2010年09月10日

【金融・経済政策】白川日銀総裁の姿勢に賛同

国債引き受け禁止は「人類の英知」=白川日銀総裁が国会で

日銀による国債の直接引き受け禁止は「人類の英知」-。普段は硬い国会答弁の多い白川方明日銀総裁だが、9日の参院財政金融委員会では、日銀の国債引き受けで政府の財政出動を支援すべきだとの議論に対し、異例の文学的な表現でたしなめる場面が見られた。

中山恭子氏(たちあがれ)への答弁。中山氏は「賢明な政府がしっかり対応すれば、(ハイパーインフレなどの)懸念を払しょくした上でデフレ克服への道が開ける」として、国債引き受けで財源を創出し、社会資本整備を進めることを訴えた。

これに対し、白川総裁は「多くの経験を見ると、最初は問題がなくてもどこかで歯止めが利かなくなる。それが人間の社会の現実だ」と警告。日銀の国債引き受けを原則として禁じた財政法5条について「人間の弱さを自覚するが故に、あらかじめ引き受けを禁止している」と説明し、理解を求めた。

日銀は、「百年史」の中で、戦前・戦中の国債引き受けを、政府の財政崩壊を招いた苦い経験から「本行百年の歴史における最大の失敗」と総括している。(2010/09/09-17:55

(時事ドットコムより)

 

白川方明日銀総裁が好きになりました。

 

歴史から学び

人の限界を知り

もっともらしい理屈に惑わされず

圧力に負けず

楽に流されない

 

これこそ責任ある立場の方に求められる姿勢でしょう。

「保守とはかくあるべき」とまで思いました。

 

この記事を読んだとき、本当に泣けてきましたよ。この日銀への逆風が強いときに、よくここまで言ってくれたと思いました。

 

以下、この記事を読んで感じたことをつらつらと・・・。

 

【学ぶべきは失敗・出口政策実行できなかったこと】

「高橋是清の成功から学び、リフレ策を進めよ」と、安易で小賢しいことを言う方をネットやメディアで見かける。また、行革や政策に拘る姿勢を評価して支持しているみんなの党も、高橋洋一氏の影響でリフレ策を主張していて、実は情けなく感じていた。

 

歴史から学ぶべきは成功だけではない。失敗からこそ学ばなければならないはずだと思う。

 

景気刺激策にサヨナラを言う危険性(高橋是清に学ぶべき教訓)」(JBPRESSより)

を読み、そうだったよなぁ・・・と思っていたところに、白川日銀総裁の言葉に触れた。

(以下、「景気刺激策にサヨナラを言う危険性」から抜粋。)

景気刺激策は、日本が社会的な亀裂、政情不安、国粋主義といった特徴を持つのを止められなかった。それどころか、財閥が景気刺激策で最大の勝者になったこともあって、緊張は高まり続けた。

1936220日に高橋是清大蔵大臣(左)を訪ねた齋藤實内大臣(右)。この6日後に2人は2.26事件で悲劇的な最期を迎える(歴史写真昭和114月号「帝都不祥事件特集号」より)

例えば、三井財閥は、日本が金本位制から離脱したことで、為替取引によって何百万ドルも儲けた。それが国内の怒りに火をつけた。これは、ウォール街の銀行が量的緩和政策から利益を上げた後に米国で起きたことと似ていなくもない。

高橋が遭遇した2つ目の問題は、当然のことながら、積極的な財政拡大によって日本の国債と通貨に対する信頼が低下し、不安定になったことだ。

そのため高橋は1936年、政府支出を削減するとともに、金融政策の引き締めを行う出口戦略に乗り出した。

マクロ経済の観点から見れば、それは理にかなったことだった。しかし、そのために高橋は命を落とすことになった。政治的緊張が一気に高まり、様々な不満の中でも特に軍事費削減に憤慨したならず者の将校らによって暗殺されたのである。

現在なら暗殺という手段はとられず、スキャンダル等を生じさせたり、つまらないことで大きく騒ぎ、出口戦略を進めようとする方を権力の座から引き釣り落とそうとするだろう。理屈通りに動かないのが、日本の政治であったし、赤字国債の実状を見れば現在でも相変わらずだ。

