今オフ移籍市場の最大の目玉、ミネソタ・ツインズのエース、ヨハン・サンタナの移籍先がようやく決定した。


 サンタナとの残留交渉が決裂したツインズは、昨年末から他球団とのトレードを模索。最終的にはボストン・レッドソックスニューヨーク・ヤンキースニューヨーク・メッツの3球団での争いになったが、このほどツインズはメッツとの間で契約が交わされた。
 
 メッツでの契約金は1億ドル(約107億円)を上回る見込みで、交換要員にはカルロス・ゴメスフィリップ・ハンバーら4選手があがっている。1ad47feb.jpg
 落語の噺の1つに、「三方一両損」がある。


 内容をかいつまんで話すと、三両の入った財布を拾った左官屋が、持ち主である大工に財布を届けた。
 しかし、大工は「届けてくれた気持ちには感謝するが、いったん俺の懐から出た金は俺のものではないから受け取れない」と受け取りを拒否。左官屋も「拾ったお金を自分のものになんてできない」と意地を張るものだから、二人は喧嘩になってしまう。
 仲裁に入った長屋の大家の提案で名奉行で有名な大岡越前に相談したところ、大岡は三両に一両足して四両にし、大工に二両、左官屋に二両渡す。
 ぽかんとする左官屋と大工に大岡が言う。
 「本来なら届けてもらった財布を、そのまま受け取れば三両になるはずだった大工、拾った財布をそのまま自分のものにしていれば三両が懐に入っていたはずの左官屋は、それぞれ一両の損。両者がいらないという三両をそのまま受けとらず、一両足した奉行も一両の損。でもこれで三方が丸くおさまったわけだから三方一両損」。
(立川志の輔「ピーピングしのすけのふしあなから落語」より要約)



 なんとも粋な噺だが、ある意味では今回のサンタナ争奪戦も「三方一両損」、いや「三方一両得」と言えるだろう。


 まずは、2度に渡りサイ・ヤング賞を受賞した現役最強左腕投手を獲得したメッツ。メッツは昨年、同じナショナル・リーグ東地区のフィラデルフィア・フィリーズと熾烈な順位争いを演じたが、終盤での連敗が響き、ポストシーズン出場の夢は絶たれた。
 今季はサンタナを獲得したことで、いっきに同地区、ナショナル・リーグでの優勝候補の筆頭に躍り出た。

 続いてサンタナ争奪戦に敗れたレッドソックスと、ヤンキース。一見損のようだが、考えようによっては両チームとも「将来有望な若手選手を差し出すか、それとも現役最強左腕投手と戦うか」の選択を迫られていたわけでもある。
 それがサンタナがインターリーグか、ワールドシリーズでしか対戦の可能性のない別リーグに移籍したのだから、レッドソックスもヤンキースも得したと言えば得だ。

 もちろん、ツインズも得をした。ツインズの2007年のチーム総年俸は、メジャーリーグ18位の7,114万ドル(78億5,840万円)。サンタナがチームに要求したのは、6年1億5,000万ドル(165億円)だから、ツインズに払えるわけがない。
 性能はいいがコストが嵩む選手と引き換えに、コストパフォーマンスがいいと期待される4人の戦力を獲得できるのだから、これは悪いことではない。


 では、今回のトレードで最も損をしたのは誰か。これに関しては、昨年の新人王、レッドソックスのダスティン・ペドロイアが答えている。
 「サンタナがアメリカン・リーグから去ったのはうれしいね。ナショナル・リーグの人たち以外はみんな笑い始めているんじゃないかな