いやぁ!素晴らしかったですね!
準決勝のときの「今年全組面白いじゃん!何これ!」という感想を決勝でもそのまま感じられることに、1人のお笑いファンとしてこの上ない喜びを感じています。今のお笑いの面白さを、しっかりテレビで全国に届けることが出来たのではないか。これを見てネガティヴな感想しか出てこないような不感症はハナから放っとけばいいのだ。
「お笑いが好きで良かった!お笑いは素晴らしい!」なんて青臭いことを胸を張って言えるほどに、嬉しさと幸福感で胸がいっぱいであります。
と、本来はここで終わればいいんでしょうけど、どうしても色々語りたがってしまうのが僕の性なので、今年も一組ずつ感想を書きたいと思います。



アキナ
やってること自体はとてもシンプルかつオーソドックスだと思う。大人びた発言をする小学5年生というキャラクターや、親の離婚という舞台設定など、大枠自体は特に目新しいものではない(そもそも実はこれはソーセージ時代のコントの改変版みたいなネタなのだけど)。けれどそんなシンプルでオーソドックスなネタだからこそ2人の地力がもろに出る。2人の声のトーンや佇まいを含めた演技力、ネタの運びやワードのチョイス、それらに一切クセがないのだけど、その分すべてが的確だ。「おままごとやらせてもうてる」「5歳ど真ん中走らせてもうてます」などの言い回しも抜群に面白い。
オチのくだりで、フリを長めにとって「地蔵」の一言で綺麗にオトすのも見事。本も演技もマイナスになるような違和感が全くなく、それらしい減点箇所がひとつも見つからないとっても綺麗な漫才だ。でも、その長所と短所が表裏一体で、決勝までくるとどうしても飛び抜けづらい。審査員の5人中3人が89点を付けたというのもすごくしっくりきてしまう。



カミナリ
決してインパクトだけではない、緻密で新しいネタですよね。最初に比較的わかりやすいボケを置いて、そこから徐々に裏切りの幅を上げていく段階の踏み方が見事。
彼らのネタで重要な役割を占めてるのが、言うまでも無く頭の引っ叩き。けれど、これは別に引っ叩いてること自体の面白さなんかじゃなくて、合図としてとても重要なのだ。今からツッコミの一言を入れますよという合図になっており、そこでその一言に注目を集める。頭を引っ叩いた瞬間に、ツッコむべき何かが起きていたことはわかるけど、何が起きていたのかはわからない。その正体が「川柳のレベルが下がった」や「年寄りの川柳ばっかり」というのに気づかされる、その種明しのような瞬間がたまらなく面白いのだ。後半の「とても575じゃ語れねぇな」や「社交的な爺ちゃんの孫とは思えねぇな」という予測不能なズラし方も素晴らしい。
このスタイルは一体どうやって生まれたんだろうと思うくらい、サブリミナル的なボケの台本と頭の引っ叩きというプリミティブな動作がガッチリ噛み合っている。それに加えて叩く側と叩かれる側の容姿やあの茨城なまりといった天性のものも味方してるのだから、これはもう奇跡的。
上沼恵美子が81点付けたのはしょうがないことだと思うけど、1人の低得点に全体が左右される審査システムはやっぱり問題だ。審査員5人は少ないよ



相席スタート
今までは男女の心理をしゃべくりベースで見せてきたけれど、そこにもう一つ要素を乗っけることで完成度が格段に上がってる。合コン×野球というわかりやすいあるあるの組み合わせなのだけど、ゆえに強度が抜群だし、これを漫才で表現出来るのは相席スタートだけだと思う。男女コンビじゃなきゃとかじゃなく、この2人にしかできない。山添が聞き手に回るのではなくて、しっかり笑いを取る側に行ってるのも嬉しいじゃないですか。
他のネタでも、山添がケイさん側に寝返ってしまう瞬間は山場としてとても強いのだけれど、今回の「振ってもうたぁ~」はピカイチだ。物語がそこに向かって突き進んでいて、完璧な形で着地した瞬間のカタルシス。
元々優勝出来るタイプのコンビではないかもしれないけど、これで最下位とはなかなかシビア。これからどうなるのかちょっと心配になってしまうくらい、このネタは相席スタートの完成系に近いと思う。