 

(以下、wikipediaから抜粋します。)

赤字国債(あかじこくさい)とは、国の財政の赤字を補填するために発行される国債。

特例国債ともいう。

概要

財政法第4条は「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と規定しており、国債発行を原則として禁止している。財政法第4条の但し書きは「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定しており、例外的に建設国債の発行を認めている。国債は将来の世代の負担となるが、公共事業により建設される社会資本は将来の国民も利用できるから、建設国債は正当化できる。一方、一時的に赤字を補填するために発行される赤字国債は、将来の世代に負担させることを正当化しがたい。

しかし、1965年度の補正予算で赤字国債が戦後初めて発行された。1975年には、赤字国債の発行を認める1年限りの公債特例法が制定され、発行された。その後も特例法の制定により発行されている。

1990年から1993年までは好景気による税収増のため発行されなかったが、1994年から再び発行され、現在に至っている。

 

「国債発行を原則として禁止」ってどうなってんだ?と言いたいね。

 

毎年制定される「特例法」って、全然特例法じゃないだろう?

 

これは財政拡大策の後に求められる出口戦略を実行しなかったことを意味している。

 

理屈では、格好の良いことを何とでも言える。しかし政治的に実行できたことなど殆ど無い。それが日本における歴史的事実だ。

 

【イギリスが羨ましい】

ケインズは、「不況の際には減税し、財政出動策で有効需要を作り出し、景気が回復したら増税等の出口戦略を行い財政規律を回復せよ」と言っている。EUは現在、ケインズのその言葉に従うかのように、財政規律を取り戻そうとしている。特にラディカルな対応をしようとしているのはイギリスだが、その状況が面白い・・というかうらやましい。

 

EU労働法政策雑記帳hamachanさん)」の418日のエントリ「イギリスがうらやましい」が興味深かいので読んでいただければと思う。そのエントリで取り上げていた記事が以下です。

英総選挙、経営者と経済学者が代理戦争 財政再建で激論asahi.comより)

【ロンドン=有田哲文】5月6日投票の総選挙を前に、英国で財政再建をめぐる論争が白熱している。与党・労働党が掲げる事実上の増税策に経営者がまとまって反対を表明したのに対し、15日には経済学者約50人が野党・保守党の歳出削減を批判する声明を明らかにした。2大政党の代理戦争の様相だ。

英国の2009年の財政赤字は国内総生産(GDP)比で12%台になり、財政危機のギリシャと肩を並べる。どう圧縮するかが争点になっている。

労働党は財源不足を補うために社会保険料の引き上げを提案している。これに対し、製薬大手グラクソ・スミスクラインのトップら経営者約20人が今月初め、「雇用への増税だ。タイミングが悪い」とする声明を英紙に出した。

一方の保守党は、ムダをなくすことによる60億ポンド(8600億円)の歳出削減を掲げる。これについては逆に経済学者などが反発。元イングランド銀行政策委員のブランチフラワー氏らは「(歳出削減の)行動を急ぎすぎれば、雇用に悪い影響がある」との反対声明を出した。

両党は応援団探しに必死になっており、「労働党は経営者に声明を書いてもらえず、経済学者に頼った」(デーリー・テレグラフ紙)などの見方が出ている。

左派右派の両政党が揃って、出口戦略の政策を主張していて、経営者と経済学者が実施時期に異論を唱えている。

 

hamachanさんも「うらやましい」と述べられているが、全く同感です。

 

そして・・「「過激な英国」支持上昇 キャメロン政権、18日で発足100日(産経ニュースより)」という状況だ。

(以下抜粋)

キャメロン政権はギリシャ財政危機を“追い風”に拙速な歳出削減に慎重だった自由民主党を説き伏せ、今年、主要20カ国・地域(G20)で最悪の国内総生産(GDP)の11%に達する財政赤字を5年後に2・1%に削減するという財政再建策を発表した。

その4分の3を歳出削減で賄い、日本の消費税に当たる付加価値税(VAT)などの増税は最小限にとどめる。聖域は国民の誇りになっているNHSだけで、来年からは教育や国防費にもメスを入れる。

