3月1日の実行委員会で小澤総監督は体作りが一番、ここはこれに集中して、将来に備えてはの意見が大半、これを受けて小澤さんは全世界での指揮活動を1年間休むことにし、7日に世界一斉に報道した。これは何を意味するか。松本では小澤さんは20年とにかくやり通して来た。昨年一部降板はあったもののやり抜いてきた。初期から最近までオペラ、オーケストラコンサートの指揮を一人で背負い何公演もやり抜いてきた。私たち側近が見ても驚異的な体力と精神力だった。

日本人を中心とした東洋人の塊りでも西洋音楽を高いレベルに上げることが出来たここまでの執念はすざましいものであった。これにアーティストはついてきた。

多分見えないところで小澤さんの体をボロボロになっていたかも知れない。にもかかわらず演奏に向かう小澤さんの目は何時も爛々としていた。音楽を演奏すると云うより対象が何であっても、より高い山、目標に向かう精神の強さである。小澤さんは自らそれに向かうことによってあらゆる分野の誰かが刺激を受けることを密かに望んでいたのではないか。表に口にすることなく。

小澤さんの体がどのようになろうとこの挑戦を受け留め、行動する他の人がそろそろ出てきてもいい。それは我々スタッフやアーティストそして聴衆としてのみなさんも含めて。その意味で創設21年目の節目に小澤さんが指揮をしないことは大きなチャンスになる。小澤さんが指揮しなくとも現場にいて総監督として重要な役割がある。総監督の役割はここではSKF松本の芸術の質を下げないということだ。

それは我々スタッフも、参加するアーティストも小澤総監督のもと仕組みとして作り上げなければいけないことだ。その意味で、昨年松本で4回のオペラのうち2回は代理指揮者によってなされた。また中国は小澤さん不在のまま全公演代理指揮者によってなされた。しかし結果は芸術的価値をお客に評価してもらい客足を減らすことはなかった。21年目を乗り越えるための訓練が出来たと思っている。

音楽以外のすべての分野でも優れたと云われたリーダーの前任者に頼ることなく後に続く者が今、自立する時期が来たのではないか。

小澤征爾・サイトウ・キネン・フェスティバル松本は日本の歴史の中にかつてなかった音楽祭の挑戦でありこれは一つの社会現象である。その価値を小澤さんが振る、振らないにかかわらず今年も多くの人に松本まで足を運んでもらい、お互いを考える機会にされたら思う。このことが21年目のSKF松本の最大の魅力となる。

間もなく行なわれる練り上げられたフェスティバル内容の正式発表にぜひ注目ください。