「其処までだ……」
兵士の後ろにケルベロスが剣を構えていた。
「ケルベロス……?!」
クロノスが驚く間もなく、兵士を一刀両断した。
血飛沫と断末魔。
その音は隣の部屋にいたゲオルにも聞こえていた。
「……今の音は?」
返り血を浴びたクロノスは呆然とケルベロスを見上げた。
「何故……助けた?」
「生贄に妊娠して貰うと困るんだよ……呂布の元に嫁ぐのだから、ね?」
「クロノス様!!」
ゲオルが扉を開けて後ろへ下がった。
「諸事情により、明日……向かって貰う。箱船はその時に飛び立つ……ゲオル、お前はそうだな……クロノス様の従者として傍に居て貰おう」
「いきなり過ぎです!クロノス様にこのような行為など……私は勿論、付いていきますが」
「クロノス様を妊娠させようとする輩がいるからね?」
ゾクッとしたケルベロスは気づいていたのだから……。
「俺の意志はどうなるっ!?」
クロノスが慌てて会話に入る。
「使者もクロノス様なら気に入ってくれるとのお褒めの言葉もあるから、平気だろう?」
クロノスは慌てて、毛布で身を隠した。
「出ていけ!シャワーを浴びてくるっ!!ゲオルはいても構わないっ!」
ケルベロスはちらりとゲオルを見て、横をすり抜けていった。
気づいている、そう思われていた……。
クロノスはグッタリと横たわった。
「大丈夫ですか!?」
「もう、何もかもが彼奴らの手の中かっ!」
「……」
ゲオルは顔に付いた返り血を拭き取り、クロノスを見た。
「私はずっとクロノス様の傍に居ます……」
「……」
ふて腐れたようにクロノスはシャワー室と向かった。
「時間が……ない……」
ゲオルは拳を握りしめた。
クロノスはシャワーを浴びていた。
処置なら恥じらいながらも自分で出来るようになっていた。
気持ち悪いと未だに思う。
男に抱かれて……そう思うのが筋だろうが……!
血と精液を流し下腹部も丁寧に洗う。
1人だから出来る。
ゲオルはクロノスが出て来るまで待っていた。
「クロノス様……」
「ゲオル……か」
濡れ髪のまま、クロノスはソファに座った。
「逃げましょう……!」
「無駄なことを……」
クロノスはゲオルの頬に口付けを落とした。
「お前の嫁になれなくて済まん……」
忘れていたと思う約束……果たせない約束……。 
「……クロノス様!」
ゲオルはクロノスを抱きしめて、深い口付けを交わした。
「んっ……ンふっ……」
ゆっくりと顔が離れる。
「いつまでも心までは誰にも渡さん。ゲオルの為にも……」
「クロノス様……」
「今夜は一緒に寝てくれ…ぬか……?」
果たして理性が持つかどうが……?
「ッ……はいっ!」
手を繋いで……1人用のベットに……。
軋む音。
ゲオルは耐えた。ただ、耐えた。
そして、クロノスを妊娠させるために色んな事をしたことを後悔した。
男達に抱かされて、それでも純粋無垢で……。
約束を忘れては居なかった……。
翌朝。
布津が魔法転移陣を作っていた。
その様子にエヴァは魔力的進歩を先に遂げたのは魔獣族だと思った。
「これで空間を一気に飛んできたの?」
「はいっす……この陣なら簡単っすよ?」
その頃、クロノスは黒衣の花嫁の衣装を着せられていた。
長くなった髪もゆっくりと解かれ……。
この先に不安を覚えても横にいるゲオルの手を握りしめて……。
旅立つ時を待っていた……。
「さて、この空間に入れば一気に行けます……と、同時に箱船として神殿から城下町が浮かびます」
エヴァはクロノスの方を見た。
「俺が犠牲になれば、あんたらは救われるんだろう?」
「私は……」
「エヴァ、クロノス様の挑発に乗ってはいけないよ……?」
クロノスはエヴァ達の横をすり抜けていく。
ゲオルも慌てて後を追う。
「布津、行くから……俺。ゲオルは俺の従者だから問題ないよな?」
「はいっす」
「有り難う御座います。」
ぺこりとゲオルは頭を下げた。
行くのは魔獣の国……。