大小迫 つむぎの家

よみがえれ! 大小迫の里山、人と人、人と自然をつなぎ、つむぐ「つむぎの家」

2010年、定年と共に岩手県大船渡市三陸町の故郷にUターンし、里山暮らしを始めました。
長い間放置し、荒廃した里山の再生を目指してすぐに「大小迫 つむぎの家」を立ち上げました。
築150年の母屋を中心とした、田んぼや畑、山林に囲まれた里地・里山です。
この地で無農薬栽培による米作りや山林の整備をしながら、生き物で賑わう自然と共にある暮らしを目指しています。
里山は地域に開放し、子どもたちの稲作体験や遊びの場にもなっています。
家族は、夫婦とヤギ4頭です。

2022年02月

小雪舞う季節も終わりに近づき、明日から3月、春を待ち望んでいた日々も、過ぎてしまえば冬が愛おしく思えるこの頃。
うっすらと雪化粧した日の雪を惜しみつつ、足元の冬の情景を見つめなおしてみました。
12
カミキリムシに穴を開けられ、キツツキにつつかれて朽木のようにみすぼらしくなったイチジクの木肌。半分雪化粧した傍らには冬芽が活動を始めた若枝が・・・冬と春が同居。
5
里山には欠かせない田んぼの情景。
色あせたひこばえが、行儀よく列を作って雪化粧、風雪に耐えながら春を待つ。
8
こちらは畑の情景。
エシャロットやニンニク、玉ねぎは冬を越してから実がふくらむ。
寒さや雪で外葉はしわがれているが、芯はしゃんとして陽光を待っている。
9
池の枯れハス。
思い思いに雪上でのアイスダンスを踊りながら、水ぬるむ日を待ち望んでいる。
1
雪が木肌を浮き立たせ、老木の威厳を放つオニグルミ。
夏の暑い時期には木陰を作り、秋にはクルミを提供してくれるつむぎの家の
シンボルツリー。
3
あれ!川の中に生えた柿の木?
いえいえ、護岸を彩る雪を背景に、冬作業の"剪定枝"が創り出した冬の情景。
IMG_1845 (2)
川の中にできた氷の芸術
しょんべん小僧ならぬホースの水が造り出した氷柱。
身近なところに、見ようと思わなければ見えない”冬の美”が限りなく潜んでいました。

思い出すのは、凍り付いた川を遊び拠点の秘密基地として、下校途中で遊んでいた綾里っ子たちの生き生きとした姿です。
氷の塊からオリジナルの宝石を創り出し、わずかな水の流れから水生昆虫を発見し、生けすを作り生き物を守り、年齢や性別を超えた仲間と雪合戦やそり滑りをして雪や氷と戯れていた日のことです。
ところがある日、雪が降ろうと寒風が吹こうと響き渡っていた綾里っ子たちの歓声は、ぷっつり途絶えました。それは、父兄からの「子どもの帰宅が遅い!」という通報を機に、つむぎの家のブログ「みちくさ」が学校長の目に留まり、おとがめがあったようです。管理職である校長の立場としては、当然とるべき判断であるとは思います。

「みちくさ」は原則禁止ですが、帰る方向は一緒であっても、家までの距離はまちまちであり、日暮れの早い冬季は、いったん帰宅してから遊ぶということは、ほぼ不可能に近い。これまでつむぎの家では臨機応変に対応してきました。ランドセルを川べりにおいて、自然にすっぽり溶け込み、自然の中から遊びを生み出し、目を輝かせて遊ぶ姿を目にしたら、子どもたちの限りなく広がる自然体験を見守ってあげたいものです。(もちろん安全に遊べる環境づくりは前提条件ですが・・・・)
2年前の新型コロナ感染症の広がりで全国一斉休校になってから、里山で遊ぶ綾里っ子たちが激減しました。子どもたちの姿の見えない里山は、寂しいものです。得るものと失うものの価値判断は難しいですが、「主体」を置き去りにしてはなりません。

2023年には「こども家庭庁」設置法案を創設するというニュースが報じられています。「こどもをど真ん中に置いた新たな司令塔」と、言葉の響きはよいが、子どもを取り巻く家庭が中心というような大人の目線からではなく、真に子どもの権利が保障される子ども庁をと願わずには入れません。

