Count.102 「WWEゲーム・ビンテージ・コレクション ファミコン編」


本コラムを読んでくださっている皆さんのゲーム歴はどのくらいでしょうか?
僕は小学校の入学祝いでファミコンを買ってもらって人生誤ったクチです。
1980年代の中ごろから……つまりWWEでレッスルマニアが始まったころから
ずっとゲームをしています。

初代エキプロがプレステで発売したのは2000年ですので
エキプロはおおむね21世紀のWWEゲームと言って良いと思います。
では20世紀以前、ゲーム好きのWWEユニバースは何をプレイしていたのでしょうか?
今回はファミコンのWWEゲームを振り返ってみたいと思います。

アメリカでは、WWEをモチーフとしたファミコンソフトが4本発売しています。
① WrestleMania (1989 Acclaim)
② WrestleMania Challenge (1990 LJN)
③ Steel Cage Challenge (1992 LJN)
④ King of the Ring (1993 LJN)
日本で発売されたのはこのうちの1つだけ……②レッスルマニア・チャレンジのみとなります。

「レッスルマニア・チャレンジ」は、日本では1992年にホット・ビィさんから発売しました。
開発を担当したのはなんとレア社だというから驚き。
(レア社: イギリスの会社で、のちにスーパードンキーコングや007ゴールデンアイを作って有名になりました。)
しかしながら、時期的にはスーパーファミコン本体が既に発売していたことと、
格闘ゲームといえばゲームセンターではスト2ダッシュが稼動していた頃ということもあり
スルーしてしまったプレイヤーも多いのではないでしょうか?

■ゲームモード
ゲームモードは1人プレイと対戦プレイ。そして協力プレイ。 プレイヤー数は2人まで。
試合形式は、シングルマッチとタッグマッチ、それとイリミネーションがありました。
スーパースター以外に、プレイヤー自身のキャラ(YOUという名前)がおり
キャラクターとしてYOUを選択すると、勝ち抜き戦を遊ぶこともできました。
シーズンモード的なものや、クリエイトモードなどはありませんでした。

■グラフィック
タイトル画面のアルティメット・ウォリアーはファミコンにしては描き込まれていてキレイで気合入ってる。
ゲーム中のキャラはここまでキレイではないし、ビッグ・ボスマン以外はあんまり似ていないけども
ちゃんと斜め視点にマッチした、斜め向きのキャラクターが技を繰り出す様子が描けている。
それでいてチラつき処理落ちもあんまり気にならない。
ファミコンの水準で考えると、グラフィックはなかなかではないかな。

■サウンド
試合中のBGMにはスーパースターの入場曲が使われている。
もちろん生音でなくファミコンサウンドだけど、いま聞くとシュガー・ラッシュみたいで、味があって逆に良い。
これを文章でお伝えするのはなか難しい。3和音の着メロみたいな感じ、という表現で伝わるだろうか?
ハルク・ホーガンのテーマ曲“リアル・アメリカン”などはなかなかの完成度で聞いていて気持ちが良い。
ただ原曲の構成によってはムチャなものもあった。ランディ・サベージの“威風堂々”などはオーケストラ曲のため
パートの少ないファミコン音源では相当苦しい。
ププッ、プ、プ、プ、プ、プ…プ………プ………プ………………
テ~~~~リロリ~~ テ~~~~レ~~~~  テ~~~~リロリ~~ ロ~~~~~~~~
みたいな感じ(どんな感じだ)。
このゲームには入場シーンがなく、テーマ曲は戦っている最中に流れるので
なおさら微笑ましい気持ちになる。

■登場キャラクター
ゲームに登場スーパースターは8人+自分自身。
1. ブルータス・ビーフケーキ
2. リック・ルード
3. ビッグ・ボスマン
4. ハクソー・ジム・ドゥガン
5. アンドレ・ザ・ジャイアント
6. ランディ・サベージ
7. ハルク・ホーガン
8. アルティメット・ウォリアー
9. YOU (プレイヤー自身の分身となる、標準的な男性キャラ)
データ容量がきわめて少ないファミコンで、9キャラが登場するというのは多いほうだと思う。
また、登場するスーパースターのチョイスも秀逸!
有名どころはしっかりおさえているし、リック・ルードが使えるというのも珍しくてGOOD!
リック・ルードはレジェンズ・オブ・レッスルマニアで登場するまで、ほとんどゲームで登場しなかったのでは?

当時はデータサイズの単位がメガバイトでなくメガビットでした。
「脅威の大容量、1メガ!」とか、パッケージにシールを貼って大々的に謳っているゲームも
ありましたけどあれ1メガビットですから、つまり128キロバイトだったんです。
プログラム・グラフィック・サウンドすべてを合計して128キロバイトです。
いまの携帯で撮影した写真一枚より小さいことになります。
そんな制限の中で9キャラ登場させるというのは大変だろうな。今のゲーム開発では考えられないタイプの苦労。
PS3で使われている、片面二層ブルーレイディスクには50ギガバイトのデータが入るのですが
これは当時のROMカセット風にいうとだいたい「40万メガ」に相当します。
分かり易くキン肉マンの超人強度で例えると、ROMカセットがカニベース、ブルーレイはベンキマンくらい。
これはすさまじい進化だといえる。

■操作方法など
ゲーム画面には、ファミコンにしては珍しくクォータービュー(斜め視点)を採用。
PCエンジンのファイヤープロレスリング1が1989年に発売しているため
プロレスゲーム史上初の斜め視点というわけではないのですが、ファミコンでやるとは!
しかし、この斜め視点が結構くせもので、十字キーの上を押すとキャラクターは右上の方向に移動する。
これは慣れるまでは辛いかも? COMは的確に移動してくるので、かなり苦戦するはず。

技の数はあんまり多くない。
正面グラップル:ボディスラム(ダウンさせることができる)
背面グラップル:アトミックドロップ(ダウンしない)
立ち打撃技:パンチ(長押しで違う技が出ます)
ダウン打撃技:レッグドロップ
コーナーからのダイビング:ミサイルキック
1キャラクターの持ち技はこのくらい。使う技をカスタマイズすることはできない。
サブミッション・タップアウトの概念は大胆に全部カットされている。
あと、全キャラ共通操作でピンフォールができる。ロープブレイクは無いので注意!

キャラクターによっては、打撃がトーキックになったり、背面グラップルが後頭部ヘッドバットになったり、
ダウン打撃がエルボードロップになったりする。
でもキャラの性能差はそんなに無く、遊ぶときは好きなスーパースターを使って問題ない。
ちょっと寂しい感じもするけど、これもきっと容量のせいだろう。
出せる技の種類を倍にして、かわりにキャラクター人数を半分に……という仕様になっちゃうよりは
今の形のほうがいいのかも?

あと細かいところでは、体力が時間で回復するので、敵のAIは体力が少なくなると逃げ回るようになる。
リック・フレアーを思わせる、ヒール系の思考が再現されているといってよいだろう。
ひとつだけ惜しいのは、このゲームにリック・フレアーが登場しないところかな。


いかがでしたか?
当時はゲーセンでスト2に夢中だったし操作が難しかったのであんまりハマれなかったのだけど
いまファンアイテムとして触れてみると、なかなか優秀なコンテンツのような気がしてきました。
がんばって探せばまだ手に入ると思うので、興味のある方はトライしてみてください!

ただ、前述の操作のせいもあって難しいです。
現代のゲーム市場では許されない難易度といいますか、まあファミコンにはそういうの多かったですけど
HBKも「殺せない獲物は狩るな」と言ってましたが、そのへんは自己責任で。