銀シャリ
僕は銀シャリを正統派とか王道だなんて思ったこと一回もないんですよ。真面目そうな顔して実はド変態みたいな、そんな漫才だと思ってます。だって、一つのボケに対してあれだけ捲したてる橋本の様子は最早異常の域じゃないですか。「ドーナッツ」や「ドクター」なんていう小さなボケに対して五言くらいツッコミ入れてますよ。そして極め付けは「ファはファーのファ」の音階への怒涛のツッコミ。そんな誰でも見過ごすような小さな間違いにあそこまでツッコみます?普通。
それだけ捲したててもちゃんと聞かせるのが凄くって、それこそが漫才の上手さなのかと思います。もちろんツッコミの中身自体も面白い。決めに来てるところは一切取りこぼさないし、「地主さんやから」や「爪弾くな。いたずらに」など、見返して気づくような細かいフレーズも一々面白い。
鰻のボケも去年より格段に良くって「レ?」の自らドツボにハマっていく天然ぶりは鰻にとても似合ってる。「うさんくさい!うさんくさい!」 や「シドレミドレ」などの小さなボケもレベルが高くて、ネタに厚みを出してる。
そりゃこんだけの高得点も出るわ。大納得。



スリムクラブ
めっちゃくちゃ面白かったのになぁ。
ひたすらワードをぶつけるだけの、この上ないストロングスタイル。それでこんなに笑いの飛距離を出せることに感動すらしたんだけど、そっかぁ「飛びすぎ」って言われちゃうのかぁ。
実はスリムクラブは語るところが少なくて難しい。面白いワードと、そのワードに説得力を持たせる空気作りという、必要最低限な要素しかない。だからこそ、それでここまで特異なネタになってしまうのが本当にとんでもない。「家族のトーナメント表」はどう考えたって2016年の最強ワードだ。東京五輪は要らなかったと思うけど笑



ハライチ
今更言うことでもないのだけど、澤部の表現力は凄まじいですね。声色、言い方、動き、表情、フォルム、すべてが面白い。表現力のオバケだ。
そしてそんな澤部の動かし方を熟知してるかのような岩井のネタ作り。ひとボケ目の澤部のリアクションの引き出し方は見事だ。
ただ、今回はボケの種類が最初から最後まで変わらないのが残念で、後半ジリ貧になっていく様子は辛かった。
去年のネタは途中まで同じトーンのボケが続いて、「独特な罰」でギアが切り変わってそこから駆け上がってく感じが素晴らしかったので、そこと比べても今年のネタの本自体は詰めが甘いように感じた。去年は岩井が噛み噛みだったので、トータルの出来は今年の方が上だったと思うけど、今年も泥ダヌキを噛んだのは痛かったなぁ。



スーパーマラドーナ
もうここはオチの仕掛けが全てでしょう。初見じゃまず見破れないし、そりゃ確実に爆発するわ。2010パンブーみたいな小さな積み重ねはあったけど、漫才でここまで大胆な叙述トリックを成立させたのって今までないでしょう。ネタバレになるから言えないけど、某推理小説を思い出したなぁ(ユウキロックが言ってる『イニシエーション・ラブ』じゃないです。もっとドンピシャなのがあります)。
仕掛けを分かった上で見ると、武智が「急に2人っきりで閉じ込められたんで気まずい空気流れてますね」や「向こう名乗ったんやから僕は田中ですって言えや」など、オチが有効に働くような補助線を引いている。
オチ以外にも、前回よりもこの型を生かしたミスリード的なボケが多用されていた。中でも聞かれてないのに身長を答えるくだりが秀逸だ。
ただ、まっちゃんも指摘していた通り、中身のボケは前回に比べるとあまり充実してないように感じた。でもやっぱりオチの仕掛けはそれをひっくり返すくらいの威力があると思う。