子どもたちは、主体的な遊びを通して自然に親しみ、自然の美しさや厳しさも含め、自然からさまざまなことを学び、人は自然と共にあることの大切さを身につけていくのです。年齢や性別を超えた子ども集団での自然体験遊びは子供の健全な成長にとって欠くことのできないステージ。子どもの「自由な遊びの権利」を保障することが、明るい未来につながると確信しています。

一面氷に閉ざされた川を発見し、秘密基地と位置づけ創造したさまざまな遊び、綾里っ子たちはどんなにかワクワクした日々だったことでしょう。寒さをも吹き飛ばす歓声や目の輝きからうかがうことができます。

岩手県内でも、内陸と沿岸では積雪量や気温に差があり、沿岸でも最も南岸に位置する綾里地域は、県内では比較的温暖であり雪が降っても積もることはほとんどありません。そのため、雪景色を楽しむタイミングは限られ、太陽と駆けっこしながら鑑賞に浸ります。
IMG_1612 (3)
しずくの造形美
エンジュの枝に積もった雪が解けだし、流れ落ちようとしたしずくが、氷の世界に!
1
キウイの柄に溜まった長細いしずく。
滴る前の凍てつく寒さでコチコチに!
2
コチコチの体が、陽の光に解きほぐされ、旅の準備。
3
雪が解け、枝を伝い集まってきたしずく、鏡のように反射して、周りの風景を描く。
5
ガラスのような透明度を増し、青空と一体になったしずく。
6
一滴のしずくの旅が始まりました。 

一滴のしずくが大地を潤し、集まったしずくは川となって海へと注ぐ。
海の生き物たちを育て、いつしか、太陽に温められ天に上り、再び、雨や雪となって降り注ぐ。

たった一滴のしずくは、あらゆる生きとし生けるものをつなげる”命の源”。
何物にも代えがたい自然の織りなす宝石です。

樹木や草花に降り積もった雪によって、それぞれの個性が強調され、思いがけない造形美に魅せられたり、”春遠からず”と、季節の移ろいを感じる植物たちの雪化粧。
1 (2)
他の樹木に先駆けて、花を咲かせたロウバイ。
香り高い花が寒空に映える。
2 (2)
クワの木に絡みついて、這い上ったキヅタ。
常緑のつる植物で普段は樹木と一体化して目立たないが、濃緑の葉が浮き立ち、実はぼんぼりの雪花。
4 (2)
モクレン
横に伸びた枝には冬芽を覆う雪、まだ深い眠の中、いやいや、洋服を脱ぎ始めている。
5 (2)
ヤブツバキ
常緑の厚い葉っぱに埋もれていたヤブツバキ、雪に誘われ目覚めた朝。
6 (2)
トチノキ
分厚い芽鱗とネバネバするアメ状で、寒さ対策万全の冬芽。
葉痕の童(わらす)の顔が、ほほえんでいる。
7 (2)
ウメ
一輪の花を付けた1月から、行きつ戻りつの気温に戸惑いながら、また一輪。
9 (2)
微毛をまとったキウイの冬芽
キウイの坊やは、春を待てない!と、今にも駆け出しそう。
10 (2)
オニグルミ
葉痕の羊顔は、まだ、寒さに震えているようだが、頂芽は服を脱ぎ始めている。

