‘だからさあ、なかなかいいんだって、この本!’

古道具 中野商店の店主中野さん風に言えば、こんな調子である。

川上弘美氏の著書はコレが初。
女性作家を元々苦手とする私が、珍しく本書に興味を持ったのは、至って単純。
時々拝見するNHK週間ブックレビューのTV番組の中で紹介されていたからだ。

古道具 中野商店に働く人々・・店主の中野さんをはじめバイトのヒトミにタケオ、中野さんの姉貴のマサヨさん、中野さんの愛人サキ子さん・・・などなど、魅力ある人々が登場する。

ちょっとほのぼのして、それでいて時々ドキドキして・・・決して甘くないヒトミとタケオの恋愛模様や、やっぱり変わってる中野姉弟の仲の良さや、中野商店そのものの存在感が、心地よく伝わってくる。
店先に出されたベンチの上に並ぶ、古い型のタイプライターや亀や兎の文鎮・・・そんなものさえ味わい深さを感じる。
なんだろう?この懐かしいような近寄ってみたくなる中野商店って店は・・・。
とにかく雰囲気がイイ!
そこに働く人々の人間模様も、自分には近いような・・決して遠くない存在のような・・そんな魅力というか‘味’がある。

上手くいくようないかないような、そんなもどかしい若い恋愛も、十分に知り尽くした愛を通り越したような熟練愛も、みんなとにかく人間臭いのだ。
登場する人物の世代がやや広めで、それなりの恋愛模様を見ることもできて、共感できる部分と、まだまだ大人になりきれていない自分に気付くことさえある。
年齢性別に関係なく、人間臭くて生々しい感情には、やっぱりグっとくるものがあって、ちょっと感動したりする。

読み終えたときには、‘再生’の言葉がまずは脳裏に浮かんだ。とても清々しい再生。
人間の成長は、経験と出会いによって左右されるもの・・だと漠然と感じた。

今の私には、程遠い‘再生’という人生の前向きの感覚を与えられたような気がしたこの「古道具 中野商店」は、とても居心地のいい店であった。

興味があるなら一度は寄ってほしい「古道具 中野商店」だ。

古道具中野商店「古道具 中野商店」川上弘美