さらば青春の光
森田の言い方や表情の面白さはお笑い界の宝だ。「能なん⁉︎」の一言でここまで笑いが取れる人、森田意外にいないだろう。
もちろんネタの発想力も唯一無二。普通の漫才師とは違う視点を、しっかりと漫才の枠組みの中で表現出来てるじゃないか。準決勝のネタはあまり好きじゃなかったのだけど、やっぱり決勝でさらばの漫才を見れることはとっても刺激的だ。
ただ惜しいところもいくつかあったなぁと思う。「捩り鉢巻き角刈り奮闘記」は、改変前の「幕末助六獄中奮闘記」の方が良かったのでは。「幕末助六獄中奮闘記」の、歴史の用語集の隅っこに載ってそうな載ってなさそうな、ギリギリのリアリティがとても良かった。そしてこれは毎回思うのだけど、CATSの部分がもったいない。そこにもっとしっくりくる裏切りを置けたら印象がだいぶ違うんだろうけど、ただそれが本当に難しいんだろうなぁ。



和牛
2016年には珍しいくらいとてつもなくオーソドックスな漫才コント。なのにこんなに面白いって凄いなぁ。2人の技術が圧倒的すぎる。ボケ自体、そこまで特別強力なものは入れてないように思う。もう本当に2人の演技力と間が全てで、それが最良な形で出るようなネタの作りになっていると思う。「そんなに曲がってないやろ」で誰があんなに笑いを取れると言うのだ。勝手にコントインすることで水田の自己中心的なキャラクターを印象付けたり、コントインしてからのひとボケ目「バン!」「バン!」「乗った!」で阿吽の呼吸を見せつけるあたりも抜かりない。
川西の女役はもう本当に見事。しっかりツッコんでるのに女性という立場をちゃんと維持してる。「2回払いで」というボケには何も言わずに驚いてみせるなど、バリエーションも実に豊かだ。今回はカメラに抜かれてなかったのだけど準々決勝と同じなら、MDを出されたとき、川西はハンドルを左に切って車を路肩に寄せる動きをしてるはず。本当に細部まで神経が行き届いている。
もちろん、水田のボケの演技も最高だ。アスレチックの時のあの動き!滑稽で憎たらしいけどどこか憎めないポップさが宿ってるじゃないか。
これはもう文句無しの最終決戦進出。



最終決戦

スーパーマラドーナ
うーん、ここに来てこのネタかぁ。7.8年前からあるネタだよねこれ。やっぱりどうしても古臭く見えちゃうな。ふってボケてツッコんで戻しての繰り返しがどうしても流れ作業に見えてしまう。題材自体もありがちだし、一個一個のボケもベタで予定調和に感じちゃうなぁ。
もちろんそれでこれだけのウケを取れるのは凄いんだけど、ちょっと会場と温度差感じちゃったかな


和牛
軽めのボケをいくつも入れることでテンポを出した一本目に比べて、こちらは強いボケが多く含まれてるように思う。たこ焼きを選ぶくだり、「むっちゃ男やん」、「カエルと喋るにしては長いわ」、上下迷彩の多段ボケ、2人で指輪を探す動きなど、ボケ自体の強度は一方目より上。ただその分テンポや間の凄さは一本目より控えめになってて、一個一個のボケと全体の作りで見せるようなネタになってたと思う。
ここでも川西の演技が光ってるなぁ。「揉めたくない揉めたくない」の言い方と表情、最高だ。
これで優勝出来ないなんて厳しいなぁ~~



銀シャリ
正直言って、自分の中では「うんちくん」がピークでした!いや、それくらい「うんちくん」はツカミとして完璧だと思うしそこに対する橋本のツッコミも物凄くハイレベル。
ネタ全体としては一本目よりは劣るかなと感じてしまった。後半にピークがなかなか来ないまま終わってしまったような。橋本の「それ一本の命綱」などのフレーズは変わらず面白いのだが、一本目の「ファはファーのファ」のような絶対的なポイントが欲しかった。
でももうここまできたら好みでしかない!優勝おめでとう!