静かに眠っているように見える雪化粧した植物たちは、温かな日差しの下で、刻々と活動の準備をしているようです。

早朝、カーテンを開けると外は一面が雪で覆われた銀世界、2cm足らずの積雪なのに、今季一番の美しさと言っても過言ではない雪化粧に魅せられ、里地を散策。
2 (3)
ため池の傍らに立つヤナギは、枝先まで雪化粧、しなやかに舞い、春を呼ぶ。
木のてっぺんからは、ホオジロの恋のさえずりが聞こえてきます。
4 (2)
真綿のようにふんわりと雪をかぶったケヤキ。
このまま、すうっ~と 天国へと導かれそう!
5 (2)
秋にたくさんの恵みをもたらしてくれた柿の木。
雪化粧が、年輪を重ねた老木の、力強い枝ぶりを見せてくれました。
7
山の入り口に立つカツラ。
うっすらと心持ち色づいたカツラの枝先は真っ白にお色直し、雪のお湿りが花芽に潤いをもたらしてくれるでしょう。
IMG_1520 (2)
通常は被写体の障害となる防護ネット、降り積もった雪の模様が織りなす美しさにほっこり。
10
ススキの穂に降り積もった雪、綿あめのごとくふわっと、風の赴くままに!
12 (3)
うなだれて朽ち果てていく池のハス、オレンジを帯びた茎と雪との共演。
14 (2)
銀色に輝くミツマタの花芽、綿帽子の装いで歌う「は~るよ こい!」。
8 (2)
キリの花芽。
雪の重みにも凛と立ちあがり、たっぷりと陽の光を浴びて春を待つ。
15 (2)
白く雪をかぶった10月桜。ピンクに咲き誇った花とつぼみ、白銀の世界をパレードする女王のごとく!

積雪7cmでも見られなかった美しい雪景色は、日の出とともに解け始め、数時間後にはすっかり姿を消しました。冬枯れから銀世界へと目まぐるしく変わる自然の移り変わり、遥か彼方と思っていた春はもうすぐそこまでやってきているのでしょうか。


 

秘密基地で綾里っ子たちの遊びに仲間入りしたリョウ君は、うっすらと粉雪が降り積もった休日、今度は、ご両親と一緒に遊びに来ていました。
ヤギたちの世話を終え、下流に向かうと、子どもたちの姿が見え、その中にリョウ君もいて、みんなで雪だるまを作って遊んだようで、すでに作り終えていました。
1
川上には、出来上がった雪だるまが鎮座。
リョウ君は、濡れや寒さを防ぐ完全武装の身支度です。
2
わずかに流れる水の中を棒でかき回しながら生き物探しをしているリョウ君とサヨちゃん。
生き物は発見できませんでしたが、きれいな小石のようなものを見つけ「これなあに?」と、植物の種でした。
この後は、つむぎの家で「クルミ割したい!」とか「山に行きたい!」との綾里っ子たちのつぶやきから、秘密基地を後にし、つむぎの家に向かいました。
3
つむぎの家では、名前と学年、地域名をノートに書いてから自由に遊べることをリョウ君に伝え、書き方を教えるヒノちゃん。
4月に綾里小学校に入学予定のリョウ君は、自分で名前を記帳しています。傍らで見守るご両親。
5
クルミの木の下で、ヒノちゃんに教えられながら生まれて初めてクルミ割りをするリョウ君。
殻から取り出した実を口に含み、地域の伝統食である正月二日のクルミ餅の味を思い出したようです。
クルミは、拾って割り中身を取り出す面白さと、ヤギたちが好んで食べてくれる喜びにあるようです。
6
殻から取り出したクルミの実を集めて、ヤギ小屋に持っていくと、匂いを嗅ぎつけたヤギたちが集まってきてあっという間に食べてしまいまいました。

その後は、山に行きたいと言っていたサクヤちゃんと共にカタクリ山に上り、ハンモックをしたり冬木立の中を駆け巡って遊んでいました。少し高くなるだけで里地より風の通りがよく、寒々として凍えそうな空気、立春が過ぎたとはいえまだまだ寒さが厳しく、適度に遊んだ頃合いを見て、ホテイチクをお土産にヤギたちのところに行こうと声をかけました。
8
ホテイチクをヤギが喜んで食べることを知ると、「私も上げたい!」と枝を折ろうとしているサヨちゃん。その後、みんなで山を下り、ヤギ小屋へ行きました。
IMG_1359 (2)
 リョウ君は、ヤギに興味はあるものの、大きさに圧倒されてか、「こわい!」と言ってなかなか餌をあげることができません。そこで、サクヤちゃんの提案で砦に上って餌をあげる方法をとりホテイチクをあげることができました。ヤギとのコミュニケーションがとれ笑顔になったリョウ君。小さい子たちの心に寄り添い、お世話を惜しまない思いやりのある綾里っ子たちです。
柵の外ではご両親がその様子をジッと見守っていました。

4月1日は、綾里小学校の入学式です。
リョウ君は心やさしい先輩たちに迎えられ、新1年生としてスタートします。

↑このページのトップヘ