3.ふすま屋グループで

060420オレンジでかい 以前お世話になっていたふすま屋グループでは、とにかく、よく叱られた。
 普通だったらなぁなぁで済ませてしまいそうな場面でも、先輩からドカン!とやられるのだ。

 ちなみに、先輩の怒りかたは、それはもう・・・
見事なもので、
雷を落とすというあれである。

ドカンと落ちたら、後はきれいさっぱりしている。
さすがの職人技で、体中にビビッと電気が走り背筋が伸びる。
落ちたあとは何事もなかったように物事がすすむ。

食事をいただいている時、茶碗をもった指が開いていようものなら、
「コラー!」と雷が落ちる。
(新人はそれだけでビクッと肩が縮んでしまう)
雷が落ちたあとは、美味しい食事がつづく。

060420オレンジランプ 少し脱線するが、すごいのは叱り方が、
グループに数10万円の損害を与えるような失敗をやらかしても、茶碗の指が開いていても、叱られ方は同じで、その後、平和な時間が流れることも同じである点。

 先輩がその後ネチネチ言ってくることは全くない。


あるお寺で僕が1枚数万円もするふすま紙を、
何枚も無駄にしてしまった時があって、
あとで考えると金額だけでなく、グループの名誉を傷つけた大変な失敗であったが、
その後も変わらず仕事を任せてくれたし、
一度叱られて以降、2度とその話が上ることはなかった。

『雷を落とす』という言葉を生んだ昔の人もすごければ、
雷親父というように、そういう叱り方をしていた人たちもすごい。


さて話を戻して、
このグループで僕をふくめて下の世代は、
この叱られることに対して弱かった。

060420オレンジコドモ 人間関係に対する信頼感みたいなものが、弱かった。少し怒られると、「もう自分はだめだ」と落ち込んでしまう。

 相手との関係に対する信頼感が、はじめて彼女ができた14歳の中学生のように、はかなかった。少し怒られると、「もうこの恋は終わった」とあきらめてしてしまう。

たとえば、寝坊してしまう、
今起きました、と電話をすると、
「何やってるんだ!もう来なくていい!」と
怒鳴られる。すると本当にもう来なくなってしまう。
そんなことが度々起こった。

もう来れなくなった後輩から
「もう僕きられたんですかねぇ」と相談されたりもした。

年齢的に僕がちょうど中間だったので、
先輩にもしばらくすると聞かれた。

「アイツ、最近来ないけど、何かあったのか?」

060420タイル 何かあったのかじゃないよ、と心で思いながら、こんなこと言ってましたというと、先輩は例外なく、悔しそうな、情けない事を聞いてしまったというような顔をしていた。

「“来るな”なんて一言も言ってないだろう!いや、言ったけどでもそうじゃないだろう、村井?」


あんなふうに怒られると、確かに来づらくはあるよな、
でも、それで来なくなっちゃうなんて・・・、
両方の気もちが分かると言えば聞こえはいいが、
僕に言われてもと困っていたのが正直な気もちだった。

1年くらいグループで耐えると、
叱られても、人間的な評価をうんぬんされているわけではない、
ということが実感できてくるのだが、
たいてい耐えられないで辞めていく。
2・3日でやめる人もいっぱいいた。

人間関係に対する信頼感の弱さは、
僕らの世代が抱える深刻な問題の1つだと思う。