獲得には、ファンの度肝を抜くようなホームランが不可欠と考えていたからだ。


 とは言え、選手生命を絶たれるにしろ、無罪を勝ち取るにしろ、ボンズ自身の正式なコメントは不可欠だ。
 裁判所の周辺には、「Say it ain't so, Barry(ねえ、嘘だといってよ、バリー)」と、かつてブラックソックス事件で八百長疑惑に巻き込まれたシューレス・ジョー・ジャクソンにファンが投げかけた有名なフレーズを掲げる店もあった。


参考)ウィキペディアフリー百科事典
   スポーツ企画出版社「Slugger」