サッチャー元首相の「小さな政府」を踏襲した格好だが、「問題を社会の責任にすり替える声があるが、社会というようなものはない。あるのは個人と家族だけ」と唱えたサッチャー氏と異なり、キャメロン首相は「大きな社会」を掲げて教育、医療、警察活動への地域社会の参加を訴える。

連立交渉で首相は移民や欧州、核抑止力政策で明確な一線を引いて両党の論争を封印。それ以外の「小さな政府」や「権力の分散」で両党の利害は完全に一致している。

 

興味深いのは、これだけ国民に負担を課す政策であるにも関わらず、キャメロン政権は発足直後よりも支持率を5%伸ばしている。財政規律を取り戻すまでのイギリスは辛いだろうが、取り戻したあとは将来の財政破綻危機も取り除かれ、将来へのプラスの不確実性のもとに経済は勢いを取り戻すのではないかと思われる。

 

政治家や有権者がイギリスのような、当たり前の理屈を誰もが理解し、一時期の苦境も受け容れる国であれば財政拡大策もいいのだろう。

 

しかし、赤字国債が野放図に毎年発行され、赤字国債が発行されなかったのは小泉政権の間の3年のみで、その後はまた元の木阿弥になっている我が国日本を振り返ると、「とてもじゃないが・・・更なる金融緩和?財政拡大策?消費税増税?寝言は寝てからにしてくれ」と思います。

 

「借金返せない奴は借りるな」ってことです。経済にフリーランチはないんですから、将来世代へ無責任であってはいけない。

 

【日銀が円安誘導できる状況じゃない】

特に、今問題視されている円高の最大要因は、アメリカ経済・金利見通しの下方修正である見方が強い。メディアや自民党は民主党のせいだとしてるようだが、民主党政権じゃなくともこの円高は止まらない。金融機関の識者(「ここ」か「ここ」参照)や、以前金融機関に勤めていた友人の話を聞いてもどうやらそのようだと感じる。

 

要はアメリカの景気回復次第なわけで、日銀がいくら対策しても円安にはならない。日銀ができることを全てやっても、円高の進行を多少一時的に遅くする程度がせいぜいだ。

 

もちろん景気変動への対応策としてまったく無効ではないだろうけどね。

 

だから、為替変動に強い構造へ日本を変えなきゃならない。しかしそれは生産性が低く、社会保障・福祉の側面が強い介護や医療などではないと思う。産業構造の流動化を促進することで生まれる、新たな何かしらのイノベーションによってであろうと思う。

 

だが、変化する状況に対応しうるように規制緩和や規制見直し、構造改革等の施策を行わずにきたおかげで、旧態依然とした、硬直化して世界の動きに柔軟に対応できない環境が色濃く残り、イノベーションの出現は遠いのではないかと思われる。

 

だいたい、規制緩和・規制見直しは、金のかからない政策なんだからさ、最も前向きに取り組むべきことだろうと思うわな。金を使うのが対策だと思ってるところがバカの考えだと思ってもいる。ま・・・不況期に限り、景気の下支えとしての財政出動策は必要かもしれないけど、それにしたって産業政策ではなく、失業対策を筆頭とする家計支援策であるべきではないかと思う。

 

日銀のせいにして、本来やるべきことをやっていない現状から目を背けるなと思う。

 

財源が無いとなれば、歳出をラディカルに削る政治こそ日本に求められるし、もしくはそれこそ予算の組み換えで大々的に少子化対策・教育重視政策すべきだと思う。

 

敢えて暴論を言いますと、「農水省や消費者庁を筆頭に不要な省庁を無くし、政府がやるのは安全保障・教育・少子化対策・失業者対策」もしくは「歳出10%削減などというレベルではなく、イギリス並に歳出40%削減としながら、国防費は現状維持、教育と少子化対策・失業者対策には増額」ってな荒療治が必要なんじゃないの?と思ってたりもする。

ま・・・思いつきなので、批判されたり、突っ込まれても困るんだけど(笑

 

少子化が解消に向かえば長期的には年金問題や財政の問題も危惧する必要はない。借金を増やさなきゃいいだけだ。同時に、世代間格差が見られる、不公正な状況にある30代以下の世代に家計支援・優遇策を行い、現在と、これからの現役世代が安心して日本を牽引しうる状況を作るべきではなかろうかと思う。

 

今は、白川日銀総裁の姿勢や、過去から学び、政治家と国民に甘えを許さない政治が求められるのだと思う。イギリスから学び、正すべきときは苦難に立ち向かう姿勢を国民全員が持つべきだと思う。

 

私だってマゾじゃないから辛いのは嫌だけど、息子達の世代以降にしわ寄せが生じるようなことだけは避けたいと思うし、世界に胸張れる日本であって欲しいと思う。

 

長々と思うところを書いてきたわけですが、とにかく、今回の白川日銀総裁の姿勢には大きく賛同しますです。・・・・はい。

追記:

日銀総裁:マイナス金利は理論的に面白いが実務的に難しい(Update2)」(bloombergより)

に「参院財政金融委員会の閉会中審査」でのやり取りが比較的詳しく載ってるので参考にしてください。



yukemuriippai at 07:40│Comments(4)TrackBack(0)この記事をクリップ!政治(経済) | 政治(行政)

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この記事へのコメント

1. Posted by 故郷求めて   2010年09月10日 08:45
中山恭子議員の質問を見たけど、手前勝手な印象論でいうと、彼女は「もう戦争しか無い」と言ってるように聞こえるんですよね。

野田財務大臣はきっぱりと断ってる。自見は躊躇を見せたけど、もう「戦争」の側に飛び込みたくてしょうがない感じ(笑)

白川総裁は時間のない中で恐ろしく早口で述べたので、動画より文字のほうがインパクトがあるかもしれない。でも、「人間というものは」「人類の英知」と堂々と述べてました。なんだか一番政治家らしい言葉に聞こえましたよ。

湯煙さんと同じポイントで萌えてしまうなぁww
2. Posted by skullsberry   2010年09月10日 10:17
5 私も感動しました。白川総裁はすごい金融のプロで、彼の金融の教科書『現代の金融政策』は一家に一冊常備すべき本ですね。
 民主党は、白川氏が総裁になった時「あなたが総裁になって良かった」と言っていましたが、本当に解って言っていたのかなあ。
 もう法人税減税と規制緩和しか道は残っていないということであり、だから新自由主義の勝利!(笑)。
 法人税減税+歳出削減を軸にした大連立政権で少なくとも3年間は選挙を封印できたら、なんとかなるでしょうけれど、絶対無理ですね。
3. Posted by 湯煙   2010年09月10日 14:20
故郷求めてさん、こんにちは~

人の道徳的限界を日本の政治から強く感じていましたし、今も感じています。
今回の白川日銀総裁の話には、まさに「人類の英知」を感じました。頭でっかちなだけで、物事が何でも理屈通りに動くと考えてる傲慢な方々に少し頭を冷やしていただきたいものだと思いました。
4. Posted by 湯煙   2010年09月10日 14:26
skullsberryさん、こんにちは~

> 金融の教科書『現代の金融政策』は一家に一冊常備すべき本ですね。

話には聞いてますが、読んだことはありません。近いうちに購入しようかと考えています。

>  民主党は、白川氏が総裁になった時「あなたが総裁になって良かった」と言っていましたが、本当に解って言っていたのかなあ。

 民主党が判っていたとは思えないですよね。しかし、今回の白川総裁の発言を効く限りは、良き人を選んだものだと思います。結果オーライw

>  もう法人税減税と規制緩和しか道は残っていないということであり、だから新自由主義の勝利!(笑)。

 あっはっは、新自由主義だろうと何だろうと、メリットとデメリットを精査して、デメリットよりもメリットが多くなるように施策すればいいだけなんですよね。

>  法人税減税+歳出削減を軸にした大連立政権で少なくとも3年間は選挙を封印できたら、なんとかなるでしょうけれど、絶対無理ですね。

 仰る通り、無理ですね。今さえよければ的な既得権益側が蠢動し始めるでしょうね。

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